第一章27 『ドラゴン討伐6』
度々ノールさんの死角から攻撃されるドラゴンの攻撃を結界で止めながら、僕は1体のダミーと一緒にドラゴンを翻弄していく。
浮遊魔法で出来るだけドラゴンの攻撃は避ける。
体を伏せて、ドラゴンの爪を避けた。
「氷系魔法」
すれ違い際に氷系魔法で尻尾を串刺しにしようとするが、氷は砕かれて意味をなさない。
溜めた魔力も全部使い切ってしまった。
もう一度溜めなければ。
魔力は溜めなくても使える事には使えるのだが、溜めた方が効果は高い。
「結界」
その時間で魔力を溜め直す。
そんな一瞬では、全くためられなかった。
だめだ。
もう、ためずに魔力を使うしかない。
もう少し耐えれば。
もう少し……耐える。
耐え……なぜ、耐えている?
村人たちを避難させるためならば、もう目的は達成させている。
じゃあ、何のために?
ドラゴンを討伐するためか?
そうか。ユウが来るまで耐えれば。
「炎系魔法」
「結界」
炎の煙と結界でもう少し考える時間を稼ぐ。
「しくじった!」
戦力的に拮抗しているが、もう崩れるのは時間の問題だ。
「氷系魔法!風系魔法!」
攻撃をしてくるドラゴンにダメ元で反撃をする。
「なにがしくじったんですか?マイさん」
攻撃を避けながら、ノールさんは聞き返してくる。
「ここで耐えれば、ユウがきて拮抗してたのが優勢に傾くかと思ったけど、ユウも2体を相手してるんだった!これじゃあ、本当に拮抗状態だよ」
「じゃあ……」
「そう。今から逃げて、僕らも結界の中に避難した方が……」
どう考えても、ここの状態からドラゴンを討伐できるとは思えない。
「ユウさんの戦況はどうなんですか?無事なんですか?」
「ああ!探知魔法使うのも忘れてた!」
探知魔法を使って、ユウの状況を確認。
……平気、か。
でも、動きが少し鈍い。体力の限界も近づいているのか?
違う。足を怪我してる。
「足を怪我してるけどまだ平気そう」
ここから回復魔法を使っても届かないだろう。
「どうしますか?」
「逃げよう!」
逃げると言う選択がこの状況で一番良いだろう。
「待ってください。ここで引いた場合、このドラゴンが全部ユウさんのところまで行く可能性がありますよ」
「それは大丈夫としよう!」
ユウは見捨てる!
「いや。大丈夫としたところで、逃げ切れると思いません」
「マジで?1回やってみよう」
180度体を回転させ、全力疾走……しようとしたが、回り込まれた。
「なんでだよ!」
「結みましたね」
「そうですね。じゃない!」
どうしよう。ここからどうにかできないか……。
「どうしますか?」
「ちょっと待って。考える」
ダンッ。カチャッ。ダンッ。カチャッ。と一定間隔でノールが銃を打ち込んでいる。
「炎系魔法!」
ちゃんと当たっているはずなのだが、機動力は全く落ちない。
「マイさん!こいつの足。どうやって吹っ飛ばしたんですか?」
足が一本ないドラゴン。そいつの足は……。
「ローブだ!」
わざわざ攻撃を受けることはしたくない。
でも、仕方がないので、やるしかないか。
ちょうどよく翼の爪の部分で引っ掻いてきた。防御魔法陣を最大限に展開する。
ザシュ!
肩が抉れた上に、崩れた民家の瓦礫の中に突っ込んでいった。
「う、グフッ」
右腕の感覚もない。取れてしまったかな?
「回復魔法」
一応回復魔法で治すことができたが、これ以上体験したくはない。
「マイさん!」
「これは……」
本格的に終わった。
多分、ドラゴンは足の方の防除が薄いのだろう。
それを自分でも分っていやがって、爪で攻撃した……か。考えが浅はかすぎた。
「マイさん!こいつらを倒す以外、生き延びる道はありません!最後まで足掻いて、倒せなかった時は、その場合は潔く行きましょう」
「そうだね。もうこれはダメだ」
ならば、死ぬ前に研究中の魔法を使ってみよう。
一か八かだ。
「火炎魔法、結界、風系魔法。暴爆」
辺りの温度が一瞬にして上昇し、爆風が押し寄せてくる。
「結界」
咄嗟に結界を張ったものの、間に合わずに吹っ飛ばされた。
「マイさん。最初っからそれやってくださいよ」
「ちょっと理由があって。というか、自分でも驚いてる」
風系魔法で一カ所に溜め込んだ空気を結界に閉じ込め、火炎魔法によって一気に爆発させる魔法だ。
まさに、暴爆という言葉が似合っている。
しかし、魔力の消費量がどれほどなのか分からなかったため、このような状態で使おうという気にはなれなかったのだ。
どうやら、かなり効いたようだ。もろにくらった1体は、警戒するように飛んで距離を取った。
研究中だが、データが取れていないがために使っていない魔法がいくつもある。
それらも魔力が尽きるまで試してみよう。
「通常攻撃魔法」
次は魔力濃度を最大限まで圧縮した、超高濃度の通常攻撃魔法だ。
濃縮するがために、攻撃の範囲は狭まる。
それも極端に。
その上、魔力消費は半端ではない。
心臓の部分を狙ったはずが、翼を貫いた。
高濃度で暴れる魔力は、精度の管理も難しいのか。
とりあえず、初めてまともに追わせた傷かもしれない。
「やった」
「もしかして行けるんじゃないですか?」
次は、と考え始めて気づく。
自分の魔力はもっと少ないと思っていたが、全く魔力切れにならない。
自分は自分で思っていたよりも、規格外なのかもしれない。
現時点で思っていた量の数倍の魔力は使っている。
「風系魔法、通常攻撃魔法」
通常攻撃魔法を風系魔法によって削り取り、薄くして刃物のように鋭くした。
しかし、ドラゴンの鱗は切れない。
どちらかというと、刃がどんどん鱗に削り取られ、鋭かった刃は刃こぼれをしている。
もっと高濃度にして、硬くしなきゃ無理かな。
あるいは、
「風系魔法、通常攻撃魔法、氷系魔法」
咄嗟の思いつきだが、刃に氷をコーティングしてみる。
それは、ドラゴンの腹に斜めに一線を入れた。
徐々に形勢がこちらへと傾いてきている。
あとは、魔力が切れなければ……。
「マイさん!いけますよ!」
「うん。これなら!」
次は、風系魔法に、鋭利な氷の破片を乗せて、竜巻を作る。
氷がドラゴンに刺さり切ったところで、業火を浴びせる。
今までの数十倍の魔力を使って繰り出した業火だ。ダメージが入らないわけがない。
「魔法の使い方がやっと分かってきた!」
やはり、経験を積む事が1番上達するのだろう。
「自分は、自分が思っているより、規格外だ」




