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放課後の校門前。
夕暮れに染まる校舎を背にカズヤは深いため息をついた。
隣には当然のように自分の腕を掴んで離さない「妹」のレナ。
そしてその数歩後ろには金髪を揺らしながら恨みがましい視線を送ってくる転校生のルルがいる。
二人はこの星の環境に合わせてお互いを「レナ」「ルル」と名前で呼び合うようにしていた。
だが、その距離感は決して縮まってはいない。
それは、今のルルは任務であるレナのデバイス回収どころか、自身のデバイスがロックされるという事態に陥っている。
そのため大胆な行動がとれず、隙あらばとレナのデバイス回収を行う為レナに付きまとっていた。
カズヤが、背後にべったりと張り付くルルに警戒しながら家に帰ろうと歩き出そうとした、その時だった。
「待ちなさい、高木君! 今度は何を企んでいるの!」
最近なにかと理由をつけてカズヤに付きまとうクラス委員長の五十鈴ヒカリが鋭い声とともに猛然とダッシュしてきた。
ヒカリは必死の形相でカズヤを睨みつける。
彼女の目には、レナやルルはただの可憐な地球人の少女にしか映っていない。
だからこそ、自分と同じく、この星以外の生命体とおもっている、カズヤがその強大な力で彼女たちをたぶらかしているのではないかと本気で心配しているのだ。
(また委員長はなにを言ってるんだ…)
カズヤが困惑していると、下等生物を見下すような冷たい表情をしながらルルが口を開いた。
「何ですか、この低知能個体は。ギャーギャーと耳障りな……レナ、この個体の脳を再構築していいですよね?」
ルルが無表情のまま物騒なことを呟く。
すると、それまで黙っていたレナの瞳が冷たく光った。
「……兄さんの許可なく低知能生命体への不必要な干渉は認めません……それから五十鈴ヒカリさん。兄さんは何もしていませんので邪魔をしないでください」
「えっ? 既にこの二人は精神支配を受けてるっていうの!? 高木君……なんて恐ろしい力なの!」
レナの至極まっとうな否定すら、ヒカリの脳内では「逆らえないほど強力な暗示」へと変換されている。
「いや、妹って前にも言ったよね?」
カズヤの言葉も虚しく、校門前では宇宙人っぽい妹と、宇宙人と思しき転校生、そして宇宙人感を隠さない委員長が火花を散らし続ける。
通りかかる生徒たちがニヤニヤしながらこちらを見ているのが分かった。
夕闇が迫る校門前、収拾のつかない三人の少女を眺めながら、カズヤは自分の平穏が完全に消え去ったことを確信した。
静かだったはずのカズヤの日常は、どうやら今日、完全に崩壊したらしい。
第一部 完
第一部完です。
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