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放課後の帰り道。

夕日に照らされた商店街は、買い物客や部活帰りの学生で賑わっていた。

カズヤは隣を歩くレナに、今日の夕食のリクエストをしようとした、その時だった。


世界から突然、音が消えた。


自転車のベル音、赤ちゃんの泣き声、おばちゃんたちの話し声。

それら全てが、まるで不意に電源を切られたかのように無音になる。

行き交う人々は、まるで石像かのように静止していた。


そんな中、カズヤとレナだけは影響を受けてはいなかった。

この星の人類で今動いているのはカズヤだけ。

それは、レナが事前にカズヤに施していた目に見えない「防御壁」のおかげ。


「おい、レナ。これ、またお前の仕業か?」


カズヤの声だけが、無音の空間に虚しく響く。

だが、レナはカズヤの方を見ようともせず、前方の一点を見つめていた。


その視線の先には一人の人影がみえる。

一人の少女がこちらへ向かってゆっくりと歩いてくる。

それは、レナと同じく、感情を削ぎ落としたような美少女だった。


彼女はレナから数メートルの距離を保って立ち止まると、じっとレナを見つめた。

二人はピクリとも動かない。

彼女たちは胸元に埋め込まれた不可視のデバイスを通じて、常人には理解できない速度で「情報合戦」を繰り広げていた。


(何だ、あいつら……睨み合ったまま一向に動く気配がないな)


ただならぬ気配を感じたカズヤは、とにかく間に入ろうと慌てて駆け寄った。

だが、焦っていたカズヤは派手に足をもつれさせた。


「あ、どわぁっ!?」


重力に抗えず、前のめりに倒れ込む。

反射的に目を閉じ、硬い地面に叩きつけられるのを覚悟した、が。


「……んぐっ!?」


顔面を包み込んだのは、コンクリートの冷たさではなく、驚くほど温かく、そして柔らかな弾力だった。


(……え? 何これ、柔らかい……)


カズヤはほんの数秒、その柔らかな感触を無自覚で堪能していた。

カズヤの顔が埋まった場所は、その見知らぬ少女の胸元だった……


カズヤがその「女子特有の質感」に脳をショートさせていると、頭上から氷のように冷たい声が響いてきた。


「この星の生命体は低知能で野蛮なようですね。まさか、演算にリソースを()いている隙を突いて物理的な肉弾戦を仕掛けてくるとは……低知能生命体の行動は予測困難です」


少女は無表情のまま、胸元に顔を押し当てられた格好のカズヤを見下ろして呟いた。

羞恥心や怒りよりも、純粋に「理解不能な行動」として分析しているようだった。


だが、その背後、もっと恐ろしい「静かな怒り」が、カズヤの背中に突き刺さる。


「……兄さん。その個体は、私からデバイスを回収しに来た者です……そんなに長く埋まって、一体何を調査しているのですか?」


レナは無表情な顔をしながらも、底知れぬ怒りを露わにしている。

カズヤは言い訳をするべく少女から離れようとした瞬間。

レナはカズヤに向けて、容赦のない「防衛用高圧電流」を放った。


「ほぎゃあああああああっ!?」


激しい火花が散り、カズヤの体が派手にのたうち回る。

だが、密着していた少女にも、その電流は「とばっちり」として直撃した。


「……あ、が……っ!?」


ルルに一瞬の隙が生じる。

レナはその機を逃さず、ルルのデバイスの制御権を強奪。

無音の世界が崩壊し、街に日常の音が戻ってきた。


「くっ……」


痺れた体を引きずりながら、少女は屈辱に満ちた表情(無表情)でレナをみつめる。

しかし、レナは少女を気にも留めず、カズヤに向かって歩みだす。


「……兄さん。異性対象への接触行動を再検知した場合、強制的に行動を制限します」


「ご、ごめんなしゃい……」


カズヤは黒焦げになった頭を押さえて、必死に謝罪をした。

そんなカズヤの目には無表情のレナが嫉妬で怒ってるように映っていた。

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