第四十三話【ダンジョン探索・演習⑥】
◇◇◇◇第四十三話【ダンジョン探索・演習⑥】◇◇◇◇
歩み去るトライアの後ろ姿が曲がり角に消えると
「あ~あ、惜しいねぇ。
専任のヒーラーがいればもっと細かい戦術が使えるのにねぇ」
手を頭の後ろで組みながらエル部長がぼやきます。
「まぁ誘ったのは彼女のロールが目当てだけではありませんけれどね」
「うーん、彼女の星回りはあまりよくない気がするなぁ。
どうしても悪い星の運命に引きずられそう」
それは不吉の運命の予言に聞こえますが、わたくしも否定することなく。
「そうだとしても、彼女の選ぶ道ですわ。
見送る以外何ができるというのでしょう……」
そう言う以外ありませんでした。
「そうだねぇ……」
曲がり角からダンジョンの外をうかがってみます。
入り口が騒がしいですわ。
大規模なトレインとレアボスの発生です。
帰還者から少しでも情報を得たいところでしょう。
皆の注意がトライアに行っている今です。
騒ぎの中心が出入口からそれたその時を逃さず、素早くダンジョンから離脱します。
それから学園都市ギルド支部にこっそり潜り込みます。
隠れるように移動し、ブリーフィングを行ったテーブルの並んでいる一角、目立たないところにたどり着きました。
さて、作戦後会議でも始めましょうか。
と思ったらルイス隊長が受付の方と話しています。
「ちょっと待っててくれ。
どうしてもデブリーフィングにつき合わせたいやつがいる」
どうしてもというのであれば仕方ないですわね。
ただ待つのも暇ですし、経費精算でもしましょうか。
現金、アイテム、魔結晶と今回ダンジョンで入手したものをテーブルに出していきます。
先ほどルイス隊長が頼んでくれたのでしょうか、人数分のマガダの黒茶を持ってギルド職員の女性がやってきました。
マガダの黒茶はマガダの豆を炒って粉にしてお湯を注ぐことで出来上がりです。
苦みが強いお茶ですが、その香りと味は癖になり、甘いお菓子によく合います。
もちろん、黒茶に乳脂、砂糖を入れて黒茶自体を甘くする楽しみ方をする方もいらっしゃるようです。
わたくしも乳脂と砂糖を入れた方が好みですわ。
「で、この魔結晶やらアイテムやらは換金でいいんだよな?
じゃあ査定をよろしく」
「あ、査定がすんだら一旦全てこちらに戻していただけますか」
全員の顔を見て頷くと、受付のお姉さんは空いた盆にクリスタルなどの戦利品を載せて下がっていきました。
エル部長はなにも言わず、クリスタルに関心はないようですわ。
多分、今日の収穫でよっぽど欲しい物があるのでしょう。
といってもどう考えてもばればれですが。
査定に出さなかったロックゴーレムの核から目を離れませんもの。
やがて
「待たせた、なんでも変異ボスが出たらしくてな。
これから討伐隊を差し向けるところだ」
来たのは冒険者ギルドマスターのランド・ローネでした。
「ん?フィフスエレメントの面々も一緒か、いったい何の用だ?ルイス」
「結論から言うと。討伐隊は必要ない。
なぜならロックゴーレムは倒しちまったからな」
「なんだと?この間冒険者になったばかりのひよっこだぞ?」
「証拠はこれだ。
ロックゴーレムの核」
「なんだと?
ロックゴーレムを退治するには銅級冒険者三パーティか銀級の戦闘パーティを当てなきゃならんところだ。
それを犠牲者なしでひよっこどもが倒しちまったのか」
「うむ、まぁ、あの攻撃力はとても銅級の枠に収まるものではないが。
あとどこかのパーティが引き起こしたトレイン。
あれもあらかた倒しちまった」
ルイス隊長の言葉に胡乱げな顔が浮かびます。
「はぁ?遭遇したパーティは相当な数の魔物が群れをなして暴れてるって話だったが……」
「広域魔法で一掃している。
ロックゴーレムにも通用する破壊魔法だ。
討伐隊ではなく調査隊の派遣をお勧めする」
「で、だ『フィフスエレメント』は今回の功績の非公開を希望している」
「なんだと……」
「あまり大げさに吹聴してほしくないというのが希望だ。
貴族の付き合い的な話だからな、汲んでやって欲しい」
「なるほど……
ではこの件は機密閲覧レベルを高くしておこう、それでいいな」
「構いませんわ、よしなに」
「お待たせしました~今回の魔石の見積もりで~す」
そこに書いてあった金額は一回のダンジョン探索としては破格な金額が記入されていました。
「どうだ?」
尋ねてくるルイス隊長に渡された紙片を見せます。
「な、トレインで集まった魔物を一掃した結果だ。
多分これだけで学園生特待でなくてもパーティの銀級昇格に足りると思うがな」
ルイス隊長がこの紙片をギルドマスターに見せると
「むぅ……確かに功績だけ見ればその通りだが……」
「いや、さすがにインストラクター付きの演習では銀級昇格はできない。
次回の実習でも結果が出せるなら銀級に昇格させよう」
「まぁ次回は案内人なしで実習ですわね。
というと講義は合格ということでよろしいですわね」
「それは文句なしだな。次回も大いに期待させてもらうよ『フィフスエレメント』」
わたくしたちはダンジョン演習を修了し次回から実習に進むことができるようになったのです。




