↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/49

第四十七話【オーヴェルム遺跡迷宮・星空の野営】

◇◇◇◇第四十七話【オーヴェルム遺跡迷宮・星空の野営】◇◇◇◇


中ボスの牛頭魔人を無事倒したことによって安全地帯となった闘技場で、エル部長が牛頭魔人をゆっくりと剥ぎ取りします。


その間に我々は夕食の準備です。

といっても簡単なものですが。

ソーセージに乾野菜、スープの素と塩、コショウが少々。

少し煮込んで味がなじんだら出来上がり。

あとは塩辛い干し肉をひとかけらと固焼きのビスケットをそえて夕食です。


今日は夜の見張り順に用心のため一人ずつ夕食を取ります。

私とサクラさん、続いてエル部長、最後にエーリュシエルとヴェルガ。

エル部長は元々睡眠が不規則なのだそうで一番睡眠がきつくなる中番の見張りを引き受けてくださいました。


わたくしが務める早番は普段の生活でいえば少し夜更かしをした程度のもので睡眠のタイミングとしては特に問題になりません。

それはサクラさんも同じようです。


エーリュシエルは普段通りでも起きている時間だそうで、何の負担にもならないそうです。

一体何時に起きているのやら。


ヴェルガは元々夜行性のゴブリンですので体的には普段が徹夜で、今晩は昼寝しすぎたくらいの感覚なのだそうです。


なるほど。

習性とはいえ夜行性のヴェルガには普段きつい思いをさせているのかと思いましたが、おいしいものをたくさん食べられるから昼間に起きている方がいいそうです。


食い意地が張っていますわね、全く。

さて、食事を終えた皆が寝袋に潜り込むと夜番の開始です。


「そういえば……」


サクラさんが呟きます。


「お友達になってから、いえお会いしてから二人きりで過ごすのは初めてではありまんか?」


「確かに…お友達といって二人になったこともないのが不思議なことだとも全く思いませんでしたわね」


二人顔を寄せ合わせふふふと忍びやかに笑いをこぼします。


あぁ、天から星が瞬き降るような夜はサクラさんの美しさをなんと輝かせるのでしょう。

戦いのときにかぶる女鬼の怒りを彫り込んだ面もよくお似合いですが、夜静かに星空を眺めている風情は一層素敵に見えます。


しばし、ぼぅ…と眺めているとサクラさんが戸惑うように声を上げます。


「ど…どうかなさいました…?」


「いやぁサクラさんはお綺麗ですねぇと感じ入っていたところですの」


「そんな…そのようなこと誰からも言ってもらったことのない白面鬼の私ですのに……」


「その様に卑下するものでもないでしょう。

サクラさんを綺麗だって思っているのは他にもいると思いますよ」


「わたくしは美とか容姿を求められる存在ではありません」


「そうですの……?」


「はい」


そういうとサクラさんは頭を膝で挟んで隠してしまいました。


「ではあなたがお仕えしてる『彼の君』はあなたをどのように評してらっしゃるのかしら?」


「あれは…あれはただの…お戯れで、おっしゃっているだけで!

 それでどうこうということには絶対になりませんし……

 あってはいけないのです」


赤面しながら慌てて手を振り振り否定の言葉を口にしますが、その赤面するということがサクラさんの内面を表しているような気がしますわ。


「ほら、言われてはいるのではないですか。

 大丈夫ですよ、サクラさんはサクラさんでいればいいのです」


「全く聞いてきたのかと思うほど同じことをおっしゃいますねあなた方は」


サクラさんが渋い顔をします。


「あらそうなんですの?

 なんとも仲良くなれそうですわね、わたくしと『彼の君』とは」


「そうですわねぇ。

 確かに気が合うと思います。

 いつか、いつか機会があればとも思うのですが。。

 わたくしがこんなにも自由に動けるのは『我が君』の存念あってのことですし」


そう言ってまたサクラさんは顔を隠してしまいました。


「そう、それが気になっていましたの。

 サクラさんは誰かのそば付きで仕えているはずなのに、わたくしたちと過ごす時間が長いなぁと」


「『我が君』のことも含めて、いつか話せる時が来たらお教えしますわ」


「そう…何か話せぬ事情がおありなのですね。

 では深く考えず、楽しみにしておきますわ」


「ところで私のことばかり話してしまった気がしますけれど、ピピルさんはどうなんですの?」


反撃とばかりにわたくしのことを聞いてきます。


「わたくし?わたくしは豚鬼(オーク)ですのよ。

 美醜を語るなどお笑い草ですわ。

 しかも、わたくし個人の感覚ですとお兄様とその他大勢といったところですし。

 私に課せられた使命を考えれば、愛にも恋にも心ときめく何かを感じはしないのです」


「そうですの…申し訳ありませんピピルさん」


「なにも謝ることはありません。

 まだ未来は定まっていませんから」


ぱちぱちと音を立てて火をともす携帯ストーブに粗朶をくべながら、あぶっている薬缶からお湯を取り、お茶を入れて、静かな時間を過ごします。

闘技場にかかる星の天蓋は瞬きながらわたくしたちを包むようです。


「なるべく周りのみんなに幸いあらんことを願います」


などと祈りの言葉めいたことを唱えたのもそのせいでしょう、多分。


語り始めると語りつくせぬ思いがあり、語れぬこともありますわね。


さぁそろそろ交代の時間です。


エル部長を起こしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。