第一章22 『ドラゴン討伐1』
ルートの分岐の街から三週間ほど。
自分が勇者のパーティーに加わってからもう少しで一か月になる。
旅は予定より遅れていた。
一か月もすれば南の国までつくのだが、途中にある村々で村人の手助けをしたりなどしていたためだ。
冬を越せればいいだけのため、五か月ほどはいろいろな国を回れると言っていたが、このペースでは南の国ついて、数週間ほどフラフラしたら戻るくらいの感じだろう。
そして、その遅いペースがためにだんだん北から寒さが追い付いてきた。
「今日も寒いじゃん。寒が南下するのと同時に南に行って、過ごしやすい温度で、って思ったのに」
「結構人助けしてましたもんね。とは言え、今年は南の国でも雪が降りそうですよ」
収穫の手伝いとか、草むしりとか、魔物退治とか、子供に武芸を教えたりとか。
思ったよりも切羽詰まって、一刻も早く魔王を倒す。
と意気込んでいるわけでもないから楽しい旅ではある。
「ほんと?どこいってもこの寒さからは逃れられないのか」
「そういうことですね。マイさんは寒いのとか平気なんですか?」
マイさんの着ているものは暖かかった時と全く変わらず、Tシャツの上にローブだ。
「確かにマイって服装変わってないよね。昔っからそうだけど、寒くないの?」
「寒くない」
ユウさんはグローブを外して冷え切っているだろう手でマイの手を握った。
「ヒャッ⁉︎」
マイの体が飛び跳ねる。さらには両手まで掴まれて、ローブの中に袖から逆に入れられてしまう始末。
「あったかい。このローブこんなにあったかかったんだ」
服の中にちらっと表にあるような魔法陣が見える。
「まさか、裏の魔法陣で温度管理できるとか?」
「い、いや。そんなわけ。ね」
どう見ても嘘をついている。
「ずるい。私の鎧の中にも書いてよ」
「ユウは魔法陣に常に流しておけるような魔力ないでしょ」
「ぜひ俺の服にも書いてほしいですね」
「さっきの話聞いてました?ノールさんは平均よりも魔力量が少ないんで、どう考えても無理です」
そんなこんなで、次の街に着いた。
次はこの村で何をすることになるのだろうか。
約1ヶ月も2人と一緒に旅をしてきていろいろわかったことがある。
村に入ると、村人は開口一番こう言った。
「旅の方。旅の方。お願いです。村を襲うドラゴンを退治してください」
ユウとマイは俺の方を見る。
約1ヶ月、旅をして分かったこと。それは、
「な、なんですか?」
この2人は
「「ドラゴンっておいしいですか?」」
グルメだ。
「ドラゴンが、村を荒らしにくることがあると」
村長さんの家でとりあえず話だけでも聞くことにした。
ユウのことなので、依頼を受けるのは目に見えている。
「はい。ここより、南側に10メートルないくらいの崖があります。そこにドラゴンの巣がありまして、確認できるだけでも4匹ほど。どうか、お願いします」
「それは、少なくとも4匹ということですよね?」
ノールさんがもう一度確認するように言った。
「はい」
「ノールさん。ドラゴンが群れなんて作るの?」
ドラゴンが群れで生活するというのはあまり聞いたことがない。
勉強不足というのは、一旦置いておく。
「作りますよ。前に、討伐依頼を受けたことがあったのですが、その時は俺1人で。もう2パーティーほどの方々に支援要請を出して、やっとでした。その時は確か、8体くらいの群れでしたね」
まだ僕らは魔族との戦闘しか経験したことがおらず、魔物と戦うことについてはまだ無知だ。
師匠と何度か魔物狩りに入ったものの、低級モンスターとしか戦ったことがない。少し強くても中級くらいだ。ユウも同じようなものだろう。
ドラゴンは問答無用で上級モンスターに分類されるため、僕らにとって未知の世界である。
「まあ、今回は3人で倒せると思いますよ。前衛のユウさんに、魔法職のマイさん。そして、相手の気をそらせる俺でざっと2体くらいならいけます」
「ダメじゃん」
しかし、魔族を倒している僕らなら多分問題はないはずだ。
魔族も問答無用で上級モンスターに分類されているため、それほどの実力はあると見ていい。
「じゃあ、やろうか。今日はとりあえず偵察をして、明日にでも討伐に向かおう。このままいく感じでいい?ノールさん、ユウ」
「オッケー」
「大丈夫です」
椅子から立ち上がり、僕らはそのドラゴンの巣があるという、崖に行くことにした。
「ま、待ってください。ほ、報酬とかは?」
「それは大丈夫。路銀とかには全く困ってないから」
「でも、」
なにもなしにお願いするのは、悪いと思ったのだろう。
村長さんに呼び止められた。
「んー。じゃあ。少しこの村に泊まらせてくれれば大丈夫です」
「そんなんでいんですか?」
「大丈夫」
「それなら、うちで部屋を用意しておきます」
「ありがとう。じゃあ、とりあえず見てくる」
最後に気をつけてくださいと背中に声をかけられた。
「で、どうなの?マイ」
「多分5体。全長は標準ってとこかな」
「そこまでわかっちゃうんですね」
国一つくらいなら、探知魔法で情報を得ることはできる。
「そんなに遠くないから」
「じゃあ、道案内よろしく」
歩き続けて1時間ほど。
「マイさん。近いって言ってませんでした?」
「探知魔法的には近いよ。僕らが歩いたら、1時間くらいはかかる。でも、もう少しでひらけたところに出るよ」
2人はもうすでに息が切れている。かなり険しい道だったので、当然といえば当然だろう。
「飛べる人はいいですね」
「本当だよ」
2人の皮肉は無視して、木々の葉をかき分けると、目の前には大きな崖があった。
下を覗くと川もあり、草も生えている。
よく見てみると、その一段下がったところは周りを崖に囲まれていて、どうやら地形が沈没したと見られる。
「これは、絶景ですね」
その沈没した草原の真ん中には5体のドラゴンがいる。
魔物の象徴とされており、ある場所では、神とも称えられ、崇められている地域もある。
遠くから見たドラゴンの印象は、美しいと言っても過言ではないだろう。
「ノールさんって、ここからドラゴンの目玉を撃ち抜けるの?」
「出来ますね。9割方当たると思います」
ここからドラゴンまでの距離は約800メートルほど。ここから魔法を撃つとなると、魔力が離散してしまい、とどかない。
それに比べたらスナイパーは長距離と言えるのだろう。
昔は魔法職が長距離戦の最前線とか言われていたらしい。
長距離なのに最前線って矛盾してるじゃんって師匠に言った記憶が。
「じゃあ、気を逸らすのは問題がないと」
「問題は私たちがどうやってあっちまでいくか、かな」
「そうだね。マイは飛べるからいいけど、私は」
近くの石を魔力で浮かせ、力を与えて吹き飛ばしてみる。
「やだよ?絶対無理」
僕の言わんとしていることを見抜いて、先にユウが拒否した。
「マイは私を連れてあそこまで飛べないの?」
「え?」
もう一度石を吹き飛ばす。
「そうじゃなくて!それは本当に死ぬから無理」
「マイさん。そこに洞窟があるの見えますか?」
ずっと周囲を見渡していたノールさんの指差す方向を見てみた。
「見える」
「あれは多分こっちまで繋がってると思うんですが、わかりません?」
一瞬、探知魔法で探ってみようと思ったが、やめた。
「そもそもユウが普通に崖から降りれないんじゃない?」
地中を探知魔法で探知するのは色々と面倒くさい。
普通に降りてくれることになればこんなことする必要はないのに、と思って言ってみる。
「確かに普通に降りればいいだけか。ロープがあれば私ならば降りれる」
ドラゴンは変わらずにこの草原の真ん中で、水を飲んだり、羽を羽ばたかせたりしている。
その中の一匹がこちらを見た。
目が合う。
目が合ってしまったのはユウも気がついたらしい。
「これはどうした方がいいのかな?」
「一旦引いた方が良さそうですね」
「面白かった!」
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