第20話【決闘審判に臨んで】
◇◇◇◇第二十話【決闘審判に臨んで】◇◇◇◇
決闘審判の場所として指定された競技場に向かいます。
メンバー落ちしたテルベルトとヴェルガは応援のためについてきてくれます。
そして老師もついてきてくれます。
助っ人のサクラ殿の胸を張って歩く姿は庶民とはとても思われず、高貴な血筋の者として教育を受けている気配が濃厚にします。
「サクラ殿は一回生かしら、それとも二回生かしら」
わたくしの問いかけに
「私はこの春から学園生になりました。ですからピピル殿と一緒の一回生ですよ」
「サクラ殿はこちらの事情をよくご存じのようですわね」
「私は興味が出来たものは徹底的の調べないと気が済まない性格のようで……
お恥ずかしい……」
「わたくしはサクラ殿のことは先ほど知ったばかり、いろいろ教えてほしいですわ」
「私のことですか!?
とてもお話しするようなこともないような小身の生まれです。
家は高貴なお方のお守り役が代々のお務めですので、主の入学に伴って私も入学した次第です。
そんなわけで武にかけて他の者、特にヘールジャニアに後れを取るわけには行かないのです。
さらに言うならば初級剣術の一回目の講義で出席免除を勝ち取ったピピル様になおさら興味をひかれたのです」
「そうなのですか……」
わたくしが剣術の講義を受けたのは昨日の午後なのですが、情報早すぎませんか……
競技場につくとミロル会長とソフィアさんそれに見慣れない男の方がいらっしゃいました。
多分、昨日不在だった自治会書記のデューイさんでしょう。
「くがぁーぅぉ、おはようピピルちゃん、やっぱり騒動の中心にいるね君は」
大きなあくびをしながらミロル会長が話しかけてきますがこの方が大きく口を開けて近づいてくると、謎のプレッシャーを感じますね。
「やっぱりわたくしが起こした騒動ではありませんわ、ミロル会長」
と昨日と同じように答えます。
「それよりそちらは……」
「あぁ、昨日はいなかったね、学生会書記のデューイ・ガドナー君。
ピピルちゃんと同じ一回生だから仲良くしてあげてね」
伏し目がちなせいか焦げ茶色の何の変哲もない髪色しか印象に残りませんね……
近づいて一足一刀の間合いに入った瞬間、すっとデューイさんは間合いを外しました。
これは面白いですわね。
「あら、ごめんなさい、お顔が見たかっただけですの」
「あ、いえ自分の方こそごめんなさい。
あまり人から近づかれるのは慣れていなくて……」
顔は西方風の顔立ちに見えますが違う気もします。
中原の出身の方かしら。
顔を上げても前髪が長くてよく見えません。
やっぱり印象が薄いですわね。
「そうでしたの、ピピルと申します。
兄が副会長だからと言って気後れなさらずお話しくださいね、デューイさん」
コクコクと頷く彼を見て思ったことがあります。
ヴィクシアの関係者で他人に間合いに入られるのを嫌がる者のことを。
彼もまた同じような使命を持って活動しているのでしょうか。
「ところで今日はおそろいでどうなさったのですか?」
視線をミロル会長に戻して尋ねました。
「なにって、ピピルちゃん。
今日やることに見届け人が要るでしょうが」
「決闘審判の見届け人ですの?」
「そ、中立な立場の者が審判の結果を判定することになっているんだ」
軽くうなづく会長。
あ、なにかソフィアさんの目がピキンとなってこっちに寄ってきます。
「そうなのですか、わたくし決闘審判にはあまり詳しくなくて、すみません。
朝からご迷惑をおかけします」
「いやぁオレもあんまり詳しくな……」
言いかけたミロル会長のふくらはぎを、ソフィアさんのやたらしなりの効いた下段蹴りが襲います。
鞭のような蹴りをシパーーン!と響かせるソフィアさんは冷たく言い放ちます。
「気さくなのは会長の美点でもあると私も認めてはいますが。
ばらしていいことと悪いことがあります」
「いがっ!だっ!ってシャレにならねぇ!
まじかこの暴力女わ!」
動転して素が出てますし語尾も乱れてますね、会長。
足を抱えてゴロゴロ転がって痛みに耐える会長獅子獣人の威厳はありません。
その様子をソフィアさんは冷たく見下ろし、
「獅子獣人がこのくらいでどうにかなるはずないでしょう。
ピピルさんの同情あおってないでさっさと立って説明!」
「ちぇ、ばらされちゃ仕方ない、ちゃんと説明しよう。
足りないところはソフィア君、補足してくれ」
確かに学園内で起こる事案についてよくわかりませんでは学生会会長は務まりませんものね。
しかしあれは演技でしたか、今後もミロル会長には気を付けないといけませんわね。
「まず決闘審判とは何かということだが、貴族以上の身分出身の二者が意見を対立させ、話し合いでの解決ができなかった場合に行われる、武力による紛争解決法だ。
なぜ貴族以上かというと、貴族は戦って名誉や領地を守るっていう側面があるからなんだけどね」
「今回でいうとヘールジャニアのロート・キーン騎士爵の聖女モニカ・コルゥに対するピピルさんに対する傷害の抗議に、ヴィクシア連合王国のアルガ・マォ・エルテ・ヴィクシア王太子による抗議の撤回とピピルさんの名誉棄損への謝罪、という意見の対立の解決を目的に決闘審判が実施されることになります」
「まぁ市民流に言い直すと決着つけてやるから表に出ろこんにゃろう、だな。
え、ソフィア待った!
茶化して悪かった、だからやめてくれ!
悪かったってばアッーーー!」
太ももの肉をわしづかみにされ、ひねり上げられると会長は体をねじるように拘束から逃れ悶絶します。
傷つけるのではなく痛めつけるという攻撃を容赦なく繰り出すソフィアさんは、先ほどの蹴りと合わせて考えるとかなり格闘術の鍛錬を積んでいるのではないでしょうか。
「ぜーっ!
はーっ!
で、だ。
今回は双方の代表を五人選出してその勝ち負けの結果、勝った人数の多い陣営の主張が認められるというわけだ」
息を乱したミロル会長が説明を続けます。
「学園内ローカルルールでは対戦相手の身体欠損、殺害は認められません。
そのような行為があった場合即座に反則負けになります。
ですので刃引きした剣や鈍器を使って殴り合うことになります」
「もちろん治癒魔法の使い手を立会人の中に用意してあるから、もし事故があった時のそなえは万全さ。
まぁ鈍器で全員殴り倒せば勝ちってことだな」
なるほど、わたくしのボーンイーターはこの決闘裁判に問題なく使えそうですわね。
使い慣れた武具が使えるのはいいことだと思いますわ。
さぁ昨日我々の寮に押し掛けてきた面々が競技場に現れました。
戦って名誉を守る貴族の義務、立派に勤めて見せましょう。




