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両親が帰ってくるっぽいです

 舞香お手製の朝ごはんを頬張った後、あまり長く居候するのも悪いと思った僕は、舞香に別れを告げ自分のお家へ帰宅した。

 舞香は「まだ居ても良いよ」と言ってくれたが、他人の家だからか、異性の家だからか、はたまた舞香の家だからかわからないが、妙に緊張してしまうので、それがバレないうちにさっさと帰らせてもらった。

 ……興味本位で、帰り際にちらっと桃花がいる部屋を覗くと、気持ちよさそうにぐっすり眠っていた。



「ただいま〜」


 と言ったものの、もちろん返事はない。一夜家を空けただけなのにこの家が懐かしい。僕は、やっぱりこの感じなんだよな、という名前のない安心感に包まれる。

 けど、どこか寂しい。以前から寂しいなとは思っていたけど、舞香のお家で3人で泊まってからこのお家に帰ったからか、その寂寥感が際立ってしまったように思った


 将来は、3人で住めたらな〜………なんて不埒な想像をしてみたり。



 

 それから四日後。今日は両親が久しぶりに海外からこの家に帰ってくる日だ。

 僕は両親が好きだ。今まで育ててくれた恩もそうだし、なにより仕事に一生懸命に打ち込んできた2人の姿に、幼い頃から憧れていた。

 人見知りだった幼少期、「友達になろう」という一言を言えず、友達ができずに焦っていた僕を真剣な言葉で諭してくれた。


 結果論みたいなところになっちゃうけど、僕がvtuberをやろうと決心したことを後押ししたのも、そのときかけられた両親の言葉なのだ。


 なんだかんだで友達も増え、見知らぬ人に対しても緊張せずに話せるようになったのも、ひとえに両親の教訓にあったのだろう、と思っている。………見知らぬ人、ってのは画面越しに話しているリスナーさんのことなんだけどね。


 つまり何が言いたいかというと、両親に久々に会えることが楽しみでたまらないと言うことだ。


「おーい!帰ったぞー!」


 その時、ちょうどコンコン、と扉を叩く音とともに父の声が聞こえてきた。


「お父さん!今開けるね!」


 ガチャリ、と扉を開けると、そこにはお父さんが立っていた。お父さんの後ろにも、お母さんがいる。


「久々だな、玲!元気に………して…た……か……?………何だ、その胸は???」

「………あなた、私疲れてるみたい」


 あ、しまった。今日は一日中家にいるつもりだったから、ラフな格好をしているのを、忘れていた。二人は僕のお胸を凝視して目を何回も擦る。


「あ……えーっと……とりあえず、中入ろう?」


「………はっ、そうだったな。いや、すまない」


「私は娘を産んだ覚えがないのだけれど。夢だったかしら?いや、これが夢?」


 お母さんはまだ混乱して頭の整理が追いついていないようだったが、お父さんの方はというと、すでに察しのついた顔をしていた。………まさか、僕のお胸を見ただけで、僕が女の子になっちゃったのだとわかったのかな?流石にないか。


 二人の荷物を客室に置く。二日間だけの滞在のようだから荷物は少ないみたい。

 そして二人をリビングに案内する。二人ともこの家が久しぶりのようで、「おお、懐かしい」「この感じよ」と感慨に浸っていた。


「………で、僕女の子になっちゃったんだ。何でかはわからないけど」


「ふむ、世の中解明できないものなど腐るほどある。海底には何があるのか、ダークマターとは何なのか、ヴォイニッチ手稿の意味は何なのか、なぜ玲は女の子になるのか」


「ヴォイニッチ手稿と僕を並べないで」


「気にするなということだ。そんなもので俺たちの愛情が終わってしまうことなんてないんだからな。な、母さん」


「そうね。いくら姿見が変わろうと、玲は私たちの愛する息子よ」


「お父さん、お母さん………ありがとう」


 二人はにっこりと微笑む。二人は杉山や柊、桃花や舞香たちのように、やっぱり僕のことを受け入れてくれた。女の子になってしばらくは拒絶されるのが怖かったが、今はもうそんな恐怖はない。


「うんうん、良いのよそれくらい。それより、私たちあなたのご飯が食べたいわ」


 僕の機微に敏いお母さんが、僕が安堵したのを察したのだろう。どこか含みのある笑みを浮かべて、話題を変えてくれた。


「玲のご飯が食べたいからな。昼ごはんはまだ食べていないんだ」


「LIMEでお母さんにそう聞いたからね、ちゃんと作ってあるよ!」


 僕はキッチンに向かい、お箸を3人分出す。長めで真っ黒のお父さんのお箸と、お花の柄が彫ってある白色のお箸。このお箸たちを出すのが久しぶりで、二人の帰省を改めて実感し、頬がつい緩んでしまう。


「いい匂いがするな。揚げ物かい?」


 二人はダイニングチェアに腰掛け、僕にそう尋ねる。


「今日はね、つけ麺風そうめんと、コロッケ!あと僕が一から作ったポテトサラダ」


「ジャガイモがお買い得だったのかしら」


「うん、昨日。すっごく割引されてて安かったんだ」


「ふふ……玲、すっかり主婦さんみたいねぇ。この歳で自炊させることになって、本当に申し訳ないわ」


「お母さん、それを言うなら主婦じゃなくて主夫でしょ。………自炊に関しては、別に気にしてないよ。将来のためだと思って、ね?」


「うちの玲、良い子すぎないか?」


「私もそう思っていたところ」


「だが、それに感けてちゃいかんな。早く仕事を終わらせて、この家に再び住みたいものだ」


「そうねぇ………せめて私だけでも、と言いたいのだけど……無理よね」


「そうだな。心苦しいが、当分は一人にさせてしまうだろうな………」


 3人分の料理をお皿に盛りつけ終わった僕は、ダイニングを覗くと、二人とも話し込んでいた。リラックスできているようで、僕は安心する。


「二人とも、できたよ〜」


 キッチンからダイニングへ、お皿を運ぶ。飲み物も3人分出そうと再びキッチンに戻ってくれたが、お母さんも手伝ってくれ、僕たちは食事の席についた。


「「「いただきます」」」


 お父さんが、まずコロッケを大きく一口。


「うん、うまい!本当に料理が上手になったな!」


 お母さんは、素麺をつけ汁につけ、きれいに啜る。


「美味しいわ、このつけ汁。よくできてるわね」


 二人とも美味しそうに食べてくれて、こちらも無意識に笑みが溢れる。そして、僕もお箸を持ち、お料理を口に運ぶ。………うん、上手くできてる!

 

 僕たちは食事を運びながら、僕が一人暮らしを始めて半年何があったか、二人のアメリカでの生活など、積もる話をしたのだった。






「ご飯できたわよ〜」


 翌日。母の声に起こされた僕は寝ぼけ目を擦りながら一階に降りると、ダイニングからふわりと美味しそうな匂いが漂ってきた。匂いに釣られてキッチンに顔を出すと、お母さんが料理を作っていた。


「おはよう。昨日の昼ごはんと夜ご飯を作ってもらっちゃったから、今日は私が作るわよ」


「おはよう、お母さん。ありがとう」


「何、当たり前のことよ」


 すでに3人分の朝食がさらに盛りつけられており、ソファを見るとお父さんがコーヒーを飲みながらスマホを見ていた。ニュースでも見ているのだろう。

 状況的に、お父さんは僕を待っててくれたのだろう。


「お父さんも、おはよう」


「ああ、おはよう」


 洗面所で顔を洗い、寝癖を軽く治してから再びダイニングへ顔を出す。


 3人で食卓を囲む。


「「「いただきます」」」


 お皿には、真っ赤なトマトが三つにミックスサラダ、黄金色に輝いたベーコンが2枚、狐色の焦げ目がついたトーストが一枚、さらにチーズが絡み合っていて、見ているだけで涎が垂れるスクランブルエッグが盛りつけられていた。


「いかにも洋風だね」


 僕はそう感想を言いつつ、最初にスクランブルエッグを口に運ぶ。

 白身と黄身が完全に一体になったトロトロの卵に、チーズが絡み合って最高だ。

 続いてベーコン。焼き過ぎず、ちょうど良い火加減で焼かれたベーコン。これもカリカリで美味しい。ベーコンの塩味に合わせるように、トーストを口に運ぶ。その瞬間、サクッと心地よい音をたてる。


「………美味しい!」


「あっちでいつも作ってる朝食ね。大したことはしてないのだけど、お口に合ったようでよかったわ。あなたはどう?」


 無心にトーストを齧っているお父さんに、お母さんはジトッとした目を向ける。


「ん?あ、ああ……美味しいぞ」


「玲を見習いなさい、ほら、そんなにパン屑をこぼして」


「玲はマナーがいいんだな!偉いぞ!」


「あなたのマナーが悪いのよ、馬鹿」


 

 

 二人は多忙な中僕を心配して、無理やり四日間の休暇を勝ち取ったらしく、今日の深夜には空港に行かなければならないそうだ。

 

 朝ごはんを食べ終わった僕たちは、3人でショッピングセンターに向かった。早速服屋に向かったお母さんは、下着を買ってくれた。今までは自分で四つ五つ買ったものを使い回していたが、お母さんは「あって困らない」といっぱい買ってくれた。

 ちなみにその後、女物の服を着せられた。二人とも「娘がいたらこんな感じなのか」と嬉々として僕を着せ替え人形にしていた。最初のうちは、最初は足がスースーするものとか、胸郭が見えている服とかを着せられ、恥ずかしさのあまり赤面していたが、五着目くらいから死んだ目をしてただ服を着ていた。死にそうなくらい疲れた。


 次は、雑貨店に入った。新学期に向けて必要なものを取り揃えるためだ。それが買い終わった後には、日用品店にも足を運んだ。

 

 昨日の夜に、僕はお母さんから女性特有の月のものについて教えられた。なんでも、女性特有の生理現象のようだ。もしかして、と思い夏休み前に起こった体調不良の話をすると、「それは月のものだわ」とお母さんは断言した。

 実は先月も体調不良を起こしたのだが、それも月のものだという。結構辛いのに、それが周期的に来るなんて女性は大変だな、と思った。


 そんなこともあって、日用品店ではお母さんと一緒に生理用品も購入した。月のものが来たときへの対処法も加えて。今日の買い物は、お母さんが女の子になってしまった僕を心配しての発案だったらしい。

 今日は女性に必要なものを揃える必要があったため、「デリカシーな問題だから」とお母さんはお父さんを店の外で待機させることが多かった。

 当のお父さんは「玲とせっかくのお出かけなのに……いや、理解はしていてるが…」と愚痴をこぼしており、少しかわいそうだった。

 

 それが終わると太陽が真上に来る時間帯だったので、そのまま飲食店へ。

 少しお高い定食屋だったが、お父さんが「出世払いだな」と奢ってくれた。

 


 お腹も膨れた僕たちは、そのまま帰宅。

 歩き疲れたのか、僕たちは夜までぐーたら過ごしたのだった。 

なんと40話&400pt!すごい!ありがとうございます!

面白かったら星5、面白くなかったら星1、正直な評価をお願いします!今後の糧にしていきたいです!

よければリアクション、コメントしてもらえるととても嬉しいです!

当作品をよろしくお願いします!

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