第一章21 『畑を荒らす者6』
「さて、帰ろうか」
狼男の死体は穴に埋めておく。そして、狼男から返してもらったユウの鎧を持って言った。
「そうですね」
ノールさんも村の方に体を向ける。それは、ユウの方向とは逆。
ユウに2人で背を向けている。
「ちょっと待った。私は?私を助けてくれないの?」
仕方ないので重そうな石を乗せられているユウのそばに行く。
「正直、この石はどかせそうにないから無理かな。ノールさんできる?」
「俺の力ではどうしようも」
「マイがこの石を破壊すればいいじゃん!助けてよ」
ユウが泣き叫ぶ。
「でも、助けを呼ばずに1人で戦おうなんてしたからな」
「そうですよね。俺らを連れ出せばこうはならなかったのに」
ノールさんも言った。
「ごめんって。次からはちゃんとみんなを呼ぶ。というか、ついてこなかったのはマイでしょ!」
「そうだっけ?いや、それでもついてきてとは言ってなかった!」
しょうがないので、杖を取り出してその杖を石に向ける。
「闇属性魔法」
杖から出された黒い粒たちが石を覆い、だんだんと覆われた黒い物体が小さくなっていく。
僕の身長ほどになったとき、その黒い粒たちが弾け飛んだ。
「ものを消滅させる魔法」
「マイ!自信ありげに言わなくていいから。そもそもそんなのあったなら最初から石を消してよ」
「石を消して解放したら、狼男がユウを殺しにいくかノールさんを殺しにいくかわからなくなるでしょ?今回は確実にノールさんを殺しにいって欲しかったから、そのままにしておいた」
自分の考え(半分は後付け)を丁寧に教えてあげる。
「そういうことね。ありがとう」
また怒らせてしまったみたいだ。ユウは村に戻るよと言ってそっぽ向いて行ってしまった。
「怒りましたね」
「だね」
僕ら2人はそのユウの後ろをお追いかける。結構魔力を消費したのだから、少しくらい労ってくれても良いのではないのではないだろうか。
村に戻ってからは、狼男が狼たちを操っていたことを説明し、それから3日ほどは狼の捕獲や狩を行った。
これは狩人である、ノールさんが大活躍し、村人に毛皮の剥ぎ方や狼の肉の消費の仕方などを教えていた。
狼男との戦いの後に聞いた話だが、あの時、操られている狼に全く襲われなかったのはユウがほとんど倒し尽くしたからだったらしい。積み重なっていた狼の死体には気づいていたので、別に驚くことはなかったが、本人曰く大変だったとか。
そして出発の日。村長と思われる人が
「本当にありがとうございました。この村は宿屋が盛んとはいえ、他の街から食料を買うほどの利益は得られていません。なので、自分らで食べるものは自分らで作るような村なのです。だから、家畜や農作物を荒らされたら生きていけません。狼を退治していただき本当に助かりました」
村長が深々と頭を下げると、村のみんなも頭を下げた。
「そんなそんな。困ってる人がいたら助ける。当たり前じゃないですか」
ユウは謙虚に言った。僕は目立ちたくないので少し離れて様子を伺う。
ノールさんはユウの隣に立っているだけだ。
「これは、ほんのお礼です。旅にでもお役立てください」
村長が差し出したのは袋に入った100枚銅貨3枚。
それをユウが受け取る。
その後の会話は興味がなかったので聞かなかった。
「また旅の再開ですね。少し長居し過ぎましたか?」
ノールさんは自分の荷物を背負い直しながら言う。
「いや。元々冬が明けるまであったかい南に行こうってだけだし、時間は潰せるところで潰しておいた方がいいよ」
そして、また出発してから数日。
西南ルートの分かれ道にある街まで辿り着いた。
ここから南の国の領土に入るまで、大きい街はここで最後らしい。
「気楽な旅だね。でも、もう1人の仲間が欲しいな」
パーティーが4人というのは鉄則だ。
新しい仲間はどのような職が良いだろうか。
もし、もう1人の仲間を迎えるのだったらと考えてみる。
「その通りだねマイ。やっぱ、パーティーは4人欲しい。だからあと1人。魔法職がバランス的にはいいかな?」
「魔法職はマイさんだけで十分な気がしますけどね。でも、強いていえば僧侶とか?」
攻撃魔法に専念できるのは魅力的だが、それだと近距離戦はユウだけになってしまう。
ノールさんも近距離だが、どちらかというと、魔法職と同じ中距離となるだろう。だからやはり、
「戦士じゃない?」
このパーティーに足りないのは、圧倒的に物理攻撃力。
「戦士か。確かにいいかも。私と違って、重い一撃を与えられるからね。ほら、私はオールマイティーだから」
「ユウの攻撃は多分戦士と同じくらいには重い一撃だよ。確かに雷系魔法は得意みたいだけど、ぜひとも回復魔法を覚えて欲しい。」
それは。とユウが口籠る。
「ユウさんも魔法使えるんですか?」
「得意じゃないけどね。やっぱり、こういう重い武器振るう方が性に合ってる」
ユウは剣を抜いて、一度振った。
「でも、戦士はいいかもしれない。魔法使いも捨て難いけど」
「魔法戦士って職はないことはないんですけどね」
魔法戦士。それは中途半端とされ、好き好んでなるような奴はいない。
物理攻撃も、魔法攻撃も、中途半端で、軽蔑されるような職。
「まあ、仲間にするような奴は、ね」
「いないよねー」
「冬が明けるのはまだまだなので、気長に探しましょうよ」
「そうだね」
仲間を増やすという話はここで一旦お預けだ。
「じゃあ、俺が宿とってくるので、マイさんとユウさんは消耗品を買いにっててください」
ノールさんにお金を渡す。ノールさんはこの街に何度かきたことがあるので、いい宿を知っているとか。
しかし、任せたのが間違いだった。
ユウと道具屋に行き、消耗した薬草や、毒消し草などを買ってきた。
そして、戻ってきたとき。
「二部屋しかないらしいので二人部屋一つと一人部屋を一つ取っておきました」
「ノールさんナイス!」
ユウさんが嬉しそうにいう。
「まった。まったまったまった。ノールさん。どこからが本当?」
「二人部屋……からです」
「やってくれたな」
もう慣れたとはいえ、半分以上を無視する身にもなってほしいものだ。
「ノールさんは僕を過労死させる気?」
「俺はユウさんの要望を聞いただけです」
「2人ともどこから繋がってた⁉︎」
その日は比較的穏便に事が済んだ。
そしてその街では領主に挨拶だけをして何事もなく西南ルートを南下することになった。
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