第一章24 『ドラゴン討伐3』
まず、村の中央で大規模な結界を展開する。
村の全てを覆う弱い結界だ。
もちろん弱いため、ドラゴンが来た時に村を守れるほどではない。
しかし、術者は結界を破られた時、破られたことに気づけるので、寝ていても気づかずに寝過ごす心配はない。
それに、いち早く気づくこともできる。
「結界」
手に魔力を集中させて、薄く伸ばす。
村に半球形の結界を作成。
そして、固める。
空に半透明のものがかかっている。成功だ。
「あ、もしかしたら、村の中で少し騒ぎになるかもしれない」
いきなり空に何かがかかるわけだから、少し騒ぎになってもおかしくはない。
「まーいっか」
次は、さっき教えて貰った教会で、強目の結界を張りに行く。
村で乱戦になった場合、村の人たちに避難してもらうためだ。
教会の大きな扉を開いて、中を覗く。
「こんにちは」
「あんだよ。こんな遅い時間に」
「まだ3時ですけど?」
僧侶の格好をした人が、教会の長椅子に寝っ転がっていた。
まじで?この村の教会の人こんなんで大丈夫なの?
その人はこっちを向いて、
「子供?もう遅いから、帰って寝てろ」
僧侶と思えない男に、尊敬を込めて軽蔑の視線を送る。
「そんな顔すんなって。悪かった。なんかようか?」
「結界張るんで、場所を貸してください」
「むり」
「村長さんに、結界張る時に何か特別なもの置いたりするんだったらここでって言われたんですけど」
男は嫌そうな顔をした。
「あいつが?」
少し考え込んでいる。
「さっき作られた結界はお前がやったのか?」
「そうです」
「何のために?」
「ドラゴンが来た時、分かるようにするためです」
めんどくせーとかって言いながら案内してくれた。
「なんで勇者一行がこの村にいるんだよ?」
「え?」
なぜこの男は勇者一行と知っている?
「何で、勇者一行の最強最小の賢者がここにいる?って聞いてんだ」
「あー。えっと」
「リストラ?」
「何でそうなる?」
「説明されても多分俺は聞かないからいいや」
じゃあ何で聞いたんだよって言いたい。
「はい。これな。もう結界用の魔法陣が置いてあるけど、それは動かさないで」
「結構強い結界用の魔法陣だね」
「まあ、ドラゴンが来た時用の避難所にするためのものだからな。ここに強い結界を張るんだったら意味ないぜ」
「ちょっと心許ないんで、書き加えても?」
怪訝そうな顔で見られている。
「やだよ。子供にそんなことやらせて壊されたくない」
「な?」
「こんなだけど、一応俺も大僧侶だから」
「こちらもこんなですが、大魔術師と大僧侶持ってます」
「なら、1から作ったの置いておいてよ。何かで発動しなくなっても困るでしょ」
一理あるのがムカつく。
「分かりました」
うし。と言ってそいつは僕の前に座りやがった。
僕が邪魔だという顔をしてやると、それに気づいて奴は言う。
「なんだよ。滅多にお目にかかれないだろ。世界最高峰とも言われる賢者様の腕なんて」
「僕の腕なんて見て何が楽しいのさ」
「お前の腕なんて見ねえよ。見るのは技術だ」
しょうがないので、無視して1から魔法陣を書いていくことにする。
魔法陣を書く特別な紙と、筆。あと、染料が必要なのだが持っていないので、それから作ることにする。
「皿持ってきて。お前」
「なんだよ偉そうに」
そう言いながらも、立ち上がって部屋にあるタンスから小さめの皿を取り出した。
「墨もある?」
「ああ。あるよ」
皿に墨を垂らす。
自分の手を切って、そこに一滴垂らした。
「やっぱそっち系の製法か。痛いの嫌いだから、俺はあんまりやりたくないんだよな」
「そうですか」
魔法陣はものの数十分ほどで作り終わった。
作っている途中に色々と質問されたりしたが、ほとんど適当に受け流した。
「これ。発動するのは、一回きり。継続時間は1日」
「みじか」
「別にいいでしょ」
つくづくムカつく奴だ。
「もし、今日ドラゴンが来たらすぐにこれを使って。そして、村人をこの範囲に避難させる」
「えー。めんど」
「やれ。分かったか?」
「うーい」
帰り際、一応教会の出口までは送ってくれた。
「またいつでもお越しください。神はあなたを待っております」
僧侶の定型分。全く捻りがない。
その上に、めっちゃ棒読みだ。
「こんなとこ一生来ないよ」
「ああそうか。こっちからも願い下げだ。お前がくるのなんて」
もう会わないだろうななんて思いながら、教会に背を向ける。
「こんばんは」
もう日はすっかり暮れていた。
「はーい。ああ。どうぞお入りください。部屋まで案内しますね」
「ありがとうございます」
村長さんの奥さんだろうか。綺麗な人だ。
部屋まで案内してくれると言うので、素直に着いていくことにする。
「ここです。もう一つ部屋はあるのですが、本当に2人で一室で良かったんですか?」
うーん?聞き間違いかな?
ドアを開けて中に入ってみる。
「すみません。やっぱり、もう一室用意してもらっても?」
「あー。まあ、いいで……」
「マイ?失礼だよ」
失礼もな何も、僕の意見は一つたりとも反映されない点について幾つか物申したいことが。
「すみません。躾がなってなくて。しっかりと言い聞かせますんで」
「そうですか。じゃあ、夕食時にお呼びいたしますね」
かちゃ、と後ろのドアが閉められた。
「ユウ?」
「なに?」
なんの悪びれもなさそうな顔。
「なんでもない」
「そ」
こればかりは、なにを言っても意味がない。
「で、結界はどうだったの?」
「なんか色々疲れたよ」
そのままベットに倒れ込ませてもらう。
家に幾つもベットがあるなんて、宿屋でもあるまいし珍しい。
「しょうがないな」
いきなり抱えられて、ユウの太ももの上に寝かされる。
「え?なに?」
「一回やってみたかったんだよね。このまま寝ちゃってもいんだよ」
起きあがろうとしたら、顔を抑えられた。
「強制です。昨日の罰です」
「昨日僕何かやったっけ?」
「今考えてる」
「えぇ〜?」
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