第一章18 『畑を荒らす者3』
「君。これは……バターナイフじゃなくてバタフライナイフ」
「えっと。はい。バタフライナイフください」
2人で一通り大笑いした後に、使い方の説明などを聞く。
通りで皆んなに通じなかったわけだ。
「バタフライナイフはね。俺も一つ持ってるんだが、こうやって少し振るようにして、刃を出すんだ」
店主さんが取り出したバタフライナイフを一振りした。少し回って刃が出てくる。
もう一振りすると柄の部分が二つに分かれ、たたまれて収納された。
「へぇ。ただ安全に収納しておけるだけだと思っていました」
「いやいや。これを使えばこんなこともできちゃうよ。どちらかというと、娯楽用みたいなもんだな」
店主さんは手の上で器用に2つに分かれる柄の部分と刃の部分を使ってバタフライナイフを回し始めた。手の上で回り続けている。最後は少し投げてキャッチ。
「しっかり護衛用とかにも使えるんですか?」
「使える使える。この店をやってて、2回くらい脅されたことあるけど、このバタフライナイフで追い返したよ。それだけじゃなくて、薪を割ったり、紐を切ったり。そんなことにも使えるから結構便利だよ」
薪割りや蔦を切ったりするのは旅をする上でよくやるのでそう考えると魅力的だ。
「欲しいです」
「そうか。じゃあ、ここら辺かな。おすすめは」
そのおすすめの中から選んで、使い方まで教わってきた。近くに使っていそうな人はいないか聞かれて狩人さんがいると言ったら、多分その人も詳しいだろうからその人に聞いてみなと言われた。
店を出て、宿に戻る。部屋に入ってもまだユウはいなかった。
しょうがないので、もう少し詳しいバタフライナイフの使い方を聞きにノールさんのところに行く。
あと、ユウが帰ってきたかということも。
「ノールさん。ユウって帰ってきた?」
「こっちには来てないな。狼の討伐だっけ?数日前に遭遇した、狼の群れと何か関係があるかな?」
風呂に入りにいってるという可能性もある。部屋に戻ってきた痕跡は全く無かったけれど。
「そっか。バタフライナイフ買ったんだけど、ノールさんって持ってる?」
「もちろん。ほら」
あの店主さんのようにバタフライナイフを振り回すのかと思ったら、一瞬でジャキッといって刃が出てきた。
一瞬だった。
「使い方を教えてもらいたいんだけど」
「ああ、刃の出しかた?クイックドローはできる?」
「店主さんに教えてもらったからできる」
「じゃあやっぱこの一瞬で出したり、しまったりするやつは戦いの途中でも使えるから覚えといてもいいかも。何か切ったりするだけならクイックドローだけでいんだけど、これ覚えとけば不意打ちできるからね」
まず、どうして、こうして、云々。30分くらいでできるようになった。
「マイさん、刃を怖がらないで躊躇しないから上達は早いけど、手を切る回数が多すぎて教える方が精神的にくるよ」
「まあ、回復魔法使えますから」
「そうなんだけどさ。あと、ユウさん帰ってきてるかもしれないから一旦みてきてくれませんか?もし戻ってきてなかったら、少し不安なので探しにいきましょう」
「大丈夫だと思うけどね」
まさかユウが。そんなことを思っていたのが間違いだった。部屋に戻っても帰ってきた痕跡はなく、カウンターの人に聞いても帰ってきたのはみてないと言われた。
「ノールさん。まだ帰ってきてないみたいです」
「マジか。俺も着いていけばよかったかな」
「それにしてもどこまでいってるんだか」
とりあえず狼退治の依頼をしにきた人に話を聞くことにした。
「なんだ?」
扉から出てきた人は無愛想にそう言った。
「今日、狼退治を依頼した人ですよね。依頼が完了したとかっていうのはきました?」
ノールさんが必要なことだけを簡潔に聞いた。
「あの戦士さんの仲間か。まだ来ていないな」
「そうですか。どっちの方向に行ったとか、狼がどっちから来るとか、分かりますか?」
「どうした?なんでそんなこと聞くんだ?」
「その戦士がまだ帰ってきてなくて……」
この人はユウのことを戦士だと思っているそうなので、戦士ということにしておく。
「そうなのか?この時間まで帰ってきてないとすると確かに遅いな。多分、あの戦士はその森に入っていったぜ。そこからオオカミも来るからな」
「最後に一つだけ。その狼の目の色はなんですか?」
ノールさんがよく分からない質問をする。
「目?別に普通な気がしたが……」
「夜にあの森に赤い光が見えるとか」
「あ!それはあるぞ!ちょうど狼が畑を荒らし始めた頃から、そういうのを目撃したという噂が広まり出した」
ありがとうございますと言って、ドアに背を向けて歩き出す。僕も少し遅れてありがとうございましたと言った。
「マイさん。その狼は多分、魔族に操られている」
「操られて?そっか。狼男か」
「今日は満月。だけど、曇ってて暗いから俺の得意武器の銃は使えない。マイさんしか戦える人がいないっていう最悪の状況ですけど、大丈夫ですか?」
満月ってことは、狼男が一番力を出す時じゃないか。
最悪の状況が揃っているというわけだ。
「やってみないと分からない」
「死んだらそこまでの実力だったということですね」
周辺探知魔法を使う。今回は魔物もそこそこいて場所の特定が難しい。狼の群れも何匹か見つかる。強めの魔力を纏っている奴がいるが、そいつらが操られている狼なのだろう。
「見つけた。死んではいないけど、足にかなり大きい石を乗せられて拘束されてる」
「脳筋的な拘束方法ですね」
それだけでなく、少しだけ拘束魔法も使われているっぽい。
「至近距離なら暗くても当てられる?」
「まあ、当てられないことはないと思います」
「相手は魔法も使えるみたい。魔法で防御しにくいのはね…」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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