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あの日から数日が経過した。
カズヤは放課後の校門付近で、レナの「再教育」の結果を確認しようとしていた。
あの片言で不気味な無機質モードのままでは、いつか通報されかねないと考えたからだ。
「んで、レナ。例の『普通の女子高生っぽい喋り方』の件だが、少しは形になったか?」
カズヤの問いに、レナは瞬きもせず、しかし以前よりも滑らかな口調で答えた。
「……兄さん。お待たせしました。前回の出力エラーを猛省し、ネットワーク上の膨大なコミュニケーションデータを解析・適用。最新の女子高生(JK)プロトコルをインストール済みです」
まだ若干、変な言葉を使ってるのを気にするカズヤ。
だが、たどたどしさが消え、完璧な発音になったレナに、カズヤは安堵の胸をなでおろした。
「お、おぉ……以前よりだいぶ普通になったな。何を参考にしたんだ? 流行りのSNSとかか?」
「いえ。この星の若年層女性が日常的に使用する匿名掲示板のログを全件スキャンし、頻出語録を抽出しました」
カズヤの背中に嫌な汗が流れる。
「それ……なんて掲示板だ?」
「『裏・女子高生の本音スレ(閲覧注意)』および『特定班総本部』です」
分かりやすく、うなだれるカズヤ。
「それ完全に参考にするサイト間違えてるから!! そこ、一番女子高生から遠い場所だぞ!」
「……? 掲示板の統計によれば、これが『標準的な情緒』と定義されていましたが」
レナは無表情に首を傾げる。
「ネットの深淵を、あたかも標準かのように統計に組み込むな!」
そして、カズヤは頭を抱える。
よりによって、ネットの深淵にある毒を「標準」だと勘違いして学習してしまったらしい。
「いいかレナ、その掲示板に出てくる言葉は全部忘れろ。絶対に人前で使うなよ。いいな、絶対にだぞ!」
「了解しました。ですが……兄さんに接近する低知能体を確認しました」
レナが視線をカズヤの背後へと向けた。
嫌な予感がしてカズヤが振り返ると、そこには手帳を構え、鋭い視線でこちらを射抜く委員長、五十鈴ヒカリが立っていた。
「……見つけたわ、高木くん。放課後の密会かしら?」
ネットの毒に汚染された妹・レナ、そして、カズヤを監視するために尾行してきたヒカリ。
ついに、宇宙人のような感じがする妹と、この星の生命体に擬態してるちょっとアレな宇宙人が、校門の前で正面からエンカウントしたのだった。




