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雲一つない快晴の午後、カズヤは体育の授業を行っていた。
グラウンドでは、男子はサッカー、女子はドッジボールの試合が行われようとしていた。
数学のテストで赤点を叩き出し、委員長のヒカリにバカにされたカズヤにとって、ここは唯一の名誉挽回の場だった。
その頃、1年の教室では。
レナはいつものように、カズヤの監視を行っている。
レナはカズヤの心中を察すると、何やら小声でつぶやいた。
その瞬間、カズヤの全身を熱い衝撃が駆け抜けた。
足が異様に軽く、指先まで力がみなぎっている。
昨日の「全能感」が、今度は肉体的な確信として戻ってきた。
そして、試合開始のホイッスルが鳴った。
カズヤがボールを奪い、軽く一歩踏み出した瞬間、足元の土が爆ぜた。
「はぁっ!?」
視界が結構なスピードで流れていく。
軽く走っているつもりなのに、周囲の生徒たちがスローモーションに見えるほどの加速。
「う、うわーっ! なんじゃこりゃーっ!!」
ゴール前、カズヤは反射的に放ったシュート。
放たれたボールはソニックブームを巻き起こしながらゴールネットを突き破り、そのまま裏の防球フェンスを派手に凹ませて止まった。
静まり返るグラウンド。体育教師は持っていたホイッスルを地面に落とした。
そして、ドッジボールをしていたヒカリもそれを目撃していた。
(高木くん、あれほど言ったのに体育の授業で能力を行使するなんて……)
ヒカリは例によって、カズヤが能力を使っていると勘違いしている。
レナがカズヤに施した「ブースト」は、授業終了まで完璧に持続した。
その間、カズヤの体は本人の意思とは無関係に、超人的な負荷でグラウンドを駆け回り続けたのだった。
翌朝。
カズヤは自室のベッドの上で、一ミリも動けずに絶叫していた。
「い、痛え……! 全身の筋肉が……ちぎれる……!!」
指先一つ動かすだけで、全身を雷が走るような激痛。
レナの処置によって、普通の高校生の骨格が耐えられる限界を超えた動きを強制されたツケが、一気に回ってきたのだ。
そこへ、レナが着替えを持って、無機質な表情で入ってきた。
「……兄さん。筋繊維が異常なまでの悲鳴を上げています。昨日の出力設定、骨格の強度が追いついていなかったようです……次はブーストに耐えうる肉体へ再構築を行います」
「いや……頼むからもう俺の体に変な事しないで……」
カズヤの魂の叫びは、喉の筋肉痛のせいで、かすれた掠れ声となって消えていった。




