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ノアのお家に泊めてもらうことになった

 お酒の力なのかさらに話は盛り上がり、僕たちはお店の閉店時間が来るまでお食事を楽しんだ。

 そしてお店の閉店時間の少し前に僕たちはお店を出た。


「今日は楽しかった。いろいろありがとう」


 ノアもとい舞香はそう言い頭を下げる。


「良いってことよ〜〜」


 それに対し、ひるねもとい桃花は完全に酔いが回っているようで、顔を赤くして舞香の肩に手を回している。正直お酒くさい。


「僕も楽しかったよ」


 今日は本当に楽しかったなぁ、と改めて思う。同じ趣味を持っている同期、話のネタは尽きないし、どれも面白い話ばかりで飽きなかった。お食事も美味しかったし、今度また3人で行きたい。


「じゃあ、次は全体コラボの日で。またね〜」


 そう言い残し、僕は去ろうとすると………


「待って」


 舞香に腕を掴まれた。思いがけない彼女の行動に、僕はなんだろうと疑問に思う。


「どうしたの?」


「ゆい………玲は電車で帰るんだよね」


「うん、そうだけど?」


「なら、ここから駅まで歩くってことでしょ」


 いまいち舞香の言いたいことが伝わらず、首を捻っていると、舞香にボディタッチでダル絡みしている桃花が意味を教えてくれた。


「舞香は〜玲が心配なんでしょー」


「ん、そうだけど?多分、玲職質されると思うよ」


「えっ、職質?」


 どうしてだろう。何も悪いことしていないのに。………してないよね? 

 いきなり職質という言葉を聞き焦り始めた僕を見て、桃花がからからと可笑しそうに笑う。


「そりゃーねー、明らかに中学生とかそのくらいの女の子がさー、一人で繁華街をフラフラしてたらねー」


「そういうこと」


 た、確かに。中学生くらいというのは納得いかないが、今の僕は背も低いしそう見えてしまっても仕方ない。……男の時から身長は低かったじゃん、っていうのは置いといて。


 じゃあお金は必要だけどタクシー呼ぼうかな、どうしようかな、なんて考えていたら、桃花が突然地面に座り込む。


「うっ………やばい吐きそう………」


「桃花!?」


「頼むからやめて」


 二人の懇願のおかげか、なんとか抑えていたが桃花は完全にアウトな顔をしていた。


「桃花の家まで送るよ」


 舞香がそう提案する。彼女も割とお酒を飲んでいた気がするけど、今は平気な顔をしている。彼女はお酒に強いのかもしれない。


「うぅ………ありがとう………でも多分無理…住所、ここ」


 桃花が携帯で示した場所は、ここから駅で14駅先の場所だった。しかも、今この時間帯は電車がほとんど走っていない。これは困った状況になってしまった。


「仕方ない、ウチ泊まる?」


「だずがる〜〜」


 ………なんか、こういう気兼ねない頼れる友達って良いな、なんて思いながら、酔っ払い桃花の行先が決まったことに安堵する。

 めでたしめでたし。いや〜今日は楽しかったなぁ……


「じゃあ僕はこれで……」


「いやいやちょっと待って!」


「え?」


「さっき私のした話、忘れたの?」


 あ、そうだった。タクシーを呼ぼうと思ったんだっけ………。


「タクシー呼んで帰るよ。……までだから、そんなに遠くないしね」


「お金はあるの?……までだったらこのくらいはかかる」


 舞香がタクシー会社のホームページを見せてくれる。そこに表示される金額と、お家の最寄り駅までの距離をかけると………なんと、お金が足りない。今ある手持ちのお金じゃ払えない金額になったのだ。


「ええっ………タクシーってこんなに高かったっけ………」


 こんなに高いとは思わず、すっかり驚いてしまう。


「最近は特にね。仕方ない」


「じゃあ………最悪職質されてもなんとか説明すれば大丈夫だと思うし……やっぱり電車で帰るよ」


 僕がそう言うと、舞香は考え込むような素振りを見せた。


「………やっぱりだめ。どうしてもと言うのなら止めはしないけど、やっぱり心配」


 彼女の瞳を見ると、その真剣さはすぐにわかる。だからこそ、やっぱり電車で帰るんだなんてもう一回言えない。


「玲もうち、来て」


「へ?」


 一瞬言葉の意味が分からず、僕は目が点になってしまったのだった。


◇◇◇


 そしてややあって。僕たちは舞香のお家にお邪魔していた。たとえ今が女の子の体であろうと、心は男だ。異性のお家にお泊まりするなんて、恥ずかしくて身悶え死にそうだ。


「はい桃花、お薬。これ飲んで横になって。ベッド使って良いから」


「うーー……ありがとぉ…………」


 桃花は勧められたお薬をごくりと飲んで、ベッドに力尽きた。そしてしばらくすると、すうすうと寝息が聞こえ始めた。


「玲も、寝ていいよ。私はソファで寝るから」


 舞香のお家は僕たちがいた中華料理屋からタクシーで15分くらいのところにあり、マンションの一室出会った。舞香は一人暮らしだそうだが、マンションの高級そうな外見からもわかるとおり、部屋は大きかった。


 ベッドも舞香がいつも寝ているベッドと、予備のベッドが二つあるらしく、予備のベッドを今桃花が占領していた。つまり、僕と舞香のどっちかはリビングにあるソファで寝るということになるのだ。

 

 僕はソファで寝るよ、と言おうと思っていたのだが………先を越されて舞香にそんなことを言われてしまったのだ。


「いや!さ、さすがにそれは……お邪魔させてもらってる身だし……」


「いいのいいの。お客さんをソファで寝かせて、私だけベッド」


 舞香はソファにぐでーと寝転がる。行動が早い。


「それとも、私がいつも使っているベッドじゃ不満?」


 忘れようとしていたことを言われた………!本当に僕を寝かせる気があるのかな、舞香は?

 それに!その横になって肘をつく姿勢も、とても目に毒なのですが………!


「ふ……不満じゃないです」


 そう言うしかなく。


「そう?なら良かった。さっき言った通り、私の部屋はあそこね。そこにあるから。じゃ、おやすみ」


 自由人かー!とツッこむ隙もなく、舞香は掛け布団をかけ目を閉じてしまった。


「もう………舞香の友達たちにも、こんな感じなのかな……」


 舞香は距離感のつめ方がいろいろおかしい。ボイスチャットやテキストチャットで話してきた仲とはいえ、今日対面で初めて会ったはずなのに。そんな人を普通、自分のベッドに寝かせるかな……?なんて思ったが、眠くて思考が鈍くなってきた。


「まあいいや……寝よう……」


 指差しで教えてくれた舞香の部屋に入ると、随分と可愛らしい内装だった。それに、配信用の機材もあって、やっぱり舞香はノアなんだな、なんて実感する。


「って……えええ!!??」


 とんでもないものを見つけて、思わず声が上がってしまう。寝ている二人を起こさないように、ハッと口を手で塞ぐ。

 ………PCの傍。なんと、朝日ゆいのアクスタが立っていたのだ!


 おかしいな…………。僕のアクスタが売られているなんて、運営から聞いたことないぞ。


 何より、舞香が僕のグッズを飾ってくれてる!というのがすごく嬉しかった。

 僕は浮かれ気分で、舞香のベッドに身を委ねた。


 ベッドからは舞香の香りがした。…………って、なんて変態チックなことを考えているんだ、僕。さっさと寝よう……そう思い目を閉じると、睡魔は案外簡単にやってきたのだった。


◇◇◇


 ふわりと漂う美味しそうな香りに釣られて、僕の意識が浮かぶ。

 目が覚めると、そこに走らない天井。僕が被っている掛け布団が花柄であることに気づく。ああそうだった。なぜか舞香のお家でお泊まりしたんだった。

 

 僕は頭のてっぺんまで被っていた掛け布団を慌てて離し、ベッドから飛び起きる。

 リビングに顔を出すと、キッチンに舞香が立っていた。美味しそうな匂いは、どうやらここから発せられていたらしい。


「あ、玲。おはよう」


「う、うん。おはよう。あの、洗面所ってどこに……」


「ああ、洗面所はあそこの角」


「あ、ありがとう」


 僕は逃げるようにリビングを飛び出し、洗面所へ。

 ………キッチンに立っている舞香が綺麗だなんて口が裂けても言えない!というか、いつも朝は一人だったから、こうして誰かと一緒の朝が不思議で………どこか温かい。


 変に昂った気持ちを抑えるためにも、ゴシゴシと顔を洗っていると、突然後ろから声をかけられる。


「そんなに荒くやったらお肌傷つくよ」


「ぶへっ!?」


 慌てて後ろを振り返ると、そこには桃花が立っていた。………そういえば、桃花もいるんだった。嫌だなぁ、忘れてたわけないじゃん。


「あ、ごめん!驚かせちゃったね〜」


 落ち着いて桃花を見てみると、心なしかげんなりとしている。それにいつもよりすごくテンションが低い。………これは二日酔いってやつか!僕は気の毒に思いながらも、洗面所を交代する。


 そして再びリビングに顔を出すと、テーブルの上にご飯が三つ置いてあった。


「はい、朝ごはん」


「うわ〜………おいしそお……」


「おいしそう……だけどちょっと胃もたれしてるからやめとくわ……」


 いつの間にか桃花が隣に立っていた。


「うん、そうだろうなと思って少なめにしといた。これでもキツそう?」


「うん……本当にごめん………」


「気にしないで。私が食べるから。桃花はベッドで寝といて」


 桃花は頷いた後、ベッドのある部屋に戻っていった。本当に体調が悪そうだ。


 そして僕は舞香の対面の席に座り、おいしそうな朝ごはんをいただくことにした。


「「いただきます」」


 僕はスクランブルエッグをまず一口。


「お、おいしい……!何でこんなにおいしいの……!僕が作ったのと全然違うや……」


「ん、そっか。玲は一人暮らしなんだった。料理作るんだ」


「うん、作るよ。でもこんなにおいしくは作れないなぁ。何か特別なことでもしたの?」


「んー…………特にしてない。強いていえば、愛情?」


「あ、愛じょ………」


 口にふくんだお茶を吹き出しそうになった。………でも、確かに誰かに食べてもらえるかって、結構違うのかな。


「玲が美味しそうに食べてくれるから、私も作った甲斐あったって思う」


 舞香は微笑ましそうに、僕が朝ごはんをむしゃむしゃと食べている姿を見ていた。


「僕としてはお泊まりさせてもらった上に、朝ごはんまでご馳走してもらえるなんて……本当に申し訳ないよ」


「気にしなくていい。実は私が玲といたいから、わがまま言っただけ」


「え?でもあの時は………」


「普通に、私がお金貸せば玲はタクシーて帰れた。ごめん。でも、心配だったのはほんと。タクシーでも、危険な時はある」


 確かにお金を借りれば良かったのか………。何で思いつかなかったんだろう、と後悔したが、確かにあの時間に一人でタクシーで帰るのも、不安じゃなかったのかと言われればそうではない。


「うん、舞香が心配してくれてるってのは伝わってる。泊めてもらえて良かったって思ってるし。ありがとうね、舞香」


「あ、う、うん……」


 僕が最大限の感謝を笑顔で伝えたら、舞香は顔を赤くして、フォークを操る手の動きがぎこちないものになってしまった。


「そ、そういえば。私今日も仕事が午後にあるから………」


「いやいや、もちろん午後までには出ていくよ!お仕事、頑張ってね!」


「ありがと…………いつもの100倍頑張れる………」

面白かったら星5、面白くなかったら星1、正直な評価をお願いします!今後の糧にしていきたいです!

よければリアクション、コメントしてもらえるととても嬉しいです!

当作品をよろしくお願いします!

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