第17話【学生自治会長のミロル・リシェー】
◇◇◇◇第十七話【学生自治会長のミロル・リシェー】◇◇◇◇
ミロル会長は大声を出してドアを開けると、ずかずかと中に入っていきます。
わたくしもミロル会長の後ろについていきます。
部屋は明り取りの窓を背にして会議用の長机が四角く配置されており、いつでも打ち合わせができるようになっておりますわね。
入口と窓の面の他の壁面は資料棚になっていますが、棚はまだスカスカでまだ歴史が浅いことを物語っています。
お兄様が机の一角でほかの方と打ち合わせをしていたようですが……
なにかむせていらっしゃいますわね。
「ゴホゴホッ!なんでミロルとピピルが、ゴホ一緒に入ってくるんだ……」
むせながらいぶかるお兄様に、
「いやさっき学内でけんかしている奴がいるって連絡があったじゃない。
それで様子を見に行ったらピピルちゃんが片方の当事者だったってわけ。
まぁ実際は喧嘩じゃなかったっぽいけどね」
「ピピル、怪我をしているじゃないか、けんかじゃないのにでそんなに傷ついたのか」
「そうではありませんわお兄様。
道端で回復の練習をしている聖者候補のモニカ・コルゥという方と巡り合いまして、ヒールを抵抗する訓練をしていただけですの」
「なるほどそういうことか、なかなか自己回復の力を上げる機会は無いからな、あとでモニカ・コルゥには礼を言っておかなければな……
ん、まてよ、それではそれ以前にけがをしていたということか?
元々そのけがはどうそてしたんだい、ピピル」
「はい、今日は初級剣術の授業がありまして、初日ということで素振りをしていたのですが……
教官の目にとまって立ち合いをすることになったのです」
「授業初日から教官と立ち合いだと……
それでどうなったんだい、ピピル」
「教官との立ち合い自体は一合で終わったのですが、そのあと年次出席免除とSランクでの単位取得を認めていただいたのです、ほら」
「どれどれ、ほぅ、本当に初級剣術講座以後出席免除とS評価がついている。
素晴らしいじゃないかピピル。
しかし、一合しか手合わせしてないのにその怪我はどういうことだい」
「あー……わたくしが特別扱いされていると誤解した男子の一人に挑まれまして……」
「名前と出身国、今すぐ教えなさいピピル」
「え、えーとコングリハンド王国ののハイン・イシュテートという方でしたわ」
「ほほう、かの国の王族にそんな生意気なガ…者がいるとは、あとで身の程を教えなくてはならんな……」
「へぇピピルちゃん剣術優秀なんだぁ、すごいなぁ」
ヌッとミロル会長が顔を出してきます。
「ピピルちゃん、傷薬を持ってきたよ。
治療しよ」
「あら、ありがとうございます会長」
「あ、僕のことはミロルでいいからね、ピピルちゃん」
「はい、よろしくお願いしますわね、ミロル会長」
「何を人の妹になれなれしくしているんだ、お前は」
「むぅ、やはり兄の壁を突破しなければピピルちゃんとお近づきにはなれないみたいだねぇ」
「会長はどなたにでもなれなれしいですから警戒されてしかるべきかと」
先ほど何やらお兄様とお話しされていた女性がわたくしの治療を手伝ってくださっていながら、とげがある、しかし親しみを感じさせる口調で会長に意見しました。
会長はわざと大きく落胆のそぶりを見せながら
「それはないんじゃない、ソフィアちゃん」
と嘆きましたが、
「ほら、そのあたりが警戒されるもとですよ」
と撃退されていました。
「ピピルさん、なれなれしい相手には、妥協しないできちんと応対することをお勧めしますよ」
「はい、そうしますわ、ええ……ソフィアさん?」
「そう、ソフィア。
ソフィア・リュンク。
学生自治会では会計をしています。
クーレリア出身のヒューマ、分類としては南方系になるのかしら。
商人の娘だからって会計任せるのは安直じゃないかしら、といつも思っているのよ」
確かに黒褐色の美しい肌をして癖の強い髪を頭の後ろでまとめて縛っている彼女は、南方系の顔立ちをしておりますわね。
それに何となく大人びた雰囲気を醸し出していらっしゃるわ、総じていえば素敵なかっこいい方、女性ですけど。
「そして僕が会長のミロル・リシェー、アルブリド海洋国の出身で実は王太子なんだ。
そして副会長のご存じアルガ、書記のデューイはまだ来てないみたいだね」
「お兄様は学生自治会の副会長でいらしたのですか」
「そういえば言ってなかったかも知れないね。
僕が自治会の副会長なんだ」
「びっくりしましたわ、お兄様はそういうのは苦手だと思っていましたのに……」
「そうだね、僕も老師に言われるまで副会長なんてするつもりはなかったんだけど。
『お前はまじめすぎるのが良いところで悪いところでもある。ちょうどいいのが自治会長やっているから副会長でもやって慣らしてこい』と言われてね」
老師はこの一年毎晩のようにわたくしの剣の相手をしてくださっていましたのに、いつ学園に行かれていたのかしら。
日帰りできる距離ではありませんのに……
相変わらず底が知れませんわね……
わたくしの傷の手当てが終わるとお兄様が
「ソフィア君ありがとう、世話になった
この礼はいずれ」
そうソフィアさんに言うと、今度はわたくしに、
「ピピルは今日の講義はもうないね?
教務課に寄って書類を提出したら寮に帰ろうか。
今宵はピピルの剣術Sランクのお祝いに料理長に腕を振るってもらおう」
わぁい。
お兄様と一緒に寮に帰れる、うれしいです。
「では、ソフィア君、先ほど打ち合わせした件、会長と図って進めてくれ。
本日は失礼する」
そうあいさつし荷物をまとめ始めます。
「はい、わかりました。
では会長こちらの書類を確認してください。
確認して異議がなかったらサインを……」
会長とソフィアさんが打合せする中わたくしたち兄妹は教務課に向かいまいしたの。
「いやぁ連絡受けてしばらく来ないから、今日は来ないのかなと思っちゃいましたよ」
教務課の担当者は若い女性エルフで、テキパキと手続きを進めてくださいました。
確かにいろいろ寄り道して遅くなってしまいましたね。
「はい、確かに受領しました。
聞いていると思いますけど年が明けたら飛び級試験に挑戦できますので通知をお待ちくださいね」
「はい、よろしく手配お願いいたしますわ」
手続きも終わり、お兄様と二人、辻馬車を拾って寮へ帰ります。
お兄様もわたくしも陰ながら護衛はついているらしいですが。
寮につくと何やら門前が騒がしいですわね。
「だからヴィクシアのピピルに用があるといっているのである!」
「ここでそのような呼び方をするとは大胆な奴、だがここは通さんし姫にも目通りは許さん!」
あら、わたくしに会いたいと来ているのですね、何事かしら。
人気者は困ってしまいますわね。




