第一章28 『ドラゴン討伐7』
「もう。なにやってるの、マイは」
ドラゴン2体との攻防戦を始めてから、しばらく経つが、マイはいまだに現れない。
ノールさんを起こして、マイにローブを投げたあと、マイが鳴らしてると思われる鐘の音が聞こえた。
問題は、そのあとだ。
ユウが向かった方向と逆の方向にドラゴンが降りてきたため、村人たちの安全のためにも、そっちへ向かった。
そして、ノールさんにはマイの方に加勢しに行ってもらったのだ。
しかし、現状は
「ドラゴンに爪で足をやられて、動きはどんどん落ちてる。マイは一向に来る気配がない」
命の危険を感じる。
逃げたとしても、逃げ切れないだろう。
ならば倒すしかない。
自分のスキルは、
『自動回復』
『素早さ上昇大』
だ。
そのため、少しの怪我ならすぐに治るが、足の怪我は思いの外深い傷だったので、治っていない。
戦い方としては、素早い動きで相手の攻撃を避けながら、すれ違い際に攻撃を加え、隙が見えたら思いっきり叩き込むというような感じだ。
「雷系魔法。帯電」
剣に雷を纏わせる。
1匹のドラゴンに狙いを定め、ドラゴンの足を足場に駆け上がる。
その間に、剣を一振り。
次は胸の鱗に足をかけ、一回転しながらジャンプし、バッテンの傷を作り上げる。
左からの爪の攻撃。
そこに剣を突き刺してもう一度一回転しながら飛ぶ。
次は右から、今登っているドラゴンとは違う奴の尻尾が飛んでくる。
受けきれない。
前に剣を出し、防御。
剣はその尻尾にどんどん食い込んでいくが、振り抜き際に剣ごと吹っ飛ばされる。
身を捻って、目の前に迫ってくる壁を剣で薙ぐ。
壊したところに突っ込むとはいえ、大きな衝撃は避けられないだろう。
せっかく自然治癒で足が治ったのに。
足から着地しようとしたが、左腕を前に出す。
「ウッ。いった!」
足から突っ込んで骨折をし、動けなくなるよりは良い判断だろう。
「もう一回!」
もう一度同じドラゴンに狙いを定める。
1回目の尻尾の攻撃は避ける。
「雷系魔法」
別のドラゴンからの爪の攻撃は雷系魔法で動きを遅らせ、すり抜け。
もう一体の尻尾の攻撃と、連続で繰り出してきた爪の攻撃は、高く飛んで避ける。このままいけば、ドラゴンの首をスピードも乗っているので切り落とせる。
「あれ?」
さっきのドラゴンの攻撃は、爪だけ。尻尾は振り抜いた状態ではない。
「じゃあ」
一瞬振り向くと案の定尻尾が飛んできている。
身を捻って、さっきのように防御……。
いや。それだと、もう一体に切り裂かれる。
じゃあ、このままだと……攻撃をモロに喰らう。
「雷系魔法」
素早く唱えて、少し動きが遅くなればと思ったが、期待していたよりも遅くならない。
これから死ぬという感覚が身体中に走る。
いつしかと同じ感覚。
どっちの方が、生き残れる可能性が高い?
「結界!」
「回復魔法!」
「守備力低下魔法!」
誰の声?マイではない。
「そのまま、ぶった斬れ!」
考える時間もなく、捻ろうとした体を元に戻す。
しかし、その声によって重力に引っ張られながら、ドラゴンの首に剣先を近づけていく。
その出どころもわからない声を信じてみた。
ドラゴンの首元に剣先が到達するのと同時に、ガンッと鈍い音がした。
自分は鎧ごと粉砕されたか?そう思ったが不思議と衝撃は来ていない。
「結界か」
さっき誰かも知らない人の出した結界が守ってくれたのだろう。
さっきと比べて、柔らかいドラゴンの鱗をしっかりと切り裂き、首を切り落とす。
防御力低下魔法も効いているのだ。
首の切り落とされたドラゴンはゆっくりと地響きを鳴らしながら倒れた。
もう一体は。
また、首を切り落とすためにスキルによる瞬足で移動しようとしたが、もうそいつは飛び去っていってしまっていた。
仲間がやられて逃げたのか、自分だけでは倒しきれないと思ったのかはわからない。
あるいは、どちらもなのかもしれない。
さっきの声の持ち主はすぐに見つかった。
と言っても、ここにいる人は自分とその人だけなので、すぐに見つかる。
その人は、僧侶の格好をした男の人だった。長いボサボサの髪を後ろで乱雑に縛っている。
「風系魔法」
ドラゴンに向けてその人はそう唱えたが、届かなかった。
「ありがとうございます」
「ああ。実は、結構前から近くで観察してたんだけど、結構面白かったよ」
なんだかムカつく。これがマイの言っていた僧侶なのだろうか?
もう一度言うが、ムカつく。
「マイとかは?」
「さあ。あのチビは好きくねぇ」
「そうですか」
私もあなたのことは好くないです。と言う言葉は飲み込む。
一応、認めたくはないが、命の恩人ではある。
「まあ、教会に張ってある結界の中に戻るか。お前もついてこい。時期にそのチビも帰ってくる」
「私は、マイの方に行きます」
「あいつ男だよな?マイって。はは。村人たちが不安そうにあそこで待ってんだ。そっちに顔出して、みんなを安心させるのも勇者の仕事だろ?」
なぜ勇者ということを?
「大丈夫だ。誰にも言ったりしてねぇ」
「わ、分かりました。行きますよ。教会に」
言っていないでくれているのはありがたい。
ただ、なぜという疑問はいっこうに消えない。
「旅の方。無事でしたか?」
結界の中では母に抱かれている子供や、寝ている人、教会の中でただ座っている人など様々だった。
「はい。1体は倒したのですが、もう一帯には逃げられてしまいました。明日あたり、討伐しに行きたいと思います」
「お仲間は」
「じきに帰ってきますよ」
そこで気づいた。
結界を叩いて、外に出ようとしている人たちもいる。
その人たちが戻ってきたあの僧侶の気がついて、こっちに向かってきた。
「おい!僧侶。旅の方だけに任せてはおけねぇ。俺らも結界の外に出せ!」
「やだよ。死体を埋葬する身にもなってくれ。ほんとただでさえ忙しんだから」
子供と戯れてる僧侶はその人たちと目を合わせずに言った。
というか、本当に子供達に人気あるんだ……。
「うわー。僧侶ひどーい」
「穴掘りなら手伝うけど?」
「教会でいつも暇そうじゃん」
あ、これ、舐められてるんだ。
「お前ら、こいつをみてみろ。こいつでも下手したら死んでたぜ。というか、もうドラゴンはこの村にいないよ」
「あ?どういう意味だよ」
「そのまんま。こいつとその仲間が、もう追い返した」
みんながポカンと私をみている。
「ほ、本当ですか?」
「うん。マジ」
僧侶が答えた。
「お前に効いてねぇ」
子供以外には嫌われてるんだな……。
「……一応、一体は倒して追い返しました。討伐し切れなかった奴らは、明日あたり倒してきます」
「そう、か」
その人たちは、気の抜けたように離れていった。
他に何かかける言葉も見つからず、マイたちを探しに行こうと結界から出ようとしたが、通り抜ける事ができなかった。
「あの。僧侶さん。結界から出たいんですが……」
「無理だよ」
「はい?」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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