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第一章20 『畑を荒らす者5』

ここまでノールは一度も動かず狼男を観察していた。あわよくば打ち込めるかなどと思っていたが、どうやら無理そうだ。

ノールはマイと話していたことをもう一度思い出している。


『魔力で防御しにくいのはね。目なんだ。魔法を使える人は少なからず魔力が目に見える。それなのに目の前に結界なんて張ったら、自分の目の前にだけ煙幕を張ってるのとおんなじなんだよ』


『へぇ。俺には全く見えないです』


『ノールさんは、平均よりも絶望的に魔力量が少ないですからね』


『え?本当ですか?昔から、一度だけでも魔法を使ってみたいと思っていたのに』


『今すぐ諦めた方がいいと思う』


『少しオブラートに包んでいってください』


『だから、片目だけでも奪ってほしい。必ずどこかで隙ができるはず。そこで撃ち込む。そしたらあとは僕がなんとかする。下半身がなくなるくらいなら僕がすぐに治せるから、安心して戦っていいよ』


『何がだからなのか分かりませんが、片目ですね。分かりました』


マイが倒された今、自分が目玉を撃ち抜いたとしても解決につながるかは謎だ。


しかし、マイは倒れる寸前に自分の目を押さえて、こっちを見て、頷きながら倒れた。


このように、腹を突き刺された時がチャンスというのだろうか?ならば、下半身がなくなる前提の話ではないかと言ってやりたい。子供のくせによく怖気付かずに戦えるものだ。と思う。


マイの見た目的にも、まだ家の手伝いをしていてもおかしくない年齢。


まあ、信じてやってみるしかない。


「次はお前だ」


その瞬間、狼男は自分の目の前に。

自分の腹に狼男の腕が刺さっているだろうということは、頭から振り落とす。


分かってしまった瞬間に、痛みが走り、何もできなくなってしまう気がする。


殺意を、全ての感情を消す。

狼男とは目が合っている。銃口は狼男の目に映っていて、ここで引き金を引けば確実に当たる。


こいつの瞬足で逃げられなければ。

そう、気づかれたら終わりだ。


気づかれれば、そこで死ぬ。


「ふぅーー」


深呼吸に混ざって血の味が逆流してくる。


「2匹目」


引き金を引く。

相手に気づかれることなく、弾丸は狼男の目玉を貫いた。


安堵と共に腹部に痛みが走った。もう狼男は目の前にいない。


「くっそ。なんなんだ。いてぇじゃねえかよ」


狼男は叫ぶ。

狼のように、それはやがて咆哮になる。


傷口に音の振動が伝わってきて、痛みと共に吐き気が込み上げてきた。

思わず自分の腹に手を当てる。


しかし、空いていたはずの穴はもう空いていない。


「いかにも、負け犬に合いそうな遠吠えだこと」


さっきまで倒れていたマイが立ち上がっている。

その手には杖が握られており、それのおかげで回復できたのだと分かった。


「お前、回復魔法も使えるのか?そうか。賢者か。厄介だ」

「確かに、僕は賢者だ。でも、賢者じゃなくても魔法使いなら多少は使えるよ」

「そうか。勉強になった」


また、狼男はマイのローブの間を貫く。

今回は胸。心臓が突き刺されたと思われた。


いや、突き刺された。


「どうやら、片目をつぶされると遠近感がわからなくなることくらいは分かってたみたいだね。関心関心」

「なんだよ、ベラベラ気持ち悪い。早く死んでくれればいんだよ」


心臓を貫かれたはずのマイは喋り続ける。


「騙されてしまう。それも無理はないよ。そろそろ終いだ」




心臓を突き刺された僕は狼男の額に人差し指をちょんとつけて真下になぞる。鼻、こめかみ、喉仏。


「さあ、まずは1段階目。拘束魔法がかかったね」


ユウにかかっている少し動きを鈍くするだけの拘束魔法ではない。

一つも動けなくなるような強い拘束魔法だ。

もう動くことは不可能。


喉仏からゆっくりと指を下ろしていく。


「今回はしっかり心臓を狙った。けど、最初から狙ってればこんなことにならなかったのに。お前は油断をしていた」


狼男は強張った表情を見せる。


「なぜ。なぜ生きている?」

「順番に説明していこう。トリックの解説で、結論だけ教えても面白くないでしょ?説明するならタネから教えないと」


ノールさんもユウも気づいていないのだろうか?

ユウはもう気づいているのかもしれない。あるものを見つけていれば。


「お前は、僕らを舐めて最初に心臓を突き刺さないどころか、腹を突き刺したあと絶命させなかった。それが甘かったね。お前はノールさんに右目を撃ち抜かれる。そしたら片目だけでは遠近感がわからなくなるのをわかっていて、魔力の動きに集中し、魔力の大きい僕の心臓を突き刺した。もちろん、魔力を最大限まで隠した僕には気づかなかったわけだ」


指を下ろし続けて鎖骨の下あたりに指はある。その指を下ろし続けた僕は僕ではない。腹を突き刺されて仰向けに転がっていた僕は体を起こした。


ユウは呟くようにいう。


「ダミーだ」


ユウが言ったのを僕は聞き逃さない。


「そう。ユウ正解。ダミーは濃い魔力の塊。それを僕の実体と勘違いしてお前は腕を突き刺した」


僕のダミーは薄れていく。もう少しで全ての準備が整う。


「その魔力濃度の高いダミーを拘束魔法に変換。そしたらお前は動けない。そして、その右目に負った傷からはそのダミーの魔力が全て入っていく。これが2段階目」


ダミーの指はもう少しで体も中心。心臓に到達する。僕はダミーの後ろに立った。


「ノールさんに右目に傷を作ってもらったのはそのため。心臓に近くて、防御魔法をかけにくい目は最高な場所なわけ。傷口から入り込んだ魔力はやがて心臓まで到達する」


ダミーの指が心臓をしっかり指した瞬間に消滅。魔力が全て狼男の体内に入り込んだ。


「や、やめ。やめてくれ‼︎」


狼男が今更ながら命乞いをしてきた。


「さて、トリックも最終局面といこう!」

「や、やめろ。クソッ」


マイは狼男の心臓に、自分のダミーがやっていたようにそっと触れた。


「何か言い残すことは?」

「テメェ。一生呪う。覚悟しろよ」


「死人がでかい口叩くな。まさに失笑」


最後の足掻きも虚しく、マイの魔法には意味をなさない。


「3段階目は、氷系魔法。氷剣乱斬」


氷は体の中から身体を突き抜く。鋭い氷は狼男の心臓を中心に四方八方から貫いた。

青く透明な氷は赤い液体を滴らせる。


土の上にもシミが作られ、広がる。


「おーわり」


ユウは高らかにそう宣言した。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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