第8話 街は魔術で溢れていました。
「……また来る。」
魔術書店を出る直前、俺は振り返りながらそう呟いた。名残惜しいが、仕方ない。明日来るとしよう。
ヤバめの部屋があったからそこにも行こう。何があるか楽しみだなぁ。
「ああ、待ってるぜ坊主!」
店主のおっさんが豪快に笑いながら手を振る。
とてもいい店だった。
魔術書が沢山ある。豪快な見た目の割には、本棚内がとてもきれいに整頓されていて、目当ての魔術をすぐ見つけることができた。とてもいい!
それに、魔術好きのおっさんもいる。次来るときは魔術についてもっと語り明かすとしよう。
あぁ、住みたい。住みたすぎるぞ。俺にとって天国だ。やっぱり戻りたくなってきたな…
「戻らないし、住まないでね?」
「なんで分かった!?」
「顔見れば分かるよ!」
思考盗聴だ。間違いない。恐るべし王都。
恐るべしニーシャ流石は無詠唱の使い手だ。
しかし、思考盗聴なんてそんな危険な魔術まで存在するとは。
「いや存在しないからね?」
ニーシャが呆れたようにため息をついた。
だが、今はそんなことよりも――
「次どこ行く?」
「切り替え早っ!?」
「次なる魔術が俺を待ってるからね!待たせるわけにはいかないよ!」
本は本。次は次。まだ、魔道具とか空飛ぶ船とか、いっぱいあって、王都にはまだまだ見たことのない魔術が山ほどあるのだから。
「うーん、そう考えたら、次行くならとこがいいだろうか?」
「でしたら、魔道具街はいかがでしょうか?」
ナタリーがそう提案する。ほお、魔道具街…
ん?魔道具街?
なんだその素敵な響きは。魔道具の街だと…そんなの魔術に溢れてるに決まってる。よし
「行こう。」
「即答だね……」
当たり前だろう。
魔道具だぞ?
行かない理由がない。むしろ行かなければ魔術に失礼だ。
しばらく町中を観察しながら歩くと、通りの雰囲気が変わり始めた。
両脇に並ぶ店。
そのどれもが見たこともない道具を取り扱っている。
「おお……」
再び感嘆の声が漏れる。
店先には小さな箱。一体何なんだこれは、気になりすぎるぞ
その箱からは冷気が漏れ出しており、近くに行って、よく調べてみると、魔術に水の温度を下げる術式が込められており、擬似的に氷魔術のようなものを再現している。しかし、何に使うんだ?
「これは?」
「保存用魔道具ですね。」
「保存用?」
「食材を長持ちさせるんです。」
「えっ。」
俺は固まった。魔術ってそんなことにも使えるのか?乾燥させて、保存するのは知ってるけど、まさか凍らせても保存されるというのか!?しかもそれを、術式を変えて魔術を再現してるのがまた素晴らしい!
やはり、戦うだけじゃないのが魔術。
それもまたいい!!
「やっぱり生きてれば生活が重要になってくるからね。」
「そうだよなぁ。分かってるじゃないかニーシャ。ノエルポイント1を贈呈しよう。」
「えーいらないよー」
いらないとは何だいらないとは。全く失礼だな。
まあ、魔術は人を傷つけるためだけのものじゃない。
生活を豊かにするためのものでもある。やはり
「……深い。」
「何その反応。」
「さあ、行こう。」
「だから、切り替え早いね!?」
「お嬢様行きますよ!」「え?え?」
さらに歩く。
今度は勝手に床を掃除している箒を見つけた。
「おー箒が動いてる。」
「掃除用魔道具ですね。」
「すごい。」
どんな仕組みで動いてるんだ?近くに行って調べたいけど
その隣では火を使わずに調理している屋台。
反対側には光球を浮かべて商品を照らしている露店。
どこを見ても魔術。
どこを見ても新発見。
王都最高じゃないか。しっかし、これ内部に術式と魔法陣あるから分解したいな…
「なあニーシャ。」
「何?あーその顔は言わなくても分かる。分かるから止まろう?」
「まだ、何も言ってないよ?」
「だから、見たらわかるんだって!!」
「ちょっと、ちょっとだけだから!」
「ナタリー止めて!」
「了解しました。」
ガシッ!と抱きかかえられて身動きが取れなくなる。
結界を使えば抜け出すのは容易だが、ナタリーとニーシャが切実な顔でこっちを見てくる。まあ、俺は自重が出来るからね。今は大人しくしておくとしよう。
しかし、本当にここは夢の国だ。
魔術好きにとっての楽園だ。魔術の為のような国だ。
もっと、もっと見た回りたいな。
その時だった。
通りの向こうから大きな歓声が聞こえてくるが、何かやってるのだろうか?
「おおー!」「そこだ!」「あぁーー」
「何やってるんだ!!」
「やったぞ!」「決めろー!!」「炎!炎!炎」
「流石だ!」「惜しい!」
「「「「「おおおお!!!!!」」」」」
顔を向ければ路地が埋もれるほどの人だかり。
何かが起こるたびに歓声が沸く。
そして――
強い魔力に、魔力が霧散しては、また、魔力が起こる。
「……あれは?」
俺が指を差すと、ナタリーが答えた。
「どうやら魔術師同士の模擬戦のようですね。」
「模擬戦。」ねぇ、模擬戦かーー
「興味ありますか?」
あー駄目だ、そんなのあるなんて、知ってしまったら
俺は数秒考えた。いや、考えるまでもなかった。
「もちろん。行くしかないよね!!」
王都観光はまだまだ、始まったばかりだ。
さあ!次は魔術が飛び交う模擬戦。何が起こるかめちゃくちゃ楽しみだ!
出すまでもない答えを出した俺は、人だかりに向かって全力で駆け出すのだった。
何か問題を起こさないと気が済まないノエル(無自覚)は次は何をやらかすのやら、、、
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