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日曜日の午後。

カズヤはレナを連れて、駅前の映画館へとやってきた。

話題のSF映画を観るためだ。


「いいかレナ、今日は映画だ。ポップコーンを食べて、静かに画面を観る。たまにはこういう『普通の兄妹』っぽい休日も悪くないだろ?」


カズヤの言葉に、レナは無表情に頷いた。


「分かりました。非効率な娯楽への対応を開始します」


(相変わらず可愛げのない言い方だが、まあ静かにしててくれればいいか……)


上映開始から15分。

広大な宇宙空間を舞台に、最新鋭の戦艦がワープ航法を披露する迫力のシーン。

カズヤがワクワクしながら身を乗り出したその時、隣に座るレナがそっと耳元に口を寄せた。


「……兄さん。今の加速と燃料の噴射量が合っていません。この宇宙船、物理法則を無視しています。不自然です」


「……映画なんだから、そこは『すごい技術』で解決してるんだよ!」


小声で(たしな)めるカズヤ。

しかし、レナの「指摘」は止まらない。

物語中盤、謎の仮面の男が登場し、主人公たちを窮地に陥れる展開。

劇場内が緊張感に包まれる中、レナが再び淡々と告げる。


「兄さん。あの男の歩き方と声の波形で分かりました。冒頭で死んだはずの親友と同一人物です」


「……いや……言うなよ……」


カズヤはポップコーンを握りしめ、天井仰いだ。

極めつけはクライマックス。

主人公が「愛の力」で絶体絶命のピンチを脱し、奇跡を起こす感動のシーンだ。

周囲からは鼻をすする音が聞こえてくるが、レナだけは首を傾げていた。


「……兄さん。愛で物理法則を書き換えるのは、論理的に破綻(はたん)しています。最初からやり直すべき案件ですね」


「いや、いいんだよ! 愛は理屈じゃないんだ!」


上映終了後。


明るくなった劇場から出てきたカズヤは、魂が抜けたような顔でベンチに崩れ落ちた。


「1,800円払って、開始早々にネタバレを突きつけられる苦しみ、お前には分からんよな……」


「兄さん。私には理解できません。結末が分かっていることに、なぜ二時間も費やす必要があるのですか?」


肩を落とすカズヤに対し、レナは追い打ちをかけるように、淡々と映画の矛盾をすべて修正し、論理的に完璧な「正しいエンディング」を解説すると言い出した。

カズヤは溜め息をつきながら、しばらく映画館に来ることはないだろうと思っていたのだった。

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