魔王、魔界の呼び名
王城の厨房は、緊張感が漂っていた
「料理対決で決めましょう」
姑がそう言い放つ
「魔力は禁止です」
聖女が続ける
「いいですよ」
短く答える、問題ない
「俺もやるっ」
この人は誰だ?
王子か?
それぞれが調理を開始した
姑は無駄のない動きで食材を捌く
さすが慣れている
聖女は見た目重視か、彩りがいい
魔法を使ってる気がするけどアリなの?
私はフライパンを手にとる
火加減を見極め、油を馴染ませる
音、匂い、熱、全て問題ない
一方で
「だあああぁ」
王子?が叫んでた
煙があがる
「調味料は多いほどよしっ」
「具材も多いほどよしっ」
やがて料理が並べられた
姑の料理は見た目もバランスもいい
さすがの出来栄え
聖女の料理は色鮮やかで美しい
料理が光輝いている?
そこで、私の皿
シンプルな炒め物だが、香りがたつ
「では評価を」
使用人達が試食していく
「姑様の料理は安定しております」
「聖女様は見た目は素晴らしいですが、味は普通です」
そして
「こちらは」
一口...もう一口...
「...美味い」
場の空気が変わった
「一番家庭的で完成度が高いのは...」
「魔王様です」
「ありえない」
姑が嘆く
「なぜ...」
聖女が固まる
「俺のは?」
王子?が割り込んできた
姑と聖女が言う
「あなた誰なの??」
料理に集中して気づいてなかった
彼はただの使用人...
料理大会だと勘違いして、参加してしまったらしい
「...随分騒がしいな」
整った顔立ち、無駄のない立ち姿
扉の前に立っていたのは、本物の王子だった
周りを見渡す
「なるほど...」
そしてゆっくり厨房に入った
そして食材を手にとる
動きに迷いがない
火をつける
音が鳴る
香りが立つ
一瞬で分かる、違う
「真鯛のポワレ 〜香草の香りを添えて〜」
皿が置かれる
その存在感は圧倒的だった
一口食べる
「...美味い」
「これは...別格です」
魔王も食べる
「...やるな」
王子が少し笑う
「そちらこそ」
そして姑と聖女を厳しい目で見る
「今日の出来事は知っている」
「2人の発言、それは指導ではない」
「何ですって」
姑と聖女の顔がこわばる
「結果は見ている」
「掃除も、料理も、洗濯も、」
一つずつ、言葉を置く
「魔王のほうがちゃんとやってる」
2人は反論出来ない
「それでも文句をつけるのは...」
王子は姑を見る
「ただ気にいらないだけだろ」
姑の表情が固まる
「お義兄様、それは言い過ぎでは?」
聖女が口を挟む
「討伐対象にすると言ってたな」
王子が視線を向ける
よく見ている
何処に居たのやら...
「王家のものとして命じる!」
王子が一歩踏み込む
「これ以上の干渉は禁止だ」
姑は何も言わない、聖女も黙っている
否定できないのだ
しばらく沈黙の後、姑が口を開いた
「行き過ぎがあったのは認めます」
聖女も小さく
「...以後気をつけます」
魔王は微笑む
「王子がいない時、どうなるか見てたんでしょ?」
遠くを見ながら答える
「...さあね」
かつて世界を恐怖に陥れた魔王は今。
姑と聖女に囲まれ。
そしてまともすぎる王子と並びながら。
新婚生活を送っている。
〜〜〜
旦那とっても素敵でしょ?
一目惚れだったの
和平を条件に結婚を裏で進めたのは、魔王の私
ここだけの話だよ...
魔界では私の事をこう呼んでるの
悪役魔王...って




