第一章25 『ドラゴン討伐4』
「夕食です」
すぐに体を起こす。
顔を抑えられる事はなかった。
ドアがノックされて、何かと思ったらそう言われた。
声的にあの人だろう。
「はーい。すぐに行きます」
持っていくものはないので、自分はローブだけかぶってユウとその女の人について行った。
「私は、もう1人の方をお呼びしてからいくので、先にリビングに行っていてください。場所は分かりますね」
「はい。大丈夫です」
リビングまで行くと、村長さんがいそいそと料理を運んでいた。
「意外と村長さんって」
「こらマイ。失礼だよ。私も思ったけど」
「ああ、いらしてましたか。珍しいですか?」
笑いながらそう言った。
「妻には、尻に敷かれてまして。別にやる事はないんでいんですけどね。ささ。座ってください。すぐに運びますんで」
「マイ。私は優しくするから」
「なに。いきなり」
大人しく席に座らせてもらった。
すぐにノールさんと村長さんの妻もやってきた。
「これを運んだらもう終わりだから、座ってて」
「ありがとう。お客人たちもお好きなところにお座りください」
僕はユウの向かいに座っている。
ノールさんはその間の右側に座った。
いつしかノールさんと相席したことを思い出す。
「私は隣に座ってもいいかしら?」
「お構いなく」
僕の隣には村長さんの奥さんが座った。
そして、ノールさんの向かいに村長さんが座る。
「どうぞお召し上がりください。今日は調子に乗って、主人と少し作り過ぎてしまったので、どんどん食べてくださいね」
「いただきます」
大きい皿からいくつか自分の前の皿に移す。
「んん。美味しい」
ユウが食べたのと同じものを食べてみる。
「本当だ。美味しい」
「よかったです。喜んでもらえて」
「教えてもらっていいでしょうか?」
ノールさんは、一口食べてそう言った。
料理に対する執着心は人一倍だからな。
「いいですよ。あとで渡しますね。旅の中でも、料理とかはするんですか?」
「しますします。と言うか、してもらっています。ノールさんに」
ユウが料理なんて、なんか紫色のヤバいものしか出てこなさそうな気がする。
「実家が小料理屋でして、少し得意なんですよ。旅をしている時にも、いろいろやらせてもらっています。この2人が美味しそうに食べるので、作り甲斐がありますよ」
「そうか。やっぱり、その時食べるものは、その時とってきたりするのか」
それまで黙って食事をしていた村長さんが口を開いた。
「保存食も一応作ってますがね。ほとんどはその時とっています」
「燻製とか!」
保存食で最近食べている美味しかったものを挙げる。
「うん。燻製は保存食の中でも一番美味しい」
ユウも最近は何かとお酒のつまみにして食べていたりする。
「保存食ですか。それなら、この村でも少し伝統的なものがあるんですが、どうですか?」
「それはぜひ教えていただきたいです」
話を聞く限り、クッキーのようなものらしい。
必ず、各家に数週間分は置いてあって、不作の時に食べるとか。
「そうだ!明日私たちがドラゴン倒したら、村のみんなでドラゴン肉で打ち上げしましょうよ」
「いい案ですね。料理人の腕がなります」
「それなら、明日の昼頃、私と主人で村のみんなに伝えておきますね」
「そうだな。夜あたりがいいか?」
なにやら大事になってきたが、ノールさんの手料理がたらふく食べれると言う事なので妥協。
「あと、ノール様はユウ様たちのパーティーの料理人なんでしょうか?話を聞いているとどうも料理人にしか……」
ノールさんがはははと笑って答えた。
「職は狩人ですよ。まあ、主力はこの2人なんで、ほぼ料理人みたいなもんなんですけどね」
「そんなそんな。ノールさんだって大事な主力ですよ。だって、私とマイが目配せだけで意思疎通できたと思ったら、どっちも動かなくて魔物に襲われて助けてくれたりとか。私とマイが喧嘩で消耗し切って、ノールさんが出てきた魔物を全部相手してくれたりとか」
「……」
「こう言ったら失礼だが……しょうもないな」
「まあ、確かに全部本当にあった事ですね。あとこんなこともありましたね。ユウさんとマイさんが遊んでて、まったく俺が魔物を倒したことに気づいてなかったり」
そんなこともあったな。
「そういえば、あの教会にいる僧侶って大丈夫なんですか?」
「ああ。あれですか」
村長さんはため息混じりにそう言った。
「え?なにがあったの?」
「結界張りに行った時にさ……」
あの教会でのことを話す。
「まあ、あんな奴ですが、結構村では人気なんですよ」
「えぇ〜?」
今日二回目の『えぇ〜?』だ。
「思ったんですけど、この村のものじゃないですよね」
「ああ。そうだ。旅をしていたらしいが、気がついたらあそこに住み着いてた。無人だったから、この村にも教会ができるってみんな喜んでたな。なあ、確か1年くらい前のことか?」
村長さんは奥さんに確認をした。
「たぶん、やっと一年経ったと」
あいつも旅をしていたのか。
「あんな人なりなので最初は誰も近寄りませんでしたが、ドラゴンが襲いにくるようになってから、結界を張って避難場所にしてくれました。それからですかね。子供達から人気が出始めて、最近じゃあ遊んでいるところもしばしば」
「あいつがそんな……」
まったく想像できない。
「なに?そんなに疲れるような人だったの?」
「ちょっと馬が合わないと言うか……」
「あの。もし、不都合がないのであれば、あの人を旅に誘ってやってください。たぶん、私たちを守るだけの為にこの小さな村に留まっているんだと思うんです」
旅に、か。
僧侶なので、攻撃魔法に専念できるようになる。
大僧侶の称号も持っていると言うので、実力は相当だろう。
「どんな感じだったの?マイ」
「実力はあると思うよ。大僧侶らしいし」
「なるほど。魅力的な人材ではある、と」
「まあ、少し考えてみます」
ユウがそう言って、話を閉じた。
話が終わった頃には、もうほとんど食事は終わっている。
「よし。風呂の用意をしてくる。あれだろうから、ユウさんと、そこのお嬢さんは先に入ってしまえ。ああ。お前もな。3人が出てきたら、私たちも入る。」
女性陣は先に風呂に入ってしまいなさいと言う意味だろうか。
僕を含めて、3人と言う意味だろう。
「お前さんも大丈夫か?」
ノールさんに確認をとった。
「全然。俺はいつでも大丈夫ですよ。ただ……いや。なんでもないです」
おい。言ってくれよ。
「旦那様?この子は女の子なのですか?」
「あ?と言うと?」
「男の子だと……」
「本当か?」
まさか、僕を男だと見抜いたのは2人目だ。
「はい」
「じゃあ、お前さんも私たちと後だな」
風呂が沸いたら呼んでくれると言うので、一旦部屋に戻った。
「まさか、マイのことを男の子と気付く人が私以外にいるとはね」
もうわかったと思うが、二人の中の一人は、ユウのことだ。
「ほんと。まさかこんなに人に会ってきて、二人しかいないとは」
「私は、二人目がいることに驚いたんだけど」
風呂に入った。
次の日は早くに出発すると言うことで、今日はすぐに寝た。
ユウに絡まれることなく、快眠と思ったが、悪い予想ほど当たる。
その日、村は炎に包まれた。
「面白かった!」
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