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第四〇話【ダンジョン探索、演習③】

◇◇◇◇第四〇話【ダンジョン探索、演習③】◇◇◇◇


「シッ」


ヴェルガが前歯を抜けるように息を鋭く吐くと、私は手を挙げて「全体とまれ」のサインを出します。

そのままヴェルガが前に来ると先にある曲がり角の様子を伺い、ハンドサインで先の様子を伝えて来ます。


●左曲がり、扉の前にゴブリン三、全員装備なし。

●さらに奥、見通し効かない、要注意。


ハンドサインを確認して、後ろのみんなに伝えます。


●左曲がりゴブリン三。

●二引き受け、一サクラさん処理。

●引き受けゴブリン右エーリュシエル、左エル部長で処理。

●ヴェルガは奥の警戒

 

全員が了解のサインを出したところで。


●カウント五で開始。

●五・四・三・二・一!


「あぁぁーーー」

わざと大声をあげて曲がり角を曲がり、ゴブリン達の注意を惹きます。

そのうえで左から数えて二体、ボーンイーターで打撃を与えます。


一番右の一体にわたくしの陰から出てくるようにサクラさんが攻撃を加えます。


わたくしのボーンイーターに気を取られた様子の二匹もエーリュシエルとエル部長が片付けてくれました。


戦闘終了、損害なしですわ


さて何か持ち物を持っているか確認です。


火打石と銅貨が十二枚……ゴブリン相手ならばいい方なのかしら、基準がよくわかりませんわ。


ちょっと先を見に行ったヴェルガが戻ってきました。


「増援ナシ、シバラクダイジョウブ」


「なぁ、ちょっと聞いていいか?

 さっきオーク倒したよな、で今度はゴブリンを倒したわけなんだが……

 何か思うところはないのか?」


ルイス隊長がわたくしに尋ねます。


「それが同族を殺したことに対する嫌悪感や忌避感ということであるならば。

 答えはいいえ、何も感じません、ですわ。

 彼らは敵であり、打倒しなければ味方の生活が脅かされます。

 それは人間同士の闘争、戦争などでも一緒でしょう?」

 

「特にダンジョンの魔物といわれる同族は、どこか歪な魂を持っているように感じますわ。

 ねぇ、ヴェルガもそう感じませんか?」


「ココニ出テクルアダニニタモノハナカミガナイ、ウツワダケ、ウツロナ…」


「聞いた俺が悪かったんだが、今回の報告書えらい量になりそうだなぁ……」


「ほうほう、それは興味深い。

 是非そのあたりの話をボクにも詳しく教えてくれないかなぁ

 野生の魔物とダンジョンの魔物の比較かぁ」


その手の話にはものすごい勢いでエル部長が食いついてきます。


「では次の部会の時にでも。

 おいしいお菓子とお茶を用意していただけるならば」


「わかった、ちょうど新作の構想が思い浮かんだんだよ、楽しみだなぁ」


本当にそういう知識の探求には子供のように喜ぶのですわね。


「さて、扉がありますわね。

 一応確認したほうが良いでしょう」


「アダノデバンダナ、マカセロ!」


鍵穴を覗き込みながらヴェルガが中の様子を呟きます。


「小部屋…チイサナツクエ…イス、ダレモイナイ。

 トダナガアル。

 トビラノカギハ……カカッテイナイ、内側カラシメラレウ方」


ヴェルガがドアの蝶番に油を差し、そっと開けます。

音もなく開いた扉はダンジョンの中よりも暗い小部屋。

奥に戸棚があり、雑多にものが詰め込まれています。


床にはお酒でしょうか、素焼きの壺に入った液体。

机の上になんだかわからない干した獣肉の小片。

あとはこの部屋のものとみられる鍵。


「守衛の休憩室みたいですね」


「本当だね。

 お、こんなものがある」


サクラさんとエル部長が棚を確認して、エル部長が指先でつまんだのは小さな銀色の指輪。


「何か魔法がかかっている気がする。

 持って帰って調べてみよう」

 もちろん今回の僕の取り分から引いて良いからねぇ」


「はいはい、鑑定した時の金額で清算しますからね」


「了解だよ」


あとは目ぼしいものはなさそうです。


小部屋から出ようとしたその時、


「マッテ、誰カハシッテクル」


「ん……様子がわかりませんわね。

 扉の鍵を閉めて様子を伺いましょう」


やがてわたくしにも鎧を着た何かが走ってくるのがわかりました。


「冗談じゃねぇ!

 俺はこんなところで死ねないんだよ!!」


……あれは、ハイなんとかさんではありませんか。

 いったい何事でしょう?……


「こらーー敵前逃亡してこんな大規模なトレイン起こしてーーひどい点数になるんだからね~」


あ~あの若い女の方、あれがハイなんとかさんのインストラクターですわね、とすると、


「アシアト三人ハシッテクル」


「三人?一二三の三人ですの?」


「ウン三人……」


扉の外の様子をうかがうと、


「王子、王子~味方がついてこれません。

 少しペースを抑えないとはぐれてしまいます」


「落ち着いてください王子~!」


もう一人は無言で走っていきます。


「ツヅキ、ヒトリハシッテクル。

 ソノスグウシロ、多分魔物、イッパイ」


最後の一人はトライアですわね。

でもこのヴェルガの話の感じではもうすぐ魔物の群れに追いつかれそうな感じですわ。


「走ってくる最後尾の方を救助します。

 ヴェルガ、タイミングよく扉を開けて中に引き込みます。

 わたくしが受け止めるのでカウントを」


「ワカタ、八・七・六・五・四・三・二、一」


バンッ!

と扉を開けると、トライアが目の前で恐怖でひきつった顔で悲鳴を上げようとします。

まぁこんなところでオークが突然出てくればびっくりしますわよねぇ。

止まろうとして止まり切れないトライアを抱き寄せると扉を閉め錠をかけます。



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