第四十二話【ダンジョン探索・演習⑤】
◇◇◇◇第四十二話【ダンジョン探索・演習⑤】◇◇◇◇
「ここです、ここがボス部屋の扉です」
「はぁ立派な扉ですわねぇ」
わたくしがため息をついて見上げるほどの大きな扉、そこで待つボスはどの様なものか。
「どんなボスか教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「わたくしも魔物など見るのも最近ですので、あまり詳しいことはわかりませんが。
ストーンゴーレムだと思ったのにロックゴーレムだったと、インストラクターの方が言っておりましたわ」
「むぅ、通常ボスはストーンゴーレムだがな。
レアボスでロックゴーレムに変異することがあるそうだ。
戦闘中手足の一部を切り離して攻撃したり、ゴリラ型からトカゲ型、蜘蛛型など様々に形態変化する難易度の高いボスだ。
君たちで勝てるかどうかは、わからない。
俺自身が君たちの実力を測りかねているからな」
ルイス隊長が態度を決めかねていますが、テキパキ攻略の準備をいたしますわよ。
「とりあえずヴェルガ、索敵をお願いするわ」
「ワカタ、マカセロ」
「オオキイ、ヒロイ部屋。
ナニカウゴキマワッテイル、オオキイ、ウゴキオソイ」
「うーん体が大きいから遅く見えるかもしれないねぇ、気を付けようか」
「ワカタ……ケッコウハヤイカモシレナイ」
「さてロックゴーレムの体は文字通り岩でできています。
通用する武器はどのくらいあるかしら。
ちなみにわたくしのボーンイーターは、刃こぼれせずに叩き割ることができると思いますわ」
わたくしに続けてサクラさんが背中から槍を外しながら
「槍の刃のついていないほうの端は石突といいます。
これで突くことができればいいと思います」
あの冒険者ギルドの依頼をこなして以来、サクラさんは短めの槍を携えるようになりました。
「取れる手があるのならば準備すればよろしいと思い至りました。
どうしても邪魔になれば捨てればよいのですから」
見事な心掛け。
わたくしはそう感じ入りました。
わたくしも何か副次的な武器を持つべきでしょうか。
「エル部長、もう一度鍵穴から煙を送り込みますか?」
「そうだねぇ。
ロックゴーレムだから致命傷は難しいけれどひび位は入るといいねぇ」
「ではいきます。
『指先から燃える気体出でよ!』」
「あ、さっき思い切り出したから今度はそんなに出ないようですわ」
「わかったぁ
できるだけ出したら言ってねぇ
みんな扉から離れて体を低くしてねぇ」
「エル部長、交代お願いします」
「わかった、じゃあ行くよ
『燃えろ炎よ!』」
バンッドォゥゥゥン
と轟音とともにドアが倒れこんできます。
するりと避けるエル部長です。
なかなかに見事な体捌き。
実は格闘も結構いけるのかも。
それは後で確認するとして、今は
「あああああああぁぁぁぁぁ-ーーーー!」
雄たけびを上げて突撃します。
まずは右の手首!
わたくしに向かってくるのを避けざまに『弾き』を入れます!
ボロボロにひびの入った手首がゴトリと落ちます。
次!右手でバランスが取れず旋回しながらこちらに振り下ろされる左手に『弾き』を打ち込みます!
こちらの手は肘から砕き割るようにして落ちます。
後ろに転がしたロックゴーレムの破片はエル部長が
「熱いものを急に冷やすとどうなると思うぅ?
答えはねぇ『大地よ凍てつけ!』
サクラ君!砕いてねぇ」
「石突!石突!石突!」
バラバラになって本体のロックゴーレムの体に戻れなくなった証に黒く濁った破片となります。
このまま全身バラバラにすれば勝ちの目は揺るぎませんが、まだロックゴーレムは隠し玉を使ってきていません。
どうでしょうか……
「ピピル君、ロックゴーレムが変形する。
注意!」
「はい!ヴェルガ、戦手の二番!」
「アイ、イツデモドゾ!」
では!
両方の手を組んだヴェルガの手を足場に、ヴェルガの投げる力とわたくしの飛ぶ力を合わせて大きく飛翔します。
二人で朝のけいこの時に練習した七つの必殺技、戦手の二番です。
「行きますわよ、くらえ!『弾き』!」
コアらしき結晶体、変形の時一瞬だけ外に出てくるそのコアを切り飛ばすように叩き割ります。
そして動きの止まったロックゴーレムの体を踏み台に背面宙返りの要領で着地します。
エル部長の魔法でコアの活動を止めると、残りの体も黒く濁った破片となり、ガラガラと崩れ落ちました。
ロックゴーレムの攻略、完了ですわ。
「あれぇ私の出番なかったですね~」
本当はコアが出たとき鉄弾を撃つ予定だったのが、ピピルにおいしくかっさらわれたエーリュシエルでした。
ダンジョンの出口が近づいてきました。
すぐそこの曲がり角を曲がれば出口はもうそこです。
打ち合わせ通り、トライアに先に出てもらいます。
一緒にいるところを誰かに見られたら一悶着ありそうですしね、某王子とか。
「あの、何から何までありがとうございます。
このご恩は忘れません」
「あんまり気にしなくて結構ですわよ。
それからそんなに謝らなくて結構ですわ。
借りはそのうち返していただきますから」
「はい、きっとお返しします」
「なぁこの件記録しないように頼まれたから報告書に書かないけどさ。
本当に良かったのかい」
ルイスの問いかけに
「この場合善行が災いになる可能性が高いのです。
それでは意味がありません。
こういうのはお互い黙っておくのがいいのですわ」
「そんなもんかねぇ、貴族のやりようってのはやっかいだねぇ」
「まぁ奇遇ですわね、わたくしもそう思ってはいますのよ」
そうルイス隊長と話をしてからトライアに向き直りました。
「トライア、もう貴女と話すことはないかもしれないので、言っておきますわね。
あなたヴィクシア連合王国に来る気はありませんか。
生活の保障はしますわよ?
弟さんは嫌がるかもしれませんが、連れてきたら意見も変わるのではないかしら
なによりヴァトンの地を平和に返すことができるかもしれないチャンスでもあると思いますの」
「ピピル様、ありがとうございます。
でもそれはできません。
わたくしは唯一の身内となった弟、クィンの望みを果たす助けとなると決めているのです。
それにわたくしも滅んだとはいえ、ヴァトン王家の血を引く身。
元凶とされるヴィクシア連合王国の手を取るわけにはいかないのですよ。」
「そうですか残念です。
でもあなたの逃げ道は残しておきますわね。
いつでも訪ねていらっしゃい。
待っているわ」
「ではお達者で、トライア」
「はい、それではごきげんよう。
ピピル様」




