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学校の裏山、人が滅多に立ち入らない茂みの奥に、その銀色の物体はひっそりと隠れている。
周りの景色に溶け込む特殊な膜に覆われた小型の宇宙船。
それが、クラス委員長として毎日学校へと通う少女、五十鈴ヒカリの家である。
ヒカリの故郷は、この星から遠く離れた位置にある星で、任務はまだ文明が遅れているこの星の生命体を調査すること。
ヒカリ自身、自分の故郷は宇宙でも屈指の頭脳を持った星だと信じている。
その証拠にヒカリは自身に対する精神干渉を「精神干渉遮断」で防ぐ事が可能だからだ。
宇宙船の中にあるデスクには、分厚い参考書とノートが山積みになっている。
ヒカリはこの星の勉強に手を抜かない。
学年でもトップクラスの成績を維持しているのは、宇宙のハイテクな道具を使っているからではなく、単なるヒカリの「努力」の結果だ。
エリートを自負するヒカリにとって、テストで悪い点を取ることは、自分の星のプライドを汚すことと同じ。
だからこそ、夜遅くまでペンを走らせ、この星の知識を一つずつ自分のものにしていった。
そんなストイックなヒカリが、今一番注目している「調査対象」は、教室の中にいた。
翌日、ヒカリの教室。
ヒカリは隣に座るカズヤをじっと見つめていた。
ノートには数学の公式が並んでいるが、その隅っこには細かな観察日記が書き込まれていく。
(……間違いない。高木君も、私と同じように正体を隠している異星人に違いないわ)
ヒカリの目には、ただ進路が決まらずにぼーっとしていカズヤの姿が、何か重大な使命を背負った孤高の異星人に見えていた。
更に、カズヤがふと窓の外を眺めれば「重力の乱れに気づいたのかしら」と緊張し、隣の席の友達と笑い合っていれば「なんて完璧な偽装なの」と一人で驚嘆していた。
カズヤ本人が知らないところで、ヒカリの中でのカズヤは高度な文明を持つ謎の異星人として、うなぎ登りに上がっていた。
ヒカリによる的外れで熱心な「観察」は、今日も放課後のチャイムが鳴るまで続いていくのだった。




