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大金持ち

後書きに改稿の終了状況について追記があります。興味がある人だけ読んで下さい(読まなくても、物語への影響は一切ありません)。


地上編も、一話一話丁寧に書いていきたいと思います。宜しくお願いします。

「しかし、これはひどいな」


 もう昼だというのに、男性陣はほとんどが宿の一階で伸びている。


 昨夜は結局ほとんど全員が飲み明かした様で、部屋に戻ったのはネイベルだけだった。ショウまで頭を抑えている。


「あとでお金を作って、おじさんに渡しておかないと……」


「あら、それじゃあ私がカドと行って来るわ。色々と見て回りたいし」


 ミネルヴァがネイベルの呟きを拾って返事をする。


「俺も見て回りたいから、一緒に行こうか」


「ならリンも誘っておくわね。マリーとアルは何か話があるって言ってたし」


 何を話すんだろう。少し気になるが、今は街を歩きたいという欲望に勝てない。


「それじゃあ準備したら、すぐに出よう。こいつらは駄目だ。たぶん夜まで動かない」


 ミネルヴァが苦笑いしている。


「分かったわ、少し待っていて頂戴」






 宿の主人にお金の都合をつけて来ると告げ、ネイベルたちは街へと繰り出している。


「本当に活気があるわね」


 リンは歩くだけで楽しいようだ。


「どうも、冒険者が多いらしいのよ。彼らがお金を落とすから、ここの街は王都に次いで大きいらしいわよ」


 二人はキョロキョロと周囲を見ながら歩いている。


 王都に初めて来た田舎者、といった風で少し面白い。


 この大通りには、食べ物屋や土産物屋が軒を連ねている。おそらくは二階部分が住居なのだろう。どのお店も人を呼び込もうと必死だ。確かに活気で溢れている。


「ここはフウロという街らしいよ」


 彼女達は、へぇ、そうなのね、と言いながらも、視線は周囲の店に釘付けだ。


 ネイベルは思わず、カドと顔を見合わせて笑ってしまった。


「ここから一番近いダンジョンが、あの草原のある空間なのです。そして、そこでは食料となる怪物や、武器と防具の元になる弱い怪物が多く出るので、駆け出しの冒険者に人気なんです」


 カドが詳しく説明をしてくれる。


「つまり、危険が少ない割に収入が良いという事で、ここで腕を磨く冒険者が多いのです。大陸中の駆け出し冒険者は、全員がエストかイストに集まると言われています」


「エストも?」


「はい。エスト側では大森林、密林、最近ではジャングルなんていう人もいますね。木が生い茂っていた空間ですよ。草原より少し手ごわい、という位置付けになっていますね」


「ああ、あそこかあ。確かに凍土や炎土よりは冒険しやすいだろうなあ」


 カドが少し声を潜めてネイベルに話しかけてきた。


「それよりネイベル様、昨夜ショウが売却した雪虎の牙ですが、少々問題になっております。この辺りでは取れない素材の上、狼とは違って虎の牙ですので、人気が高いようです。出品者を探しているとか何とか」


 ネイベルは目を大きくして驚いてしまった。


「ちょっと待ってよ、そんな大事に? まだ数百本はあるんだけど……」


「少しずつ捌いていくしかないですね。もしくは王都に持っていくか、誰かに処理を委任するか……正直どのような手段を取られても、混乱は必死です」


 オリハルコンの量だけで国が一つは買えますよ、と言ってカドが笑った。


 カドの笑顔は、やっぱり小動物のような可愛さがある。普段は冷徹そのもの、といった雰囲気なだけに、格差がすごくてドキッとしてしまう。


「冒険者組合で一手に捌いてもらう、という手段が一番マシかもしれませんね」


「確か冒険者証を作れば、大陸中で共通の身分証明書代わりになるって言ってたよね?」


「ええ、そうですね」


「じゃあちょっと考えておこう」


 ボンさんの冒険者証を無理やり作ってしまえば良いのではないか、とネイベルは考えている。


 それなら今後困ることもないし、何より一人だけやかんの中だなんて可愛そうだ。


「あっ! リン様、ミネルヴァ様、こちらです」


 カドが慌てて道を訂正している。どうやら会話に夢中になって、目的地を通り過ぎてしまったようだ。


 そうしてネイベル達は、倉庫の様な建物の前に到着した。






 目の前の建物は、他のお店を三つ並べたより大きいかもしれない。それに三階建てだろう、随分と屋根が高い。


「ここが素材を売る場所なのね?」


「でかいわね」


 リンとミネルヴァが興味津々といった風に、カドへ尋ねている。


「ええ、このフウロで一番大きくて信頼できるお店です。素材の買取は、大量にやり取りする場合、ここが一手に引き受けることがほとんどのはずです」


「じゃあさっそくお願いしようか。確か昨日の内に予約はしてあるって言ったよね」


「ええ、お昼過ぎに来てくれという話でしたので、丁度良い頃合ですね」


 そう話していると、奥から数人がこちらへやって来た。


「オゥ! ニィちゃん達が依頼のあった冒険者で良いのかな? 今日のお昼過ぎに来るって」


「はい、お願いします」


 カドが代表して答える。


「オォ! ネェちゃんが代表か、すまねぇな! それで、見たところ大した荷物じゃねぇが……箱持ちか?」


 ネイベルとカルーダの中間くらいの年齢だろうか、元気の良い男性と、その後ろに若い男性、そして一人は女性のようだ。


「良く分からないから、カドに任せるよ」


 ネイベルは、カドの耳にそっと囁く。


 リンとはまた違う、良い香りが鼻を通り抜けていった。これは、椿油だろうか。あまり扱った事が無い上に、ブランクが長すぎてカンが戻らない。


 なんだか無性に気に入ってしまった。いけない気持ちになるのでこれ以上はだめだ。


 カドの耳が、ほんのり赤くなっている。


「わかりました。お任せ下さい」


 そう言って、元気の良い男性と奥へ行ってやり取りを始めた。


「カドは頼りになるね」


「ええ、本当ね。いつも助かるわ」


「気が利くのよね。それに所作も上品で、話し方も丁寧でしょう? 最近は笑顔も素敵だと思うし、あれは男が放っておかないでしょうね」


 何より勉強熱心なのが良いわ、と言ってミネルヴァはカドをベタ褒めしている。


 リンはそれを聞きながらクスクス笑っていた。何やら昨日一晩で、女性陣はさらに仲良くなったのではないだろうか。


 マリーとアルなんて、二人で親密な話をするような仲でもなかったはずだ。


 そうやって、ネイベルはカドの商談が終わるのを待っていた。






「大体話は纏まりました」


 カドが戻ってくる。


「ありがとう。それで、何が売れたの?」


「雪狼と雪虎の亡骸をまるごと保持している、と言ったら、目の色を変えて食いついて来ましたよ。それぞれ合わせて百匹は卸せると言ってあります」


「おぉ! すごいじゃないか。他の怪物の素材も大量にあるから、それでもまだ全く足りないけど」


「明日、冒険者組合に顔を出しましょう。恐らく、ネイベル様が所持している怪物の素材を、そのまま処理してしまうと、市場が大混乱に陥ります」


 カドが真面目な顔で言うと説得力がすごい。ネイベルは頷くことしか出来なかった。


「それではネイベル様、こちらへ」


 彼女に先導された先では、先ほどの三人が色々な道具を持って待ち構えている。


「じゃあ出すね」


「まずは十匹ず――」


「――え?」


 ネイベルは、やかんから一気に百匹の雪狼と雪虎を取り出してしまった。


 しかもそれぞれ百匹ずつだ。


 準備されていた広い空間が、それらの亡骸でいっぺんに埋まってしまう。


「んんんんんなあああ!」


「はっ?」


「えっ……?」


 三者三様に、とんでもない驚き方をしている。


 そしてネイベルも口が開いたままだ。


 女性陣は、全員が額に手をあてていた。


「いや、違うんだこれは――」


「ネイベル様……」


 言い訳をする暇すら与えてもらえない。


「ニィちゃん! すっげぇポーターだったんだなぁ! 見直したよ」


 ネイベルは、カドを見る。彼女は小声で意味を教えてくれた。


「収納の能力がある魔道具はご存知ですよね? それを持ちながら、冒険に必要な物や怪物の亡骸を保持して、パーティと一緒に行動する人間の事を、ポーターと呼ぶのです」


 何故か単語が頭にスラスラと入ってくる。


「専門用語ですからネイベル様はご存知なかったかもしれません」


 そう言ってカドは丁寧に教えてくれた。


「魔力量によって出し入れ出来る量に大きな差がありますし、そもそも大量の物資を出し入れ出来る魔力があれば、皆、魔導師になります。なので、優秀なポーターはほとんどいないのです」


 なるほど、確かにそれはそうだろう。


 目の前では、三人が亡骸を見てよだれを垂らしそうになっている。


「こ、これ、全部ウチに卸してくれるんだな?」


「え、ええ……おねがいしま――」


「ありがとう! 助かるよ! 俺はダンカンっていうんだ。これからも、どうぞご贔屓に!」


 そう言って笑顔を見せると、ダンカンという男性は、若い二人にあれこれと指示を出しながら、テキパキと作業をこなし始めている。


「ネェちゃん! それじゃあ明日の朝にまた来てくれよ!」


 それだけ言うと、目を輝かせながら雪狼と雪虎の亡骸を解体し始めた。






「周囲に人が居なかったのがせめてもの救いね」


「ネイベルったらもう……」


「すみません」


 ひたすら平謝りしか出来ない。自分の能力を、もっとしっかり把握しておくべきだった。


「彼らは口が堅いですからね、多分大丈夫です。それに明日冒険者組合にいけば、どうせ周知の事実となります。ネイベル様は、一躍時の人ですよ!」


 何だかカドの機嫌が良い気がする。


「それで、いくらになったの?」


「ああ、そうでしたね。こちらになります。こちらは前金となります。処理が終わった後に、状態が良かった物は追加でいくらか上乗せして頂けます」


 そう言ってカドは、大きな袋を四つネイベルに手渡した。


「えっ、これちょっと、えっ?」


 袋の中には、()()()が、ぎっしりと詰まっている。


「ご安心下さい。四つのうち一つは、使いやすいように金貨にして頂きました」



 ――いや、それじゃ袋三つ分は白金貨って事じゃないか。



 ネイベルは開いた口が塞がらなかった。


 想像はしていたが、あっという間に大金持ちになったようだ。


 そして、何だか実感の沸かないまま、宿へと戻っていくのだった。




お金がガッポガッポです。5000兆円欲しい!

物語中のお金の価値については、少しずつ書いていきます。


三章の改稿が終わりました。修練の祠編とスルーレ編の二つに章を分割してあります(内容は同じです)。

つまり現在は第四章までの改稿が完全に終了しています(9月6日1時)。

第五章以降は、恐らく修正箇所がそれほど多くないはずなので、後回しです。一応これで今回の大幅な改稿は終了です。あとはゆっくり改稿しながら、本編を進めたいと思います。


地上編は構想を後から追加した部分です。テンポ良く進めていく予定です。戦闘シーンは少なめになると思います。今後も宜しくお願いします。

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