第三十七話【第五属性研究会活動】
◇◇◇◇第三十七話【第五属性研究会活動】◇◇◇◇
「そういえばみんな火起こしってできる?
魔法で」
今日も部室で魔法の練習をするわたくしたちにエル部長が尋ねてきます。
突然のことでみんなきょとんとしてしまいます。
魔法で?
火を?
わたくしも虚を突かれましたが立て直して返答します。
「火口を使えば火は問題なく起こせますが……
魔法で、ですか……」
「うん、ボクたちは銅級冒険者になったわけだけど、どう考えてもいろいろな技術や知識が不足していると思うんだ」
エル部長が思案気に部室の中を歩き回ります。
「学校の授業である程度補いはつけていると思うけどね。
例えば魔法できれいな水が作れれば、けがをしたところの応急処置に使えるよねぇ。
同じように全身ずぶぬれで火口が濡れてしまっていても、魔法で火が起こせれば体を温めたり服を乾かしたりできるよねぇ」
「だから冒険者として簡単な魔法を使いこなすことも重要だと思うんだよねぇ。
魔法でできることを、増やしていこうと思うんだ。
もちろん講義の予習にもなるし。
お湯を得る手段はこの間の課題でみんなクリアできたけど、これはどうかな?
課題:『ろうそくに火を灯してみよう』」
「問題ありません」
エーリュシエルが燭台のろうそくに火をともします。
「これでよろしいかしら」
サクラさんは指から小さな火を出し、その炎をろうそくに移します。
「いくら魔法が苦手だからってこれくらいなんてことねぇよ」
テルベルトがどうして部室にいるのかわかりませんが、ろうそくの芯を指先でこよるように揉みこむと、ポッとろうそくに火がともります。
「ギィ、ゴスジンドシタ?
火、ヅケラレナイノカ?」
ヴェルガは魔法が使えません。
それはゴブリンだから仕方がないのか使い方を知らないだけなのか……
「ヴェルガ君、ちょっとこっちに来てくれないか」
エル部長がヴェルガと手をつなぎ輪を作ります。
「ちょっと実験。
ヴェルガ君、ちょっとビリってなるかもしれないけど我慢してね。
痛くて限界だったら手を放していいから」
「じゃあ行くよ……」
「ギ、ナニカオナカノアタリデグルグルシテル、ナンダコレ?」
「それが魔力。
すごいぞゴブリンが魔力体になる瞬間が見れるなんて」
「魔力体はね、魔力の行使が出来る状態になった証。
この状態で必要な現象を思ったり声に出したりすることで魔法が行使できるようになるんだよ。
身体強化術の基礎でもあるから覚えておいて絶対に損はないから」
「じゃあ試しにあそこにあるろうそくに火をつけてみようか。
いまからボクが言う呪文を続けていってみて」
「『火よ』『ろうそくに』『ともれ』」
「火ヨ』ロウソク』『ニトモレ」
ポッという小さな音とともにろうそくに明かりがともりました。
「ヤッタ、ヤッタ!
アダ、マホウツカエタ、ツカエタ!」
えぇぇぇ……ヴェルガも魔法使えちゃうんですかー
わたくしうまく使うことができないのですけど……
「エル部長ーわたくしにもやり方教えてくれません?」
「ピピル君はねぇ……
失敗のイメージが大きすぎて成功のイメージが捕まえられてないのが原因だと思うんだよねぇ……」
「今みんながやってくれた火をつける方法は、全員違う理屈なのはわかったかな?
ちょっと思い出してみて?」
そういわれれば確かに、
エーリュシエルはろうそくの芯が発火するように魔法をかけました。
サクラさんは指先から出した火をろうそくの芯に移して着火させました。
テルベルトはろうそくの芯を揉みこむようにして発火させました。
「確かにみんなやり方が違いましたわね。
それで、わたくしはどうすれば?」
「うん、そうだなぁやり方が違うということはすなわちイメージしていることが違う訳なんだけど、これは前回の講義のことを考えれば理解できるよねぇ」
「はい、そうですね」
「では問題、ピピル君は魔法でろうそくに火をつけるにはどんなイメージが必要だと思うか書いてみようか」
「はい!」
さて、まずは火を起こすために指先から可燃性の気体を発生させてそれに火をつけてろうそくに移す、これでいいでしょうか……
「エル部長、これでよろしいでしょうか……?」
「どれどれ?
うーん……これはどうだろうなぁ……
プロセスは確かに目的に沿ったものになっているけれど……
ピピル君にはちょっと複雑かもしれないなぁ……
まぁいいや、面白そうだから一回やってみようか」
面白そうという理由で実験を始めるのはありなのでしょうか?
「いやだなぁ知的好奇心を満たすための実験は要するに面白そうだからねぇ」
皆さんのつけたろうそくは念のために消しておきます。
「ハイ!では参りますわ。
『指先から燃える気体出でて炎と為せ!』」
と呪文を唱え指先に魔力を集中させると、黒い煙がものすごい勢いでわたくしの指先から溢れ出ました!
「ピピル君ちょっと待って、待って、魔法を止めげふぅ!」
エル部長が制止するまでの数秒間で部室の中は真っ黒な煙に包まれました。
わたくしとサクラさんさん、ヴェルガとテルベルトはそんなに苦しんでいないようです、まぁのどにちょっと刺さる程度?でしょうか。
しかしエル部長とエーリュシエルなどはむせかえり立つこともできない状況です。
あららどうしましょう。
「とりあえず換気しようげっほぐほっ!
『エアロシェル』!」
エル部長は黒い気体のサンプルを集めたフラスコの蓋を閉めながらそういうと、
部屋を空気の膜で球状に包み込みます。
そうしてエル部長はわたくしの魔法で汚染された空気を包んだ球を廊下に引っ張り出しました。
この球体。指でつついてみると程よい弾力がありぷよんぷよんとしています。
なんだか楽しくなりそうな感触ですわね。
エーリュシエルのお胸にちょっと似た感触でしょうか。
そのままみんなで校舎を出て、園庭に出るとエル部長は、
「ピピル君の魔法でできた生成物ですが、呪文から考えると可燃性の気体の可能性が高いと思われます。
ボクもどのぐらいの可燃性気体が出来たか興味があるので燃やしてみたいと思います、というわけでここから百フィー(九十メートル)ほど上に送ってファイヤーボールで燃焼させます。
もし可燃性の気体でなかったとしてもその高さならば大した影響はないでしょう。
ではいきます」
お~黒い気体が詰め込まれた球体が空に昇っていきます。
今エル部長はいくつ魔法を同時展開しているのでしょう。
さすがですわ。
「『炎よ目標を燃やせ』」
エル部長が天に向けていた左手に添えるように右手を重ね、だいぶ遠くなった球体に向けて火球がすごい速さで飛んでいきます。
まっすぐに飛んで行った火球が黒い球にあt
キュガッ!
ドオォォーーーーーン!!!
すさまじい閃光に目を焼かれたテルベルトが、
「目が、目がぁー」
などと情けない悲鳴を上げるのを横目で見ながら、しばらく着火の魔法の練習はやめておこうと誓ったのでした。
「やばい!逃げるよみんな」
そのあとはエル部長の言葉に全員踵を返すと、全速ダッシュで部室に逃げ込みました。
テルベルトは図体がでかくて重いので引きずって走るのに一苦労でしたわ。
まったく!




