第9話 模擬戦を観ます。
さっきから、人混みをかき分けてるが、一向に目の前が開ける気がしない。
「...人多すぎるだろ。あ、でも前が開けてきた!」
「だから、待ってって、やっと追いついた。」
ニーシャがはぁはぁと肩で息をしている。
「ふぅ…」
ナタリーも呼吸が乱れたのか息を整えていた。
「おお...」
目の前には50mくらいの石造りの舞台みたいな所に、周り沢山の人が囲んでおり、野次を飛ばしたり応援したりしているが、俺が特筆している所は、何と言っても周囲に幾重にも刻まれた巨大な魔法陣だ。
その外側を半透明な結界もどきが覆っている。
「す、すごい。この魔法陣と術式を調べたすぎる。
でも、ここはどこなんだ?」
「ここは演武場です。普段は訓練や新人育成などのために貸し出してますが、こういった模擬戦や試験の際にも使用しますね。」
俺の誰に問いた訳でもない問いにナタリーが答えてくれる。
ふむ、なるほど。訓練や新人育成に貸し出すね...それなら俺が魔術を調べたりするために貸し出したりすることもできるのだろうか。
「魔術調べたりするのにも、貸し出すことっていいの?」
「いいと…思いますけど。基本的に他人の邪魔しなければ、いいと思いますよ。」
良いのか!やったぜ。今度ニーシャとナタリーに見せてもらおう。
お?そう言えば、この外周を覆っている結界もどきは、障壁魔術だ。それに、大規模化してるけど、元々の強度が落ちてないぞ。この障壁魔術を使ってる魔術師は、中々優秀な魔術師だな...絶対見つけて魔術見せてもらおう!
それも中級魔術程度では、傷つかない障壁魔術だ。
その障壁魔術の中では2人が向かい合っていた。
「始めぇぇ!!」
審判の声と同時に
[燃え盛る紅蓮の炎よ、その猛き力を我が身に宿し敵を貫け【炎系統中級魔術:火炎槍】!!]
轟ッ!!と音を立てる
巨大な炎の槍が、相対している緑ローブに向かって、一直線に飛んでいく。
「おお!!炎系統魔術!」
今魔術を使った赤ハットの男は炎魔術の使い手だな。...術式は変えてないシンプルな魔術だ。それに詠唱もありだ。
さて、緑ローブは何の魔術を使うのかな?どんどん魔術を使ってほしい!
[吹き荒れる風よ、その力で我が前の敵を穿て
【風系統中級魔術:旋風槍】]
風が収束して、一本の巨大な槍となり、火炎槍と衝突する。
ドォォォォォン!!!爆音を響かせながら2つの魔術は消滅する。詠唱が少ない風系統魔術だからこそ、後出しが成立する。しかし、それでは炎系統魔術のような火力を受け入れないから、射出の前に収束を重ね、中心で足りない火力を補う。素晴らしい!素晴らしすぎるぞ!
「いい!!もっといじって、いじって、いじりまくった魔術を見せてくれ!!」
「はあ、ノエルは本当に魔術オタクだね...
魔術はちょっと応用が出来ればいいでしょ、そんないじらなくても。」
「甘い!甘すぎるよその認識は!ニーシャこそあれだけ風弾いじってたのに、そんな事考えるなんて見損なったよ!」
「えぇ...そこまで言う?ナタリーだってそう思ってるよね?」
「まあ、ノエル様の言いたいこともよく分かりますが、ナタリー様の言う通りそこまで魔術をいじってしまっては別物になるのでは?」
「それがいいんだよ!」
「「ええ...」」
だからこそ、目が離せない。ほら今だって
さっきのシンプルの魔術では速さに劣る自分では勝てないと悟ったのか、赤ハットの男は趣向を変えだした。
「なるほど...」
「え?何が?」
ニーシャが不思議そうにこちらを見る。
「今飛ばしてる火炎槍は、ただの火炎槍じゃない。
中心だけ魔力密度を上げてる。だから、ほら」
さっき打ち消しあった結果とは違い、旋風槍の方が消えて、火炎槍だけ残る。
「でも、惜しい。緑ローブの詠唱が早く終わったために少し焦ったのか、術式の接続が甘い。」
「つまり?」
「あと、2節削れるし、崩れるよ。」
火炎槍も緑ローブに当たる直前で消える。
「………。」
ニーシャが驚いた顔でこちらを見つめてくる。
「それだけに緑ローブも惜しいな、
赤ハットの出だしを潰すために収束を無くしたんだろうけど、半節遅かった。」
「後手に回ったツケがきたな。まあ、安定性を求めたのかな。
へえ、なるほどねー。」
「いやいや、なるほどじゃないよ!」
「なんで見ただけでそこまで分かるの!?」
「ええ、驚きました。魔術の解析に遥かに優れていると思っていましたが、まさかここまでとは。」
「まず、他人の魔力回路なんて見えないし、魔術の魔力密度がどれくらいーとか分からないし付与された術式まで見えないよ!!」
「ねぇ、ノエルは一体――。」
その瞬間
「おい!」
周りが観戦を中断してこちらを見るくらいの大声が飛ぶ。
振り返ると真っ赤な髪をして勝ち気な表情をした青年が腕を組んで立っていた。
筋肉質で、両腕に炎みたいな入れ墨を入れている。
青年は炎系統の魔力回路をしていて、何より今戦っているやつと観戦者全員含めて遥かに多い魔力量。ナタリーよりかは多くないが、それを抜きにしても強大だ。
「今さっき言ってたこと、見て分かったのか!?」
「うん。」
「中々に面白いね。」
「面白いよな!?」
青年の目が爛々と輝く。
「あの火炎槍だぞ!」
「あぁ、魔力密度を高める。俗に言う中心圧縮のことだな。」
「そうだ!」
「でも、少し崩れてたね。」
「お、お前…」
「そこまで、見えてたのか!」
青年が目を見開く。さっきのニーシャの反応もそうだが、そこまで驚くことなのだろうか。
「いや、普通そこまで見えねえよ!」
「まあね。魔術が大好きだからね。」
「いやぁ、ここまで炎魔術のことについて話せそうななやつと出会えるとは…」
そう言って、勢いよく俺の肩を掴み至近距離でどデカい声を出してくる。なんだこいつ。魔術のことは好きそうだけどうるさいぞ
「すげえなお前!俺の名前はクラウス。」
「炎魔術が大好きな炎魔術師だ!よろしくな。」
((はあ...また、変なのが増えたよ。))
ニーシャとナタリーがため息をついて頭を抱えている。どうしたのだろうか?
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