第一章29 『ドラゴン討伐8』
次に試してみる魔法は……。
魔法を放つ準備が終わったところで、ドラゴンは飛び去っていった。
文字通り、飛び去っていったのだ。
「ノールさん?」
「俺もわからないです」
一応、探知魔法を使ってみる。
「ユウがドラゴンを一体倒したっぽい」
「本当ですか?」
仲間が倒されて逃げたということか。
「でも、もう一体には逃げられたっぽい」
「そうですか」
やっと倒す道筋ができたというのに、ここで逃げられるのは勿体無い。
「易々と逃すか」
さっき魔法で起こした爆発は、強すぎてこちっまで吹き飛ばされ得てしまったが、少し応用して使ってみる。
「風系魔法。結界。炎系魔法。暴爆」
飛んで行ったドラゴンを結界で閉じ込め、そこの中で暴爆を起こす。
そうすれば、こっちに被害が加わることなく、敵に呑み喰らわせる事ができる。
暴爆を受けたドラゴンは、チリすらも残っていなかった。
どれほど魔力が残っているのかを確かめるために、すべての魔力を使ったので当然だ。
そいつは倒す事ができたが、他の2匹には逃げられてしまった。
逃げたドラゴンはユウの方も合わせて3匹。
「明日は予定より楽になりそうだね」
「そうですね。その代わり、今日は命がかかっていましたが」
まあまあ。生きてるしいいじゃん。と言いながら、自分たちは教会の結界に戻ることにする。
「そういえばマイさん。全く杖使ってないじゃないですか」
「あ、気付かなかった」
確かに最初に杖を使ってからは、なんかの拍子にしまってしまっしい、それ以降使っていない。
本当に自分が思っているより、自分の力は規格外だ。
教会を中心に開かれている結界の中に入る。
「やっときた。マイ。聞いてよ」
「なに?」
ユウの後ろにはあのむかつく僧侶がいた。
「このおっさんがこの結界に入ったらもう出れないとかいうんだよ」
「え?おっさん?流石の俺でも傷つくよ?」
いや、どうみてもおっさんではある。
にしても、結界から出れない、か。
結界に内側から触ってみる。
確かに、触れたところが跳ね返される感覚がある。
結界の外に出ようと力を込めるが、力を加えるにつれて、押し返す力が大きくなる。
「本当だ。なんで対人用の結界なんて」
結界を解読して、内側から紐を解くようにする。
多少脆くなったところで少し魔力を与えると、一気にヒビが入って全体に行き渡った。
結界の破片がパラパラと落ちてくる。
その結界の破片は、何かにぶつかると魔力に戻り、離散していくのでキラキラと光る。
予想通り、女の子たちは『きれーい』などと言って、騒ぎ始めた。
たくさん光らせるために少し余計に魔力を込めてよかった。
「で、おっさん。なんで対人用とかっていう結界なんてはったの?」
ユウが咎めるように言った。
「このチビが置いていった結界にちょっと図形加えたらこうなっちまった」
「なに余計なことしてんの?マイが書いた魔法陣なら完璧に決まってるでしょ?」
「ああ。完璧だったよ」
このままだと何時間でも言い合っているだろう。
ユウは引かないだろうし、うざいことにおっさんはなにも言わないだろうし。
「まあ。ユウ。悔しいけど、おっさんが正しい」
「正しいわけないでしょ」
「2人とも、泣くよ?」
おっさんが泣いたってこっちはどうだっていいので無視。
村長さんが来て、僕らに言った。
「明日は早くに行くのですか?」
「そのつもりです」
「なら、早めにもう一眠りしてはどうですか?」
もう一眠りとはなんと魅力的な提案だろうか。
「寝たいです」
僕は即答した。
「ははは。じゃあ、家の玄関は空いているので、勝手に入っていいですよ」
「ありがとうございます。ユウは?」
「私は……」
色々と村のものを壊しておいて、自分だけ寝るのも、と思っているのだろう。
「壊れた民家に住んでいた人たちなら、そこの宿屋の女将さんが受け入れるというので、気にしないで寝てていいですよ」
「ちゃんと寝ないと。肌が荒れるわよ。私みたくピチピチな肌が欲しかったら、寝てきなさい」
どこが?と問いたくなるが、若い頃は綺麗だったのだろう。
「じゃあ。お言葉に甘えて」
ノールさんにも聞こうと思っったが、近くにいない。青年団の人たちを集めて話をしていた。
ノールさんにも確認をしておこうと近くに行って、声をかける。
「ノールさんは明日の討伐のためにもう一眠りします?」
「いや。俺は、ユウさんの倒したドラゴンの移動と、血抜きとか、肉の仕込みとかやってます」
それなのに自分たちが寝てるのは悪いなと思っているのを察してノールさんが言う。
「気にしないで寝てていいですよ。俺は度々、獲物を2日間ぶっ通しで追跡とかしてるんで、慣れています」
「そうですか。じゃあ、また明日」
「もう日は変わってるので、また後での方がいいと思いますけどね」
一度村長さんに寝にいくことを言って、ユウと村長さんの家に向かった。
「マイの言ってた通り、あの僧侶なんかムカつくね」
「でも、頭は切れる人だよ」
「うそ?」
欠伸をして、もうしゃべるのもめんどくさいなと思っていたが、ユウがどう言う意味かと聞いてきたので、答えることにする。
「たぶん対人用にしたのは、青年団の人たちが僕らが戦っていることを知って、結界の外に出て行かないようにするためだよ」
もっといえば、外側から入れるが、内側からは出れない作りにしたのは、そのためという事じゃないかとも思う。
「そっか。仲間にするとしたら?」
「絶対嫌。でも、人材的には魅力的」
「じゃあ、誘ってみようか」
「えぇ〜。まあ、来ないと思うけどね」
「なんで?」
「さあ。後でわかるよ」
別に、少し考えればわかる事だ。
ちょうどよく村長さんの家に着いたので、話を切り上げる。
「マイ。起きて。出発するよ」
もう日が出ている。
魔力は……回復したっぽい。
「朝ごはんは僕らはいらないと言っておいたから、もう少し寝ててもいいじゃん」
「なに言ってるかわからないから置いておくけど、とりあえず起きて。ノールさんが朝食、食べ終わったらいくから」
さっき寝たばかりな気がするが、間違ってはいないだろう。
「早く起きないと……」
「起きる。起きる。もう起きる」
「そんなに嫌?」
「嫌」
なにを考えていたかわからないが、たぶんよからぬ事だろう。
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