第14話【勇者志望のハイン・イシュテート②】
◇◇◇◇第十四話【勇者志望のハイン・イシュテート②】◇◇◇◇
しかしあれですわね、こう二十合ほども打ち合うと退屈してまいりますわね。
彼のフットワークと剣速は一流でも攻撃が単純なんですもの。
まずは剣の間合いの外から死角に、疑似瞬間移動並みのステップで移動しての斬撃。
これを一とします。
多分このステップ移動は、脚力強化の術を使ってますわね。
そしてこれも多分ですが、ステップ移動は連続して使うことはできないようですわね、まぁ油断は禁物ですけれども。
まぁそこから三連斬撃。
これが二。
狙いは急所ですわね。
真剣もってきて立ち合いだから怪我くらいは覚悟しろ、みたいなことを言っていた気がしますが止めるつもりもなさそうですわね。
まぁ夢中になって忘れている可能性大ですけれども。
そして強化なしのバックステップで双方の剣の間合いから外れる。
これが三。
ここまでずっと一、二、三と、このパターンなのですが……
まだ隠している技、ございますわよねぇ?
こちらも、もうちょっともう『弾き』を当てないといけないようですし……
斬撃時に皮を切られるほどのギリギリさは、もうほとんどありませんわ。
さらにしばらく打ち合っていると、
「いけいけハインその調子だぁ!」
「ハイン様がんばってぇー!
豚になんか負けないでぇー」
「相手は亀の子で防御に精いっぱいだ。
ハインの勝ちは揺るがないな」
そんな声援が次々入ります。
「おう!そろそろ片付けるぜ!
いっくぜ~」
声援に応えると応援する学生たちに軽く手を振り返した。
かなり大きな隙なので、これに乗じて勝負を決めるのは簡単でしょうけど、あとで「卑怯者」とか罵られそう。
わたくし自身はなんと呼ばれようと別に気にしません、面倒ですが。
ただ、お兄様の名に恥じぬ勝負のつけ方をした方がいいでしょうね。
まぁ頑張ってくださいませ、ハイン様とやら。
なかなか気合の入った顔をしておいでですが、疲労の影も色濃く表れていますわね。
そろそろ隠し玉の必殺技の一つでも出してくるかしら。
期待が止まりませんわよ?
さぁいらっしゃい!
受け止めてさし上げますわ。
「せいやぁ!」
彼は相変わらず気合の乗った声をあげると……
勢いよくステップ移動をして、連撃して下がりました。
あれぇ?
変わったのは掛け声だけですの?
はぁ…がっかりですわ。
まぁそろそろ捕まえて良い頃合いですし、勝負をつけましょうかしらね。
「はぁーーっ!」
相変わらず気合の入った、ハイン様とやらの掛け声から死角に入って急所への攻撃。
大体声の方向がわたくしに居所を教えているのに。
まぁここ一番の攻撃では声が出てしまうものですけどね。
これを老師の前でやるとわたくし注意されてしまうのですけれど。
そこから三連撃して……あらすべて『弾き』が入りましたわね。
さてこの後の彼の行動はどうかしら?
彼の行動は変わらず、そのままバックステップの足さばきに入るようですわ。
ではわたくしは表情を変えることなく、その後退に合わせて踏み込みます!
「はっ!」
わたくしも、数歩だけならあなたのバックステップと同じ速さで動けますわ!
初めてのわたくしの突撃に非常に驚いた顔をなさっておいでですわね。
さぁ、さぁ、まいりますわよ。
きちんと受け止めてくださいませ。
そう、きちんと反応して剣で防御出来ますわね?
「やっ!」
しまった、声が出てしまいましたわ。
ばれたら老師の特訓コースですわね。
パギャアァァン!
いかに業物の剣といえども、さんざんに『弾き』を叩きこまれれば断末魔の悲鳴をあげて根本から折れざるを得ません。
そのまま押し込んで、ハイン様とやらの革製の軽鎧の肩にしたたかな打撃を加えると、彼の鎖骨を折る感触が手に伝わってきます。
打撃の勢いで倒れるのをこらえて膝を地に着いた、その強情はお見事ですわハイン様とやら。
でも鼻先にわたくしの鉄板の先端が触れるところで止まっているのです。
怪我もされたことですし、どう意固地になろうとこれでお仕舞ですわ。
「わたくしの勝ちでよろしくて?」
「あぁ、ちくしょう……俺の負けだ、どうとでもしやがれ!」
「あら勝負に潔いのはよいことですわね。
とはいえ約束は守っていただきますわよ?」
お願いを何にするか全く考えていませんでしたわ。
剣を鞘に収めつつ考えました。
すぐに思いつくのはスイーツ食べ放題とかですけど、もっといい案はないかしら?




