第八章 告白
ある夜。
優花が、自分の過去を話した。
「私ね、昔から結構年上の人が好みなの」
「そうなん?」
心の中で嬉しいような安堵したような気がした
俺は黙って聞いていた。
「でもお父さんとは
最近うまくいかなくて、、、」
「お母さん、昔すごく好きな人がいたんだって」
「へえ」
「でも、その人とは結婚できなかった」
俺は笑った。
「そんなこと、よくある話やろ」
「うん。でもね……」
優花がグラスを置いた。
「その人のこと、
忘れられなかったみたい」
俺の胸がざわついた。
「その人の名前、知ってるん?」
優花は答えた。
「うん」
少し間を置いてから、
「あなたと同じ名前」
俺の手が止まった。
「……俺と?」
「そう一輝」
優花は笑った。
「変な偶然だよね」
俺は笑えなかった。
「お母さんの名前は?」
優花が答えた。
その名前を聞いた瞬間。
俺の世界から音が消えた。
優花 ゆうか
昔の恋人。
あの日、自分が手放した女性。
その優花だった。
「なんでお母さんの名前を?」
「可愛いでしょ?わたしこの名前好きなの、
本名は 真理」
「……まさか その名は俺が娘ができたら
つけよう言ってた名前だった。」
俺は立ち上がった。
「お母さんの昔の写真、持ってる?見せてもらえるか」
優花真理はスマートフォンを取り出した。
一枚の写真。
若い女性。
笑っている。
間違いない。
優花だった。
俺は椅子に座り直した。
「どうしたの?」
優花真理が心配そうに聞く。
俺は答えられなかった。
ただ、昔の恋人の顔と、目の前にいる女性の顔を見比べていた。
似ている。
似ているどころではない。
娘だ。
そのとき、優花真理が言った。
「そういえば、お母さんが昔言ってた」
「何を?」
「自分には、若い頃に一人だけ、本当に好きだった人がいたって」
喉が乾いた。
「その人との間に……私が生またんだって。」
時間が止まった。
「子どもができたかも?」あの言葉が甦った。
「……え?」
優花は続けた。
「でも、その人は私が生まれる前に、お母さんの前からいなくなったらしいの」
「お母さんはシングルマザーでわたしを育てるつもりだったんだけど、お父さんが熱烈にアタックしてきて結局結婚したんだって。」
俺は何も言えなかった。
やがて、震える声で聞いた。
「優花さんの本当のお父さんはどこに?」
「知らない」
「知らない?」
「お母さんは教えてくれなかったの」
俺の胸に、嫌な予感が走った。
そして彼女は笑った。
「でもね、お母さんが一度だけ言ったことがある」
「……何を?」
「私のお父さんは、きっと元気にしてるって」
その時会話に違和感を感じた何故過去形?
「ところでお母さんはどうしてるの?」
「三年前に死んじゃった、病気で、だから東京に来たの。そしてお母さんと一緒にいたくて
お店では 優花」
俺は立ち上がった。
そして店を出た。
涙があふれた。
「あの時、結婚すれば幸せになるんじゃなかっ
たのかよ!
何故ちゃんと俺に言ってくれなかったんだ!」
心の中で叫んだ!
夜の東京。
人の波。
ネオン。
車の音。
すべてが遠く感じた。
俺はその夜、一睡もできなかった。




