第二十九話【ダンジョン探索・講習①】
◇◇◇◇第二十九話【ダンジョン探索・講習①】◇◇◇◇
「はい、君たちの勝利で戦闘終了だ、経過時間を確認してくれ。
十面ダイスを一回振った数字が戦闘時間だ。
おっと怪我をしているパーティメンバーはいないかな?
そっちも確認してくれよ?」
シブ・アムストロ教官の声が、テーブルの上に立てられたついたての向こうから聞こえます。
格子と組み木でこちら側から向こうは見えにくく、あちらからは見やすくできているものですわ。
「はいわかりましたわ。
良い目が出ますように……
えい!
八ですわ。
負傷者は……いません」
「君たちにしては時間がかかったね。
さぁ次の行動はどうしようか?」
本日の講義は自由選択科目『ダンジョン探索講習一』ですわ。
ダンジョンを探索して目的を達成する課題ですの。
もちろん収穫があるとは限りませんけれど。
「周辺警戒しつつ討伐部位の取得と戦利品の剥ぎ取りをします。
時間はどうなさいますの?教官殿」
といってもいきなり本番の本物のダンジョンに行ったりはしません。
まずパーティを組んで、そのメンバーで教官殿相手に机上演習ですわ。
命の危険は全くありませんけれど、演習で合格点を貰わないと本番のダンジョン探索ができませんから、皆一生懸命です。
わたくしのパーティーは
わたくし、ピピルがリーダー。
ロールという役目はタンクという敵が後衛に行かないように守る仕事ですわ。
後ろの味方を守ること、大事な仕事です。
性格的にわたくしに向いている気がします。
エーリュシエル。
ロールはレンジャー。
弾弓と短剣でマルチで戦う中衛ですわ。
ダンジョンでは弓はあまり使えないそうです。
エーリュシエルも外では長弓、短弓両方使いますが、ダンジョンでは弾弓が便利なんだとか。
狭い場所では使いにくいのはのはもちろんですが、弓はともかく矢がなくなってしまうとジリ貧だそうです。
弾弓ならその辺の石を使ってもいいからだとか、なるほど。
中衛は判断力と器用さが求められるお仕事です。
ヴェルガ。
ロールはスカウト。
あんまりよくない言い方らしいですけど、シーフとも呼ばれる罠開けなどの鍵開けや索敵を行う役目ですわ。
測定の結果、ヴェルガは鼻だけでなく、夜目も効くし耳も小さな音が騒音の中でも聞き分けることができるそうです。
感覚器官が優れているのですね。
戦闘はまだまだで、訓練が足りませんが、脚力にも優れているヴェルガには適役でしょう。
鍵開けや罠除けの勉強も頑張っているようで微笑ましいと感じてしまいます。
ヴィクシア連合王国のメンバーでわたくしの近くの、というかわたくしと組めるのはまずこの二人でしょう。
あとは先だっての約束の通り。
サクラ・カヅキ。
ロールは東方戦士のサムライ。
刀と槍、場合によって弓が使えるそうですが、サムライの長弓はとても大きいのでダンジョンには持っていけません。
槍も屋外戦闘用の武器らしくこれもダンジョン探索には向かなそうです。
メイン装備は大小の刀。
細身の反りのある片刃のとても美しい武器を振るって戦う前衛物理攻撃職です。
エルダガス・ノバ。
ロールはマジシャン。
後方で魔法で援護するのが仕事です。
戦闘中は全体を見渡し戦況を判断して指示を出してもらうことにもなるでしょう。
リーダーのわたくしが判断する役ならば、エル部長には参謀的なこととして選択肢の提示、可能性の指摘などをやってもらうことになりそうです。
さらに多彩な魔法が売りで回復役もこなせる得難いメンバーといえるでしょう。
この五人でダンジョンに挑みます。
パーティ名は『フィフスエレメント』と名付けました。
なかなかバランスがいいパーティになったと思いますわ。
さて、このダンジョン探索講習、実はあるゲームに似ています。
冒険者カードやモンスターカードなどを駆使してダンジョン攻略側と防衛側に分かれて多人数で遊ぶそのゲームは名を『ダンジョンマスターズ』。
これはわたくしもお兄様たちと遊ぶのが長い冬ごもりでの楽しみの一つでしたわ。
もっともゲームよりも細かいところまで設定されていますわ。
講習を通じて本番で注意するところを訓練するのですから、なかなか手ごわいですわ。
お兄様はダンジョンマスター側が得意でわたくしは冒険者側が得意でした。
フィールドに出せる冒険者のコストを考えながら魔法やスキルを考えて攻略をするのが楽しくて。
わたくし達が遊んでいたカードは館にあったちょっと古いカードでしたが、学園都市にはなんと『ダンジョンマスターズ』のカード専門店があるのです。
そこで新しいカードやシナリオブックが入手できたりするのです。
人気作家のシナリオブックはすぐ売り切れてしまうそうですから、定期的に通ってぜひとも入手したいものですわ。
館にあったカードがとんでもない値段で売っていたり、新しいカードを眺めたりとても楽しく過ごせましたの。
冬に備えてわたくしのカードデッキも新調しようかしら。
あぁお小遣いが全然足りませんわ。
甘いものは減らしたくないですがちょっとセーブした方がよさそうですわ。
一刻も早く『ダンジョン探索・実技』にたどり着いてお金を稼げるようにならなくては。
ではなく。
思考が外れてしまいましたわ。
言ってみればこれは冒険者カードを自分たちのアバターに置き替えて『ダンジョンマスターズ』をやるということですわね。
講習の前に身体能力検査があり自分たちのロールと能力値が調べられ簡易のカードに移し替えられます。
「剥ぎ取りは成功。おっと宝箱も出たよ。
運がいいね」
向こう側でもサイコロを振っているカラカラという音がします。
「鍵がかかっているか確認しましょう」
鍵開け、罠よけは感覚の鋭いヴェルガにやってもらっています。
いやまさかこちらもダンジョンでこんなに役に立つとは思ってもみませんでした。
わたくしの一の配下は優秀ですわ。
「ギ、マァセロ。
サイコロフル?
イクツ出セワ成功?」
「そうだね……
六面ダイス一回で三以上で施錠確認成功かな……」
「ワカタ。
エイ!
四ダ、成功、ギィ!」
「成功ね、鍵が掛かっています。
罠は毒針。
開錠するなら十面ダイスで七以上で開錠成功。
どうしますか?」
「ドスル?ゴスジン」
「当然開錠ですわ、ヴェルガお願いね」
「ワカタ!
十面ダイスフル。
エイ!
九ダ。
開錠シタゾ!中身ナニ?」
「液体の入ったフラスコが一つ、銀貨が二十六枚」
「フラスコの中身は何でしょうか?
エル部長確認お願いしますわ」
「六面ダイス四以上で簡易鑑定成功、六で詳細鑑定成功ね」
「うわ結構厳しいねぇ。
いくよ。
四。
簡易鑑定は成功か……」
「簡易鑑定の結果。
においの強い油だね」
「うーん難易度的に何かありそう。持ち帰りで確認しようか」
「そうですわね」
「そうしましょう」
わたくしとサクラさんが頷きます。
さてそろそろゴールについてもよさそうですが……




