第一章30 『ドラゴン討伐9』
寒い。南に向かっているはずなのに。
「マイさんも起きてきたみたいですね」
村長さん、村長さんの奥さん、ノールさんの3人が朝食をとっていた。
「お二人は本当にいらないんですか?すぐに作れますが、主人が」
主人が、ですか。
ユウがこっちをみていたので、目を合わせた。
「私は優しくするから」
「いや。だからなんなのいきなり」
そうだと言って、村長さんの奥さんはキッチンに移動した。
「少し待っていてください。座ってていいですよ」
言われた通りに座って待っていると、スープの入ったカップと、スプーンを持ってきて、僕らの座っている机の前に置いた。
「寒いので、温かいスープくらいは飲んでください。スープくらいなら、お腹減ってなくても飲めるでしょ?」
カップに手を当てると、じんわりと冷え切った手が温まってきた。
「ありがとうございます」
体は魔法でも温められるが、いつだったか寝起きでやって、布団を燃やした事がある。
僧侶様にめちゃくちゃ怒られたっけ。
猫舌なので、スプーンに掬って、よく冷ましてから飲む。
ユウはカップに入った熱々の液体をそのまま飲んだ。
なんで飲めるんだよ?
「あったかい。寒い日はこういうのを朝に飲めばいいのか」
「今度作りますかね。冬なので野菜のスープとかはできませんが、肉の茹で汁とかいいかもしれません」
なんでもすぐに料理を思いつくのは僕らにはできないので、全てノールさんに任せるしかない。
「今日はもう出発するんですか?」
「はい。早いうちにやったほうが、今日の夜の準備とかできるんで」
「なるほど」
「災害時の炊き出し用の器具とかも準備しときますかね」
「じゃあ、青年団の方の指揮はお前に任せるよ。私は薪とか、食材とかの準備はやっておく」
村長さんと奥さんはどんどん話を進めていく。
そこで、ユウが疑問を言った。
「もしかして、奥さんって重労働系が得意だったり?」
「もちろん。そっちの方が得意ですよ」
だから、村長さんは食材とかと言うことか。
「ほんと、頼もしい妻を娶りましたよ」
「そんなもう。照れるじゃないですか。あなた」
スープは冷めてきたので、カップからそのまま飲むことができるようになった。
自分のスープを飲み終わったところで、ちょうどノールさんも食べ終わった。
「よいしょ。お待たせしました。2人とも。行きましょうか」
自分も立ち上がる。
「食器とかは置いたままでいいですからね。夜の準備はしておくので、安心していってきてください」
「分かりました」
少し笑ってしまう。
みんなドラゴンという脅威がなくなりそうで嬉しいのだろう。
一度部屋に戻って、荷物を整えてから出発した。
「気をつけて行ってきてください」
「大丈夫ですよ。今回は」
ユウが怪しげなフラグを立てながらも、どんどん森に入っていく。
最初の時は僕が先頭だったが、今回はユウが先頭だ。
「ユウって、道覚えるの得意だよね」
「まあね」
「それを言ったら、マイさんも結構得意じゃないですか。ちなみに俺は結構、方向音痴です」
「僕は、探知魔法使ってるからあまりね。ノールさん、1人で旅してた時どうしてたの?」
「獲物追ってたら結構森の奥深くに入ったりして、迷子になってましたね。そういう時は、どっちか一方に歩き続けるんですよ。必ず道に出れますから」
思ったより脳筋だったけど、猟の知識があるからこそできることなのだろう。
ドラゴンが生活している、地盤沈下したような土地に着いた。
「さて、やるか」
魔力を一瞬にして膨らませる。
「作戦は?」
「僕が1体に防御力低下魔法をかける。それをユウが倒してる間に僕がもう1体倒すから」
あと一体はどうにだってなるだろう。
「あ。ひとついいですか?マイさん」
「なに?」
「爆破しちゃうと、食べる量が減って今日の夜肉が足りなくなっちゃうから、1体はちゃんと爆破おいてくださいよ。保存食とかにしたいならば、2体は残しておいてください」
「わかった」
危ない。危うく3体とも爆発させてしまうところだった。
溜めた魔力を放つ。
ドラゴンの防御力は低くなったはずだ。
「じゃあ、ドラゴンの近くまで飛ぶよ」
「は?」
「え?」
2人を一気に吹っ飛ばして、地面に叩きつけられる前にその移動を止める。
こうすれば、途中の魔力を使わずにそこまで移動できることに昨日の夜気づいた。
「し、心臓バクバクしてる……」
「ほんと。死ぬかと思いました」
うーん。なんかごめん。
まだ改良の余地はあるな。
「敵の前だから2人ともしっかりしてね」
「どう考えてもマイのせいでしょ」
ドラゴンたちはもう戦闘態勢に入っている。
「左が防御力低下済み」
「わっかった」
「真ん中は俺が足止めしますね」
僕らはさっと自分たちの適切な持ち場に着く。
昨夜に使った魔法は寝ている間に分析しなおして、改良をしておいたので、それを使ってみたい。
「結界、風系魔法、炎系魔法。暴爆」
多少の爆風がこちらまで届くが、影響はない。
小さな爆発を繰り返し起こし、こちらに影響なく近くにいるものだけを爆破するようなものだ。
連射式の銃のようなものを意識した。
とりあえず1匹はぼろきれにすることに成功。
ユウを見ると、チャンスをつかんでドラゴンの首を刎ねようとする真っ最中だった。
ノールさんはしっかり足止めできている。
ならそっちでもう一つの使いたかった魔法を使ってみよう。
「通常攻撃魔法、風系魔法、氷系魔法。氷剣」
高濃度の通常攻撃魔法を風系魔法で鋭くし、氷系魔法でそれを覆った。
ほぼ昨夜使った魔法と同じだが、今回は氷と通常攻撃魔法の層を何重にもしている。
強度は上がっているはずだ。
魔法によってできた剣でドラゴンを横に真っ二つにする。
「よし」
「マイ、魔法の腕上げたね」
ドラゴンを倒し、加勢しに来ようとしたユウが言った。
「ふふん」
「さて、血抜きと解体をしますかね」
「どう運ぶの?」
「確かに」
「面白かった!」
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