第三十九話【ダンジョン探索、演習②】
◇◇◇◇第三十九話【ダンジョン探索、演習②】◇◇◇◇
並んで少しずつ進んでいるうちに、やっとわたくしたちの番が来ましたわ。
「はい、銅級冒険者パーティ『フィフスエレメント』の皆様ですね」
点呼しますので呼ばれたら手を挙げてお返事くださいね。
ピピル・マ・ピピルさーん
エルダガス・ノバさーん
サクラ・カヅキさーん
エーリュシエルさーん
ヴェルガさーん、あれ?返事は聞こえますが。」
背が低くてカウンターの職員さんからは見えないようですわね
「ヴェルガさーん、あ、そこですか。
噂になってますよ、史上初のゴブリンの銅級冒険者」
「ギィ、ヨロシク」
「はい、よろしくお願いします」
わたくしが抱え上げ職員さんに見せるようにすると、驚きもせず処理を続けます。
肝の太い受付の方もいるものですわね、ギルドの受付とは大違い。
オークの冒険者はわたくしの父が冒険者をしていた時期があるので史上初ではありませんが、ゴブリンはヴェルガが前代未聞なのですわね。
まぁランクが低い冒険者が居ても、自国では高位貴族や王族だったりしますからね、一々驚いたりもしていられないでしょう。
「では本日のインストラクターをお選びください。
インストラクターの皆さん、どうぞ~」
ぞろぞろと入ってくるインストラクター役の冒険者たち、二の四の五人。
右からイケメンが二人、きれいですがちょっときつめの女性が一人、かわいらしい女性が一人、最後になんだか見覚えのあるおじさんが一人。
後ろを向いてコソコソ話し合いです。
「どうしますか?誰か希望する方いらっしゃいます?
「ボクはリーダーにお任せ~」
「私もお任せしますね、ピピルさん」
「姫様、あの一番左の男は…」
「そうね。
ヴェルガ。
あの男に何かひどいことをされたりとかはありませんでしたの?」
「ン?ダレノコト?」
ふむ、ヴェルガが声を聴いていないということは、プロ意識にも問題なさそうですわね。
では彼にしましょう。
「では、わたくし年かさの男性にしようと思いますが、いかがでしょうか?」
「なにかあったのかな?
ボクにも後ででいいから教えてね」
「ピピルさんの判断を信用しますわ」
「姫様がよろしいのでしたらわたくしは一向にかまいません」
「ギィ、ゴスジンニオマカセ~」
では、
「左の、そう一番左の方にお願いしたいと思います。
ごきげんいかが?
冒険者さん」
「あぁ、まぁ悪くはない。
よろしくな」
「はーい、インストラクターが決まったところで作戦会議をあちらでしていただけますか?」
丸テーブルがいくつもあるエリアに誘導されました。
打ち合わせの時間、想定される事象に対する対応の確認ですわね。
でもまずは自己紹介から。
「『フィフスエレメント』のリーダー、ヴィクシア連合王国のピピル・マ・ピピルですわ、よろしく。
ロールはタンクです」
「フィンカナン魔法王国出身、エルダガス・ノバだよ、よろしく。
ロールは後衛、ソーサラーだけど、回復もできるよ。
ボクのことはできればエルって呼んでほしいなぁ」
「サクラ・カヅキ、ヤンマ皇国出身の近距離物理アタッカーだ」
「ヴィクシア連合王国のエーリュシエルと申します~。
遠距離物理アタッカーですの~」
「アダ、スカウト、ヴェルガ。
ゴスジンノ足元ヲ守レノシゴト。
鍵ヲ開ケルノモシゴト。
チズモカクゾ!
ヨロシク、ギィ」
パーティの自己紹介が終わりました。
エル部長フィンカナン出身でしたのね、魔法が得意なわけですわ。
何しろ魔法使いの最高位、賢者王が治める国ですものね。
「俺は、知ってるやつもいると思うが、ルイスだ。
ランクは銀級。
前は隊商の護衛隊をやっていたんだがな。
この間、盗賊に襲撃されてだいぶ損害を出してなぁ。
今は伝手を頼ってギルドの新人教育の教官をやっているんだ」
「そういえばあの時わたくしたちはお互い名乗りませんでしたわね。
ルイス隊長と呼ばせてもらいましょう、よろしいでしょうか」
「では俺もダンジョン探索の講義中に限ってだがピピルと呼ばせてもらう。
他のメンバーも呼び捨てで呼ばせてもらうけどな」
私を興味深げに眺めながらこう続けます。
「ところでピピルはなぜ俺を選んだんだ?
見栄え的には他の連中のほうがイケていただろうに。
知り合いだから選んだわけじゃないだろう?」
わたくしの返事はそう難しいことではありません。
「そうですね、まぁ見知った相手だから、というのも理由の一つではあるのですが」
「まず見た目から。
他のインストラクターが銅級章なのにルイスさんだけ銀級章だった。
これが第一の理由」
「次、護衛隊を率いていたということは、新人の面倒を見ることにある程度慣れていると予測されること。
これはルイス隊長を知っていたからですから、本来知らないはずの情報ですけれども。
最後にプロ意識が高いことですわね。
ヴェルガとはお互い顔も合わせなかったようですし。
まぁ理由としてはこんなものでしょうか」
「なるほど、観察眼とと想像力は合格かな、これは」
「やはりあのインストラクターの組み合わせはギルドの仕込みでしたのね?」
「そういうことさ」
そのあとはフォーメーションを確認したり、ルイス隊長に助言してもらったりしました。
所持品も色々足りないものもありましたが、必需品はさすがに持っていたので、なにか足りない物があったら、今回にかぎり隊長の手持ちで何とかしていただけるそうです、ただし有料。
次回からは自分で用意するようにとのこと。
口頭で言われたことを覚えきるのは大変ですが、我がパーティにはヴェルガとエル部長の二人がいます。
ヴェルガの記憶力が、メンバーではエル部長に次ぐものだと知った時のわたくしを含め皆の驚きは、大変なものでした……
ブリーフィングが終わればいよいよダンジョン探索です。
期待と酩酊にも似た興奮がわたくしを包みます。
「パーティ名「フィフスエレメント」。
インストラクター、銀級冒険者ルイス。
ダンジョン演習に出発します。
よろしくお願いしますわ」
そうしてわたくしたちはダンジョンの中に入ったのでした。




