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ボンさん

 イッカクを倒したネイベル達は、倒れていた人間を一箇所にまとめると、楽しそうなボンを眺めながら雑談をしていた。


「あいつも根っからの戦士だったって事だ」


 カルーダは上機嫌だ。


「色々考えられることはあるけれど、ボンには妨害魔法が効かないのかしらね」


 リンが不思議そうに言った。


「まあ、その線もあるけど、カルーダやネイベルの影響が色濃く出ているって可能性もあるわね」


 ミネルヴァも答えは持ち合わせていないようだ。


「本人が楽しそうだからいいけどさ、御神体ってことは、身体に受けた被害を精神的な苦痛へと変換してしまうのだろう? それなら見た目には分からないよ」


 ネイベルは不安を口にする。


「ちょっと確かめてみるか」


 カルーダはそう言うと、大声でボンを呼び寄せた。


 相変わらず楽しそうにカタカタと草原を走っている。


「よし、ボン、良いか? 魔法を受けて、お前は辛かったか?」


 

 ――カカカカ



「ふむ……」


 カルーダは腕を組む。


「それじゃあ、戦うのは好きか?」



 ――カカカカ



「……なるほどな」


 カルーダは頷きながら断言した。


「一つだけ、分かった事がある」


「あら、すごいじゃない。さすがは宝具の主人ね」


 ミネルヴァは感心している。


「ボンが何を言ってるか、さっぱり分からねぇという事が分かった」



 ――パァン



「いってぇな! 何すんだよ!」


「うるさいわね。みんなの気持ちを行動で示しただけよ」


 ミネルヴァは呆れている。


「とりあえずしばらくは様子を見よう。うまれたての御神体なんて、誰も詳しく分からないよ」


 ネイベルは、カルーダを無視してそう言った。


「でも、適正の低い魔法攻撃や、強烈な物理攻撃を受けたら、きっと精神に負荷が掛かるのは同じはずよ。それだけは注意してあげてちょうだい」


 それだけ言うと、ミネルヴァはガルガッドの歴史書を読み始めてしまった。最近は、暇さえあれば本を読んでいる。


「ったく。ボンは強くなりてぇ――ん? あれ、おめぇ、だんだん色が変わって来てねぇか?」


 カルーダがそう言ってボンの体を見つめている。


「あ、本当だ」


 目の前で、白い骨が徐々に赤味を帯びていく。


「あら、なんだか鮮やかで素敵な色ね」


 リンはうっとりとした笑顔を浮かべている。



 ――カカカカ



 やがて白骨の戦士は、緋色の戦士へと姿を変貌させた。






 意識を飛ばした者達は、しばらく起き上がる事はないだろう。なので、体調の管理はリンに任せてある。


 その間にネイベル達は、ボンに何か変わった事がないか調べると共に、しっかり鍛えてみようという話になった。


 まず、全ての骨と骨の隙間が、薄くて白いもやで満たされる様になった。向こう側はぼんやりとしか透けて見えない。


 白骨だった部分は、全て緋色の骨になった。光を反射しているし、金属のように見える。この変化がとても面白くて、どうやら向けられた魔力をこの緋色の骨が吸収しているようなのだ。


 そしてイッカクの亡骸を処理している際に判明したのだが、あの立派な角がどこにも見当たらなかった。


「こいつが吸収しちまった……っていうことか?」


「私にはそう思えるわね。ボンの体は、角の色と同じよ」


「でも吸収って言ったってよぉ……」


「確かに良く分からない事だらけだし、確かめ様もないけど、別に悪い事じゃないわよ。魔法を吸収する前衛だなんて、普通は喜ばれるものよ」


「まぁそれもそうか」


「あんた達はネイベルの魔法のせいで、そのありがたさが分からないだけよ」


 カルーダとミネルヴァが色々と分析しながら意見を交わしている。


「すぐ分かる事はもうないし、訓練でもしようよ」


 ネイベルは、ボンが動く所を見たかった。訓練組が散々可愛がっていたが、その理由がはっきりと分かってしまった。どこか憎めない感じがとても良い。


「よし、そうすっか。ボン、こっち来い!」


 棍棒を手にしたボンは、今までよりも機敏に動いている気がする。


 そして嬉しそうにこちらへ走ってきた。


「なんだか可愛いわね。それにとっても綺麗な色だと思うわ」


 リンは今日も蝶の髪飾りを付けながら、カルーダとボンの訓練を見ていた。


「みんなはどれくらいで起きそう?」


「魔力を使い切った人はいなかったから、今回は期間を伸ばしても意味がないのよね。ただ、相当強い魔法だった様だから、十日は見ておいたほうがいいわ」


「ずっと鍛え続けていたんですもの、良い休養になるわよ」


 ミネルヴァは、もう座りながら本を読んでいる。


「じゃあ、俺も鈍らない様に少し訓練に参加してくるよ」


 穏やかな風が吹く草原の一角で、カルーダとボンと一緒に汗をかきながら、しばしの休養となった。






 あれから最初にマリーが目を覚まし、ネイベルと魔法の訓練をしている間にショウが目を覚ました。


 そのままジン達も次々に目を覚ましていくと、およそ二週間にも及んだ休養は、ついに終わりを告げた。


「それにしても、惜しかったわねぇ」


 マリーが言うには、イッカクというのは魔獣や怪物の中でも、鋭い角を一本持った存在をまとめて大別した呼び方に過ぎず、正確には個別に色々と呼び名があるらしい。


 その中でもあのイッカクは、ヒカクと呼ばれていて、ダンジョンにしか生息を確認出来ていない、非常に珍しい怪物だったそうだ。


 取り分けあの立派な角は、武具を始めとした様々な用途で使う事が出来て、国宝級の価値があったらしい。ミネルヴァが言うには、既にボンの中に吸収されてしまった様だし、もう色々と手遅れである。


 国宝級のお宝を飲み込んだのだ。これからは、ボンさんと呼ぶべきかも知れない、とネイベルは思った。


「それじゃあ、そろそろ出発しよう。宝箱が無かったのは残念だけど、良い戦闘訓練になったよ」


「ネイベルさんは、昏倒してないからそんな事が言えるんですよ」


 ライズとセットが口々にそう言うと、みんな苦笑いをしていた。






 現在は、地図の残りを上手に埋めながら、階層を登る壁の穴まで進んでいる所だ。


 埋めきった段階で、この空間の九割程度は探索済みとなる。


 さらに、怪物への対応などは、全てネイベルが指示を出すことになっている。カルーダとロンメルに駄目出しをされながら、ネイベル自身も勉強中だ。


 リンとミネルヴァ、ネイベルとマリーを護衛対象と仮定して、順番に隊形を変えながら進んでいる。


 ちなみに、なぜかそこへボンさんも組み込まれている。組んだ相手をうまく助けてやるのも訓練になるんだとか。ボンさんは、いつだって無邪気に駆け回るので、全員対応に四苦八苦していた。






「おぉ、これが上層への階段があるっていう壁の穴か。なんか想像と違ったな。もっとなんというか、こう、な?」


「何となく言いたい事は分かるけど、これが現実だから」


 ネイベルはそう言って階段を上り始めた。隊形を組んで歩けるほど広くないので、ここは適当に二列に並んで進んでいく事になっている。背後では、思い思いに感想を言い合っている声が聞こえてきた。


「オレも想像してたのと違ったな」


「そうですか? 俺達兄弟は、こんなもんだって話していた所ですけど」


「上れたらそれで良い」


「広域型ダンジョンを、こんなにしっかり探索できるパーティーなんて、あまり存在しないだろうしな」


「ネイベルなら一瞬でブラックマーケットも牛耳っちゃうんでしょうね」


 マリー組とアルが一緒になって雑談している。聞き慣れない単語も飛び交っている。


「次の空間はどんな所だろうね」


「さぁどうだろうな。俺の楽しみは、あいつらを鍛える事だからな。厳しい環境のほうがありがてぇくらいだ」


 カルーダのまとう雰囲気は、近頃少し変わった気がする。


 随分と長い階段を上りきると、訓練を兼ねて金属製の鎧をつけたままの何人かは、かなりへばったみたいだ。


 そして出口から広がる光景は、彼らの気分を更に憂鬱とさせる事になった。


「なんですかこれは……」


 ショウが、げんなりとした風に言った。


「これは初めて見る空間だな」


 ネイベルはそう答えた。


 目の前の空間では、荒れ狂うような大雨が降り注ぎ、風が吹き荒び、そこらじゅうに雷が落ちている。


 ゴロゴロと響く雷鳴が、ずっと止まない。


「痺れる展開ね!」


 リンは笑顔でそう言った。




冗長になった感はありますが、とりあえず次の空間へ。

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