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第十章 夢
その夜。
俺は久しぶりに、あの夢を見た。
暗闇。
あの男が立っている。
「久しぶりだな」
俺は怒った。
「お前は誰なんだ」
男は答えない。
「俺に約束したよな」
「ああ」
「努力すれば、望みを叶えるって」
「ああ」
「俺は、何度も努力した」
「知っている」
「家業も頑張った」
「知っている」
「家族も守ろうとした」
「知っている」
「それなのに、全部失った」
男は静かに言った。
「失ったのではない」
「じゃあ何だ」
「手放したものもある」
俺は黙った。
男は続けた。
「お前が一番欲しかったものは何だ?」
俺は答えた。
「愛されることだ」
「違う」
「家族だ」
「違う」
「金か?」
男は首を振った。
「違う」
そして男は笑った。
「お前が本当に欲しかったのは」
一歩近づいた。
「自分の人生を、最後に肯定してもらうことだ」
俺は何も言えなかった。
「良い人生だったな」
「そう言ってもらいたかったんだろう」
男の声が遠くなっていく。
「だから言った」
「一番望むものは、叶えてやれないかもしれないと」
「なぜだ……」
「それは、お前自身が決めることだからだ」
目を覚ますと、朝だった。
俺は布団の中でしばらく天井を見つめた。
そして笑った。
「そういうことか……」




