第三十一話【冒険者ギルドマスターのランド・ローネ】
◇◇◇◇第三十一話【冒険者ギルドマスターのランド・ローネ】◇◇◇◇
ダンジョン探索・講習一を修了したことにによってできることがあります。
講義の目的であるダンジョン探索に必要な資格である冒険者認定が受けられるようになったことです。
わたくしたちのパーティは冒険者のギルドに登録し、冒険者として活動することができるようになったのです。
学園都市の冒険者ギルド協会に修了証を提示することによって最下級冒険者の鉄級冒険者としての認定を受けます。
あとは冒険者クランに所属することで依頼の斡旋を受け、ある程度身元の確かな依頼を受けるか。
それとも冒険者クランに所属しないでフリーの冒険者として一攫千金を狙ってもいい、ということです。
ただしクランを通さない高額依頼は、非合法な依頼である場合や命の危険もあるので注意が必要です。
そして最大の問題点、最下級の鉄級冒険者はダンジョンに入ることができません。
ダンジョンに潜れるのは銅級冒険者から。
講義を修了して冒険者になっても鉄級から昇級して銅級に上がるまでは、ダンジョンに潜らない探索や護衛、採取などの依頼をこなして必要な点数を稼がなければいけないのです。
そのような事情で、登録科目確定期間というまとまった時間が取れるこの機会を逃さず、鉄級冒険者から銅級冒険者への昇格を済ませてしまおう、という考えでわたくし達のパーティはここ冒険者ギルドを訪れたのです。
同じことを考えている方たちは他にも結構いらっしゃるようで、学園都市の紋章をあつらえた上着を着た方がちらほらいらっしゃいます。
おかげで新規冒険者登録窓口は、ほかの受付よりだいぶ待たされているように感じられます。
ギルドは言ってみれば大小それぞれのクランの元締めといった立ち位置で、各クランへのクエストの振り分けなどの業務を行っています。
そのギルドの業務の一つが、クランや冒険者のランク認定です。
認定を受ければ鉄級から始まり依頼をこなしていくことによって銅級、銀級、金級、聖銀級、魔金級と等級を上げていきます。
金級あたりから世の人に知られた存在になり、聖銀級ともなれば国の英雄と並ぶほどの評判となります。
魔金級の冒険者は過去何人かいたらしいですけど、今は知られていませんわ。
『ダンジョンマスターズ』のカードにネームド冒険者として登場するのも、このころでしょうか。
お小遣いをためておいたわたくしも、この間一枚の冒険者カードを購入しましたの。
カードの名前は『SR金級冒険者、黒豚鬼シュトロク』。
今では廃盤になってしまった人間界で冒険者をしていた時の若き父上。
力は強く知力が低めなところは、わたくしに似ているかもしれませんね。
父とわたくしは会ったこともないですけれども。
お兄様なら覚えていらっしゃるかしら、お兄様も幼い時のことで覚えてはいらっしゃらないかもしれません。
一度訊ねてみてもいいかもしれませんね。
そろそろ呼ばれないかなぁ、と思っている間に窓口に並んでいる受付の女性から声がかかりました。
「冒険者登録申請でお待ちのピピルさーん、こちらにどうぞ~」
やっとわたくしの番ですわね、さてどんな話になるやら。
わたくしたちを呼び出した登録受付の女性職員に話しかけます。
「ピピル・マ・ピピルと申します。
よろしくお計らいください」
「はい、それでですね、ギルドマスターから少しお話があるそうなのです。
お時間いただけますか?」
「構いませんわ」
「ご協力感謝します。
ではこちらにどうぞ」
というわけでわたくしたちは、職員さんの案内で、扉の並びの一つに案内されました。
ノックして扉を開けると小規模の打ち合わせに使うであろう長机や簡素な椅子が並べられた部屋に案内されたのですわ。
そこにはよく鍛えられた肉体の壮年男性が立っていました。
全員が入り扉が閉じるのを待ってから、
「やぁよく来てくれたね、私は私はランド・ローネ。
学園都市冒険者ギルドのマスターをしている」
そう自己紹介すると、
「君たちは学園都市からの推薦で冒険者登録をしに来たピピル・マ・ピピルさんのパーティで『フィフスエレメント』。
間違いないね?」
そう尋ねられました。
「はい、その通りですわ。
わたくしがピピル・マ・ピピル、ヴィクシア連合王国の冒険者志望者ですわ。
メンバー一人ずつご挨拶いたしましょうか?」
「あぁ、冒険者証を渡すときに確認するから、それには及ばない。
本来ならば学園からの冒険者推薦は手間なく冒険者として認定するところなんだが……
時間を取らせて申し訳ないが、少し確認したいことがあってね
まぁ座ってくれたまえ」
「本来の手続きから外れてまでも確認したいことですか。
いったい何でしょう?」
「ギィ」
ヴェルガが扉の方を向いて一声上げました。
トントントンとノックの音とともに
「失礼しまーす、お茶お持ちしました~」
扉を開けて先ほどの女性職員が人数分のカップを乗せたトレーを持って入ってきました。
いきなりヴェルガと目が合った彼女は必死の思いで悲鳴を飲み込みお茶を置くと、行儀に反しないと思われる最大速度で下がっていきました。
「本当にゴブリンが冒険者資格を申請に来たんだなぁ……」
まぁそこに引っかかるのは分かっていましたとも。
入学の時も散々もめたものですわ。
「とはいえ、昨年より学生自治会の副会長である我が兄、アルガ・マォ・エルテ・ヴィクシアも冒険者登録を行ったはずですが?」
「もちろんそうだが、有体に言って君たちよりも人間に近い見た目の者たちばかりだったからな。
言葉は悪いが、ほかの冒険者から見れば君たちが受付フロアを歩いていても討伐証明が歩いているようにしか見えん。
私からは歩く国際問題にしか見えないのだけれどね。」
「マスターの正しい認識に感謝を。
わたくしも自分が違う種族、例えば人間だったらそう考えるかもしれませんわ。
残念ながらわたくしはオークでヴェルガはゴブリンですけれど」
「ギィ?アダニンゲン?チガウアダゴブリン。
ヨロシグ、ギルドマスター。
仲良クスル、エライ」
「あぁよろしく、ヴェルガ君。
他の皆さんもようこそ学園都市冒険者ギルドへ。
君たちが理知的で会話が出来るのは十分わかった。
冒険者としての活躍を期待しているよ。
ところでここのお茶受けはなかなか行けるものだと評判なのだよ、存分に楽しんでいってくれ」
知っていますわ、マ-トマート。
小粒の砂糖菓子が売りのお店、お兄様の多分第一のお気に入り。
「これは全員注意喚起でどの新人にも伝えていることだが、近辺で新人冒険者を狙って襲う何かがいるらしいので気を付けるように。
まぁ魔獣の一種だと思うが『新人殺し』なんて呼ばれている存在だ、気を付けてくれ。
特に君たちは討伐対象として目的と同一視される可能性がある。
ほかの冒険者からゴブリン退治の依頼がちょっと楽になるぞなんて思われて襲われてもつまらないだろう。
いついかなる時も気を抜いてはいけないよ」
そうですわね、後々のことを考えると一回くらいはお灸をすえておいた方がよいかもしれませんね。
「ギルドマスター、一つお尋ねしたいことがございますの……」




