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第四十一話【ダンジョン探索・演習④】

◇◇◇◇第四十一話【ダンジョン探索・演習④】◇◇◇◇



抱き寄せたトライアの口を柔らかくふさいで、


「トライア落ち着いて、わたくしです。

 ピピルですわ。

 大声を出さないように。

 お分かりですね」


私を認識したのか、トライアの目が安堵の目に変わります。


「手を放します、いいですわね」


コクコクとうなずくトライア。


ゆっくり手を離すと激しく息をつきます。

全力疾走して口をふさがれたのですからよっぽど苦しかったのでしょうね。


トライアは、細身に見えるのに出ているところはしっかり出ています。

なかなか抱き心地が良いのですが。

まぁ息が整ったところでこうなったいきさつを話してもらいましょう。


「一体何があったのですか?」


大体予想はつくのですが。


「はい、わたくしたちのパーティは作戦会議(ブリーフィング)の時、最短でボスを討伐する作戦を立てまして……

インストラクターさんは反対したのですが、王子がお金を積み上げまして……」


あちゃあ……という顔でルイス隊長が片手で顔を覆って首を振ります。

買収に応じる冒険者ってペナルティきついんじゃありませんでしたっけ?


「それで敵をよけたり、戦ったりしてボス前までは来たのですが」


おーさすが勇者王子、はまれば強いですねぇ。


「ただそのボスが予想外の強さでして、わたくしたちの手に負える相手ではなかったのです」


「で、戦闘中にボス戦から離脱しようとしたと」


「はい、ボスは一定のエリアから外れれば定位置に戻るのですが、王子が錯乱してしまって」


「はぁ……」


何とか王子の行動に呆れ果てぞんざいな相槌を打ってしまいました。


「それで逃げ出してしまい、通り道で出会ったモンスターを手当たり次第に引きずってしまいまして、こうしてピピル様にご迷惑をかけてしまったわけなのです」


「そうですかー」


何してくれちゃうんでしょう、あの王子とやらは。

戦闘中にボスを放り出して逃亡するとか、連携も何もないでしょうが。

しかも仲間を見捨てて、ですよ。

ありえない、それで連携崩壊して総崩れしてトレインを引き起こしたわけですね。


もうあの王子の巻き起こしたトレインは魔物も追い飽きたのかわたくしたちのいる扉の前にもうろうろしています。

一匹を相手にするなら何とかなりそうですが、これだけの数をまともに相手するのはちょっと無理がありますわね。

さぁどうしましょうか。


「時にピピル君、君魔法を思いっきり使ったことはあるかい」


エル部長がいきなり尋ねてきます。


「はぁ。

 大体が途中で止められちゃいますので、全開の全力はしたことがありませんわね」


怪訝な顔でわたくしが答えると。


「では今鍵穴からこの間の煙の名法は使えるかな?」


「あ、問題ありません」


「では鍵穴から煙の魔法を注ぎ込んでくれ、思いっきり、全開で」


「なるほど……

 ではいきます!

 『指先から燃える気体出でよ!』」


指先からどんどん何かが出る感覚があります。


キャンキャン


とか


グォゥゥッォ


とか続きざまに魔物の苦しんでいる声が聞こえます。

鬼族などの毒耐性の敵はあまりいないかもしれませんね。

毒煙だけでも効いているようですわ。


さて


「そろそろいっぱいですわエル部長」


「わかったよ。

 魔法が終わったら場所を代わって頂戴ねぇ。

 残りの人は扉が吹きとばないように抑えてくださぁい。

 申し訳ありません、ルイス隊長もお手伝いいただけますかねぇ」


「いいぞ、そのくらいの手伝いは問題ないさ」


「じゃあ行きますよ。

 『燃えろ炎よ!』」


唱え終わると、さっと指を抜き扉の鍵穴に金属でできた棒をさしこみます。


その瞬間、


キュガッッッッ・・・・ン!!

という凄まじい音が聞こえました。


扉の隙間から漏れ出る光は眩しく熱く、扉の向こうがどうなっているか想像もできません。

すごい圧力で扉が押されます。


「さて、これで第三王子が連れまわした魔物はほぼ一掃できたと思いますけどねぇ。

 外はだいぶ高熱のようですので冷めるまでお茶でもしましょうか。

 こういうところでは冷たいカミツレのお茶にしましょうかねぇ」


さあ召し上がれと出されたお茶は冷たく、とても良い香りでしたわ。

軽いものでも食べておこうとつまんだエル部長お手製の焼き菓子もおいしいものでした。

「あの」


トライアが声を上げます。


「さっきのものすごい魔法は弟には届いていませんよね?」


「多分大丈夫だと思うけどねぇ。

 少しくらい熱い目は見るかもしれないけどねぇ」


「はい、弟が無事ならそれでいいです」


「さて、そろそろ冷めましたかねぇ。

 出発しても大丈夫ですねぇ。」


「わかりました。

 どうせならボスの顔を見ていきましょうか」


わたくしがそういうと


「そうですねぇ、トライアさんでしたっけ、ボスまでの道は覚えていますかぁ?」


エル部長がトライアに尋ねます


「はい大丈夫です。

 覚えています。

 あの、大丈夫なんでしょうか。

 ハイン王子ほどの方でも攻略をあきらめたほどの魔物ですのに」


「あ、剣の腕でしたらわたくし一騎打ちであの方に勝ったことがありますわよ。

 まぁわたくしの剣の腕がボスに及ぶかまではわかりませんけどね」


エル部長は燃えて消し炭になった魔物から、魔石を回収していますわね。

ヴェルガも装飾品など燃え残りから、めぼしいものを取り出し袋に入れています。


なかなかたくさん採れたのではないでしょうか。

よいことです。


そうして歩いていくと、今までのものとは違う大きな扉の前に到着しました。



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