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最強の相棒 〜弱い僕と弱い君で異世界最強を目指す〜  作者: グラミヤマ
第二章 剣呑なるダンジョン
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第二章10『楽な道へ』

 黒鉄の柵が開かれ、相変わらず光のない空間に二人は放たれた。

 今頃ベルカ達はどんな気持ちで待ち続けているのか、それを考えると罪悪感が止まらなくなってしまう。

 心配をかけているんじゃないか、待ちぼうけを食らって怒っているんじゃないか、ヒロトはエレベーターの中でずっとそれを考え続けていた。

 すぐにでも戻ってダンジョン探索を切り上げた方がいいのに、無数の恐ろしい穴に怖気付いた結果、こんな来て得もしないような暗闇に足を運んでいるのだ。

 そんな自分を、二人は心の奥底で情けなく感じている。


「進めば何かあんだろ……それに期待するしかねぇし」


 最早それしか縋る術もなく、二人は自ら未知と不安に満ち溢れた空間を進んでいく。


「床……土じゃなくてタイルだよね。 やっぱり誰かが造ったのかなぁ」


 大凡、ここはダンジョンの中層と言うべきか、エレベーターから先は石造りの床が続いており、とても自然に生まれた洞窟とは言い難い光景だった。

 職人か将又奴隷か、どんな人物がこれを作り上げたのか分からないことが不気味さを更に演出する。


「エレベーター、バカみたいに長かったよな。 地底人でもいんのかもよ」


「だったら僕達は地底人からしたら不審者になるね……」


「地下帝国に不法入国した俺達は捕まり、そのまま地下の牢獄で一生を過ごす……最悪なシナリオだな」


 固い石畳を踏みしめながら感じるのは足の疲れなどではなく、身体全体に溜まった披露や恐怖に手首を掴まれた心からの不安だろう。

 しかし、くだらない冗談を交わせているのを見ると、二人の精神状態はまだまだ余裕があるのだろうと伺える。

 

「この道が上に繋がってたらいいんだけど……」


 ダンジョンというのは驚く程に一本道が多く、二人はそれに従って進む他ない。

 選択肢が少ないのは感じるストレスが少なく済むのでそれは良いのだが、その一方で安全に上へと戻れる可能性も減らしているのだ。


「つうかさ、なんかこの辺熱くないか?」


 それは、突拍子もない発言というわけでもなく、二人がさっきから徐々に感じてきていたことだった。

 身体の疲れなどは関係なく、自然に汗が流れてくる感覚。 それは正しく辺りの熱さが原因だ。


「ダンジョンに来る前もこんな感じだったよね……上はもうちょっとひんやりしてたのにさ」


「その正体を突き止めるのも兼ねて進んでみようぜ。国が熱くなり続けるなんてたまったもんじゃないからな、解決できればハンターとして売名できんだろ」


 地上で感じた妙な熱気の原因が仮にこのダンジョンのどこかにあるというのなら、そんなことに首を突っ込んで無事でいられるとはあまり思えない。

 気乗りはしないが、ヒロトはひとまずそれに従って動くことにした。


「それを色んな人が信じてくれれば、ね」


 そんなことを口にしながら歩いていると、一本道の終わりを示す壁があった。

 その下にはまた地下へと続く螺旋階段が肌色の石で造られており、二人はそれを降りる。


 歩き心地の悪い階段を一段ずつ降りる度に、二人が感じた熱気は強さを増していく。

 犬ほどではないにしろ、口が自然に半開きになって熱い息を外へと逃がす。


「暑い……やっぱり戻って総当りした方がいいのかな……?」 


「我慢しろ、階段だってもうそろそろ終わるじゃねぇか」

 

 螺旋階段の先端は漆黒とも取れる色をした岩場に繋がっていて、二人はそのゴワゴワした床に足を踏み入れた。

 靴越しにでも分かるようなゴワゴワした感覚が微妙に気持ち悪く、無意識に足の指をグリグリと動かしてしまう。


「うわ……すごく狭いね」


「カニ歩きじゃねぇと通れなさそうだな」


 二人は壁と壁の狭い空間に体を入れて、カニ歩きで移動を始める。

 途中の曲がりくねった隙間も器用に体を動かして進んだ。


「あーあ、手が真っ黒だよ……」


 短い狭間の移動を終えて、壁に触れていた手を見ると尋常ではないほどに黒くなっていた。

 太ももを軽く叩いて手の汚れを落とそうとするが、これがなかなか頑固のようで、寧ろレギンスを汚してしまうだけだ。


「落ちないなぁ……脚は黒だから汚れが付いてもまだいいけどさ」


「それは炭だぜ。 俺の方向を見りゃわかる」


 マレッカの声が背中から聞こえて、ゆっくりと彼の言う通りにその方向を振り返ると、ヒロトは絶句した。


「なに、これ…………マグマ?」


 黒い手が黒だとはっきり見えたのは、マグマがもたらした明かりのおかげだったのだ。

 

「嘘でしょ……ほんとに?」


 彼が見ている光景はまるで悪魔の住処のようだった。

 辺り一面はほぼ全てがマグマに支配され、その真ん中に歪な橋が一本だけ設置されているだけなのだ。

 

「これと地獄の道、どっちが平和的だろうな」


「寧ろこれが地獄の道って感じ……!」


 極めつけは橋の外側に並ぶガーゴイル的な彫刻たちだ。

 これだけで警戒材料としては充分であり、ダンジョン側から危険を知らせてくれているとも取れるだろう。


「…………行くの?」


「五十の穴を虱潰しに探索するよりよっぽどマシだろ」


「別にこの先から上に出られるとは決まってないのに……」


 マレッカの自信はどこから湧くのか、とにかく不明だ。

 しかし、ヒロトがそれにケチをつけたり文句を言うことは無く、嫌々ながらも付いて行くのみだ。


 元の性格が臆病で小心者のヒロトは、前の世界でも気の強い人間に対してはあまり自分の意見が言えなかったり、怖気付いて関わることを止めてしまったりしていた。


(流される性格……いい加減直さないとなぁ)


 自身の欠点や至らない部分は自覚していてもなかなか直せないのが悲しいところである。

 ヒロトは誰にも聞こえないため息をつき、禍々しい橋を憂鬱な気分で渡った。

 



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