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第四十六話【オーヴェルム遺跡迷宮・市街部】

◇◇◇◇第四十六話【オーヴェルム遺跡迷宮・市街部】◇◇◇◇


「ギィ、ツギノマガリカド。

 敵、一二三四!」


「パターンB!」


前回のダンジョン探索で学んだことですが、曲がり角の度に手信号で敵の受け持ちを決めたりしていると結構時間を喰います。

ゆっくりと時間をかけていい場合も多いのですが、今回はそうではありません。

今回のダンジョンにおいて言うならば、速度が肝心です。


今回は、斥候のヴェルガを最初から前に走らせ、敵がいたら大まかな数を示してもらいわたくしがフォーメーションを指示し、サクラさんたちがあらかじめ決めた通り敵を倒すという手順になっています。


「三!」


これも時間短縮の手管の一つですが、今のところうまく機能しているようです。

今回はパターンB。

わたくしが敵を抑えられるだけ抑えて、こぼれたらサクラさんが当たります。

今の数字はわたくしが抑えられる敵の数ですわね。

わたくしが抑えられない分はサクラさんが抑え、後衛でサクラさんが受け持つ敵を速攻で倒したら、わたくしが抱えている敵を各個撃破するパターンですわ。


今回、銀級昇格をかけて挑むオーヴェルム遺跡迷宮は、はるか昔あった都市国家が滅び、その遺構にモンスターが住み着きダンジョンとなった場所です。


最初に攻略するのはその入り口部分、民衆が住居として生活を営んでいたとされる市街部。

外部からの侵入者を拒むように廃墟は迷路を形成しており、かつては賑わっていたであろう家屋の天井は崩れ落ち、壁だけが残っています。

壁はどこも三ヤー(270㎝)ほどの高さで、かつては道であったのか家屋であったのかどちらともしれません。


前乗りして明け方から攻略にかかり、戦っては進み、進んでは戦いしていると、時間はどんどん過ぎていきます。


日が暮れる前に夜を安全に過ごせる場所にたどり着かなくてはなりません。


「ハァハァ、今日はあとどのくらい進む予定かしらっ?」


息を切らしてわたくしが尋ねると、


「ふぅ、あぁ、もうすぐ今日の目玉の中ボス戦だからそこまでだねぇ」


エル部長が答えます。


「そして中ボスの部屋で一泊する訳でしたわねっ」


「そういうことっ!」


雑魚敵と呼ばれる徘徊モンスターの一団を退治すると、わたくしとエル部長は今後の予定を確認します。


一般にボス部屋はその部屋の主が居なくなると、次の主がどこからか現れるまでは安全な空き部屋になります。


場所によってボス復活までの時間はまちまちで、原因を探って学者が学説を戦わせています。


例えば魔素と呼ばれる目に見えず空間に満ちている物質が部屋にある程度凝集することでボスが出現するとか。


ボスが不在だとどこかからボスを召喚する仕組みが迷宮に組み込まれているとか。


大いなる神がヒトに与える試練として召喚する、なんてのもありましたわね。


そしてオーヴェルム遺跡迷宮は宮殿前庭部分に中ボス部屋があり、玉座の間に大ボスがいる構造になっているそうです。


討伐後の剥ぎ取りはざっとで済ませるとわたくしたちは移動を再開します。


もったいないとは思いますが、一つ所に長くとどまると他の徘徊する雑魚敵に見つかってしまいます。

今回は踏破と合わせてボス退治が目的で、宝探しが目的ではありませんから仕方ありませんね。


さらに何度か徘徊モンスターを倒し、大きなゲートの前に到達しました。

ここが中ボスの間です。

可能な限り息を整えて中ボス戦闘に入ります。

時間がないのでわたくしの毒煙を流し込む戦法は使えません。

そのままドアを開け中に入り込みます。


ポッと壁面に明かりががともるとその音は左右からぐるりと回り、中央に膝をついた異形を照らし出します。


戦いを見世物にする闘技場の名残か、城側は周りより高く作られ、貴賓席の跡でしょうか、昔はさぞ豪華な場であったと思える席もありました。


冒険者ギルドで得た情報通り中ボスは牛頭魔人。

その情報に偽りはなく、人間の体に牛の頭を乗せた怪物です。

人間の体とはいっても、その肩までの高さは四ヤー(3.6メートル)ほどの巨人の体に牛の頭が乗ったモンスター。

その肩までの高さと同じくらいの大きさの両刃の斧が握られています。


「ブッォォォォォォッ!」


牛頭魔人は立ち上がると雄たけびを上げると突っこんできます。


こちらも負けてはいられません、あの敵の注意をこちらに引きつける為にも、


「ああああぁぁぁぁ!!」


大声をあげて突撃です。


上から振り下ろされる戦斧、下から打ち上げるボーンイーター。

体重勝負では差は何倍あるでしょう、単純な力合わせでも勝ち目はないでしょう。

しかし互いの得物を打ち合わせる瞬間。


「ギィィィン!」


『弾き』を発動させ牛頭魔人の斧の軌道を逸らせます。


「ブォ?」


そのわたくしへの一瞬の戸惑いが仲間の攻撃を会心の一撃にします。

自分に痛撃を与えた相手を探そうと一瞬は思うのでしょう。

しかし視界にはすでに一名の敵を捕らえ、まずはこの敵の打倒を!

と、あなたの精神は訴えているのでしょう。

そうです、あなたの敵(わたくし)はここにいます!


「いぃっぃゃぁぅぅぅ!」


雄叫びとともにその柔らかそうなわき腹に『弾き』を利用した打撃を加えます。

わたくしが狙うのは関節や骨格や筋肉で守られていない柔らかな部分です。

敵を倒すのではなく敵の動きを阻害できそうな場所を狙うのがわたくしの基本戦術ですわ。

なぜなら、わたくしは敵を抑えるのが仕事。

倒すのは皆さんにお任せしておりますの。


「ヤンマ槍術、弐の型、えぇぇいやぁ!」


「『石の槍よ敵を穿て』!」


「さぁて柔らかいのはどこでしょう、お目々かしらそれともお耳~?

 口の中なんてのもおもしろそうですわね~」


それぞれが巨体の中ボスをどんどん攻撃していきます。

ヴェルガも牛頭魔人の足首の腱を鎌で刈り取るように切りつけます。


「ギィ、タオレロ!」


立派になったものです。


「グッガァァァア!」


そしてついに牛頭魔人を打倒したのです。

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