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漆黒の宇宙空間。
カズヤがいる星の衛星軌道上に、音もなく浮かぶ一基の小型転送ポッドがあった。
その内部で、一人の少女が静かに目を開ける。
彼女の識別コードは「R-ULU-8215-3044」。
先に派遣され、消息を絶った調査官「R-ENA-7341-9928」の胸元に埋められているデバイスの回収任務としてやってきた。
ポッドのメインシステムが無機質な音声を響かせる。
『前任個体R-ENA-7341-9928の最終ログを確認。原因:高濃度塩分による機能停止。ステータス:死亡・紛失。これより当該ユニットに埋め込まれたコア・デバイスの回収任務を開始する』
「了解。コア・デバイスの回収を継続します」
彼女は短く応えると、自身の胸元を軽く押さえた。
そこにはあらゆる物理法則に干渉するための演算デバイスが埋め込まれている。
彼女はこの星の言語体系をスキャンし、自身のコードから「ルル」という響きを抽出して、この星での仮の名とした。
R-ENA-7341-9928が「海」というイレギュラーで脱落したことを踏まえ、ルルは慎重に転送座標を設定する。
「R-ENA-7341-9928のような初歩的なミスは犯しません……計算外の事態など、存在してはならないのです」
転送シーケンスが開始され、彼女の体は光の粒子となって地表へと降り立った。
着地場所は、商店街の裏路地。
完璧な計算に基づいた、誰にも見られるはずのない座標。
だが、ルルがそこで目にしたのは、死亡判定されたはずの前任者 R-ENA-7341-9928が、この星の原住生物である少年と並んで歩く姿だった。
「R-ENA-7341-9928の生存を確認……」
ルルにとって、R-ENA-7341-9928の生存は「あってはならないエラー」だった。
しかし、ルルにとって任務変更はありえない事なので任務を継続する。
ルルは無表情のまま、二人を追跡を開始。
目的は、R-ENA-7341-9928に埋め込まれているデバイス回収。
(……R-ENA-7341-9928が生存していても問題ありません。直ちに回収シーケンスを実行します)
夕日に染まる商店街。
ルルは胸のデバイスを起動させ、世界から「音」を奪う命令を実行したのだった。




