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最強の相棒 〜弱い僕と弱い君で異世界最強を目指す〜  作者: グラミヤマ
第二章 剣呑なるダンジョン
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第二章3『源泉不明の自信』

 少年、もといマレッカと呼ばれる彼に連れられて来た場所は、ヒロトが『黄金山』と呼んでいる場所の頂上だった。

 夕暮れも近づき、体力が底をつきそうなヒロトに対し、マレッカは余裕な表情で夕日を眺めている。


「マレッカ……だったよね? 今更なんだけどさ、なんで僕をこんなに連れ回したの?」


 しっかりと付いてくるヒロトもヒロトだが、何一つ面識のない相手にこうも連れ回されてはそういった疑問も当然出てくる。


「貴様が哀れだったからな。 この俺様と依頼を受ける権利を与えてやったんだ」


 あまりの高飛車な返しにヒロトは黙った。 その美貌から発されるその台詞は一部の人間には堪らないのかもしれないが、ヒロトはそうではない。


「どうせ貴様も独りなんだろう?」


「独り?」


「ああ、孤独となった理由は違うだろうがな」


 マレッカはヒロトの目を見てそう切り出した。 自分と同じ孤独な人間がギルドで哀れに立っていた、そう思ったらしいのだ。


「マレッカはどうして独りなの?」


 ヒロトは素直に聞きたいことを聞いた。 彼が独りであることと、その高飛車な性格が何か関係しているのではないか、なんて考えたからだ。

 率直な疑問を受けたマレッカの表情は一瞬固くなり、ほっぺを小さく震わせてその理由を話した。


「この俺様の実力を誰一人認めなかったからだ……!」


 ヒロトは察した。 性格のせいだと。

 彼はきっと狩人隊に入りたがっていたが、その性格のせいで門前払いを受けまくっていたのだろう。


「そっ、そうなんだ……ハンター? 確かに辛いよね……?」


 こんなタイプの性格をした人間と関わったことがないヒロトは反応に困り、言葉が途切れ途切れになってしまう。

 マレッカは強く握りしめた拳を顔の前に近づけ、それを震えながら睨み続けていた。


「でもギルドの時なんてすごかったよ! 一瞬であの大男を倒したじゃない!」


「力なんてどうだっていい! 天才のはずなんだ……『指南者』としてな!!」


 『指南者』の役目はハンターに知識と技術を与えることだ。 どうやらマレッカはその仕事を目指しているらしい。


「マレッカは隊に入りたくてメルタリアに来たってわけなんだ」


「そうだっ! わざわざ故郷からこのチンケな街に来てやったというのに奴らは……!」


 その酷く高飛車な性格を直さないことにはマレッカの願いが叶うことはないだろう。 そのことを自覚していないことも酷く愚かしい。

 

「だったらさ、僕と組まない?」


「えっ……」


 突然の提案にマレッカは驚き、声を漏らした。 偉そうな態度を忘れたかのような反応にヒロトはニコリと笑顔を見せ、話を続けた。


「君がその指南者としてどれだけ優れてるかは分かんないけどさ、その……君と組みたいなって思ったんだ」


「俺を……俺と組むのか?」


「うん、君さえよければさ」


 ヒロトはマレッカに自分と近しいものを感じた。

 転移前のヒロトは人と関わろうにも上手く馴染めず、あまつさえその努力を周囲の人間からバカにされていた。 断定するわけではないが、きっとマレッカも周りから疎まれていたことだろうとヒロトは思っていた。

 近しいもの同士ならきっと良い仲間になれて、互いの悪い部分を見つめ合い、直していくことが出来るとヒロトは考え、その結果としてヒロトはマレッカに自分の仲間になることを提案したのだ。


「フンッ! このボ……俺様がお前ごときの仲間になんてなってやるはずがないだろ! アホ! バーカ! 死ね死ね!」


 あからさまに動揺した様子でマレッカはヒロトの提案を突っぱねた。 彼の高飛車な性格からこうなることは容易に想像できていたので、ヒロトはたいした反応を見せなかった。


「じゃあ、明日また一緒にギルドの依頼を受けようよ。 今日みたいにさ」


「それなら許す……!」


 俯いてヒロトの誘いを受けるマレッカ。

 その様子を見て、彼と打ち解けるにはゆっくりと時間をかける必要があるな、とヒロトは思った。


「そういえば今日も僕とマレッカでクエストに来たんだよね? どんな内容か全然知らなかったんだけど」


「ああ、そういえばそうだったな。 俺はベミベミの捕獲依頼を受けたんだ」


「ほっ、捕獲ぅ!?」


 ヒロトの体全体に衝撃が走った。 まさか彼がモンスターの捕獲依頼を受けていたとは、一つの可能性として考えてすらなかったからだ。


「捕獲って……ギルドに依頼するほどの強いモンスターなんでしょ!?」


「貴様、何も知らんのか! ベミベミといえばこの辺りで最も弱くちっぽけで大人しい雑魚モンスターだろうが!」


 マレッカはそう叫ぶと同時にベミベミの姿が描かれた紙をヒロトに手渡した。


「まあ……そんな感じの見た目かなぁ?」


 描かれていたのはトカゲの頭に長く垂れた耳が引っ付いてるような見た目をしたモンスターだった。 描き手の問題なのかもしれないが、その紙に描かれたベミベミというモンスターはかなりの間の抜けた顔をしている。


「この山に貴様を連れてきたのも当然このためだ。 ベミベミはこの山にわんさかいるからな」


 腕を組みながらそう言ったマレッカは体の向きを変え、山頂から隣の山へと移動を始めようとする。


「それにしてもこのイラスト……変な顔だなぁ」


「それは俺様の描いた絵だ。 奴らのマヌケ面を忠実に再現しているぞ」


 歩み寄ってきたヒロトが手に持つその紙を、マレッカが乱暴に取り上げ、自慢げにその紙をペラペラと揺らす。


「さっさと奴らの巣窟へ行くぞ、そのマヌケな面を拝みにな」


「う、うん……」













───────────────────────











「ねぇ、あれがベミベミ?」


「ああ……驚くほどのマヌケ面だろう?」


 二人は色鮮やかな葉を宿す木に身を隠し、森林の奥に見えるベミベミの群れをそこから監視していた。


「すっごく凶悪な目をしてるんだけど……」


 ベミベミの顔はさっき目にしたイラストとは別物レベルで違っていた。

 マヌケ面とは全くの嘘であり、実際のベミベミは怒り狂う虎の形相のようである。

 予想だにしなかった展開を受けたヒロトは頬に妙な汗をかき、固唾を飲んだ。

 

「俺様の描いた絵と全く同じ顔をしてやがるぜ」


(この人絵が下手なんだなぁ……)


 あまりにもマレッカが自信満々な顔でそう言い放つので、馬鹿らしく思ったヒロトの緊張は少し緩んだ。


「いいか、ベミベミの動きはトロく、音にも鈍感だ。 サッとうしろから腹の辺りを掴んでやれば殺すことは容易いだろう」


「わ、わかった……やってみるね」


 ヒロトはその言葉を信じてベミベミに近づいた。

 ゆっくり、ゆっくりと音を立てずに近づいていくが、なにやら場に怪しい雰囲気が漂い始める。


(なんか耳がピクピクしてない……?)


 ヒロトが歩き出した瞬間、大人しくしていたベミベミ達が急にソワソワしはじめたのだ。

 背中の全体を汗で濡らしはじめ、ヒロトの全身に緊張が舞い戻る。

 

「あっ…………!」


 緊張でベミベミ以外のことに注意が向かなかったヒロトは地面に落ちていた小枝を軽快な音とともに足で折ってしまった。


『ギエエエエエッ!!!』


 瞬間、全てのベミベミが耳を揺らし、毛を逆立てて山全体に聞こえるほどの声で鳴き始めた。

 聞くに耐えない醜悪な声とそのおぞましい顔にヒロトは救いを求めるような表情でマレッカの方を向いた。


「じっ、冗談だろ……? ベミベミはこんなモンスターなはずがない! 俺様は間違っていないのだ……! そのはずだっ!!」


 叫び続けるベミベミの困惑した表情で見つめながら、マレッカはそんな独り言を放っていた。

 

「マレッカ、逃げた方がいいよ! なんとなくだけど……僕達では勝てそうにないと思う!」


「ぐっ……このマレッカに逃げろだと……?」


「そうだよっ! 死んじゃうって!!」


 マレッカは拳を握りしめ、冷や汗をかきながらもベミベミを睨みつけている。

 その光景からヒロトが理解できるのは、彼が極度な負けず嫌いだということだ。


「この俺様が逃げるなどありえんっ!! かかってこい虫ケラどもっ!!」


 ベミベミの鳴き声に負けない声量でそう叫び、マレッカはベミベミの集う場へと突撃を開始した。


(それは想定してる中でも最悪な行動だよ……)


 マレッカは出会って数十分で理解できるような単純な性格をしている。 ヒロトもそれがわかっているので、彼が今のような行動を取るのは容易に想像できていたのだ。


「ほんっとにわかりやすいよ……君ってやつは!」


 ヒロトは全力疾走するマレッカの腹をヒロトは上半身全体で包み込み、マレッカが突っ込んだ方向とは真逆に走り出した。


「きっ、貴様!! やめろ、やめるんだ!! このやろう! このやろう! バカバカ! お尻さわるな!!」





 





───────────────────────











 尋常じゃないほどに耳元で叫ばれ、尋常じゃない強さで背中を叩かれながらも、ヒロトは足を止めなかった。

 その結果として二人は無事に山を降りることに成功し、依頼を放棄することが出来た。


 ギルドに戻ってきた時に二人が受付で言われたのは、ベミベミは小型モンスターの中ではとてつもなく凶暴でその凶暴さと『素早さ』のせいでよく新米ハンターが群れに食い殺されているということだった。



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