リン先輩とコラボ配信(上)
「もしも〜し。聞こえてる〜?」
「あ、はい。聞こえてます」
今日は日曜日。そう、待ちに待ったリン先輩とのコラボの日だ。
昨日はドキドキしすぎて一睡もできなかったが、結局睡魔に負けてお昼寝をしたので体調はバッチリ。
そわそわしながら過ごしていたら、いつの間にか配信開始時刻が1時間前に迫っていたのだ。
「敬語は使わなくても大丈夫だよー。先輩後輩とはいえ、同事務所なんだしね〜」
「わかりまし………」
「敬語!」
「わかった」
「オッケー」
つい癖で敬語を使ってしまう。憧憬しているリン先輩なら、尚更だ。
「じゃあ、配信のことで確認なんだけど………」
今日のコラボ配信の内容については、コラボが決まった日からメッセージでやり取りをして粗方決まった。
念には念を押して1時間前という早い段階から通話を繋げることを提案し、今こうして二人で確認作業をしている。
それにしても、リン先輩の手際が良すぎる………。僕もいつかは、こんな先輩になれるのかなぁ……。
「今日の配信内容は、いろんな人のお悩み相談室だね」
「あと、一番最後に全体コラボの告知だよね?」
「そうそう!……なんかゆいちゃん余裕そうだね〜。別に確認作業とかしなくていっか!」
「!?」
紙をばさっと置く音が聞こえたかと思ったら、唐突にそんなことを彼女は言う。僕が呆気に取られていると、リン先輩は雑談を始めてしまった。
「同期たちとは仲良くしてる〜?」
「………………もちろん!二人とも凄い良くしてくれるし、環境も良いしで至れり尽くせりだよ」
僕は割り切って雑談脳に切り替える。
僕はメリハリをつけられる男なのだ。女だけど。
「そう言ってもらえると助かるよ。………他の事務所とかだと同期同士でも相性が良くない、みたいになっちゃうライバーさんも多いみたいだからさ。ウチは三人だけ募集することにしたんだ」
確かに、二期生が三人しかいないのは珍しいと思ったが、そんな理由があったなんて。
「まあ、唯ちゃんはみんなから好かれそうなタイプだし………要らない憂いだったみたい!」
「僕ってそういうタイプなのかな……?」
好かれるというより、子供を甘やかすような感覚を感じるのは気のせいだろうか。………うん、気のせいに違いない。
「一度事務所で見かけた時は、思わず抱きしめ………話しかけようとしてしまったよ」
うん?今抱きしめるって言った?
「話しかけてくれて良かったのに………って、僕リン先輩と事務所でお会いしてたんですか!?」
「うん。その時はいきなり話しかけるのは不粋かと思ってね。………今度機会があったら、またちゃんと会おうね」
「僕でよければ喜んで………というか、多分次の全体コラボで絶対会うね」
「あ、確かに。そうだった〜」
それからもすまいるほーむのことについて雑談していたら、いつの間にか配信が始まるまで後五分という表示が映る。僕とリン先輩は、機材の最終チェックを行う。
コメント欄をチラッと見ると、まだ始まっていないのに大きな盛り上がりを見せていた。
【マジで楽しみ〜】
【ゆいちゃん初めての先輩とのコラボ!!!】
【ガッチガチに緊張してそう】
【あと5分が長い】
「今どんな感じ?」
「え?」
そろそろ配信かーと思っていたら、リン先輩に訳のわからない質問をされて戸惑う。
「いや、緊張してたでしょ?解れたかなーと思って!」
「あ……………っ……うん」
思えばさっきまでの雑談も、僕の緊張を和らげるためにしてくれた………?
そこまで考えてくれていたなんて………。僕を大切にしてくれてる想いがひしひしと伝わり、胸が熱くなるのを感じる。
「ありがとう。本当に助かった………リン先輩はすごいんだね」
「ま、まーね。変に気負われても嫌だし!」
リン先輩が少し動揺したような…。何かあったのかな?
もしかして照れちゃってるのかな………
「あ、あと30秒!」
能天気なことを考えていたら、あと30秒で配信が始まるらしい。
「え!?もう始まっちゃう………」
僕は急いで心の準備を整え、深く息を吸って、吐く。
タイムリミットが終わり配信が始まる。僕はリン先輩に確認をとって、マイクをオンにする。
「こ、こんゆい〜」
【こんゆい〜〜!!!】
【こんゆい!!】
【こんゆい〜〜〜〜】
【来たーーーーー!!!】
【やっと━━━━(゜∀゜)━━━━!!】
僕がお決まりの挨拶をすると、ものすごい速さでコメントが流れる。
今日は僕が初めて先輩とコラボするということもあってか、同接がものすごいことになってる。
「……なんと、今日はとんでもない人とコラボをしております。一体誰なんでしょう?……………その人は………」
場を盛り上げるドラムロールを流す。
【いや、リンでしょ。わかってるからw】
【サムネにリン先輩とコラボって書いてあったし】
「リン先輩で〜す」
ジャーンとシンバルが鳴る。そしてスポットライトをリン先輩に当てる。
「は〜い!青花リンで〜す!!こんリン〜〜!今日はゆいちゃんとのコラボで〜す!最後まで見てねー」
【こんリン!】
【こんリン〜】
【しってた】
【コラボ助かる〜〜!】
「というわけでリン先輩でした〜!」
拍手の効果音を鳴らす。ついでに僕も手をぱちぱちと叩いておく。
【パチパチ可愛い】
【茶番すぎるww】
【これどっちが考えたん??】
【いや絶対ゆいちゃん】
「今日はね!お悩み相談室をゆいちゃんとやっていくよ〜!!!」
「お悩み相談室って一体なんなんの〜!?はい!先輩説明!」
「おけまる!お悩み相談室ってのはね〜〜その名の通り、いろんな人のお悩みを二人で解決していこうってことだね!」
「ちなみに、お悩みはすまいるほーむのライバーたち、リスナーさんたちから事前に募集してあります!」
よし。ここまでは台本通り、完璧だ。ここからのお悩みアドバイスとかはアドリブだから、しっかり気を張らなくちゃ。
【なんかテンション高いなw】
【すごい淀みがない!!まるで手元に台本があるかのような………】
【それ以上は、言っちゃいけない。】
【ゆいちゃん気合い入ってるな】
「じゃあ早速始めよっかー!」
「うんっ」
「記念すべき一人目のお悩みは………匿名Fさん!どれどれ?………『最近可愛い後輩ができたのですが、可愛すぎてついちょっかいをかけちゃいます。どうしたら良いのでしょうか?』だって」
【どこかで聞いたことがあるような話だな】
【Fって絶対フローラやん】
【わかりやすっ】
あ、この匿名Fさんってフローラ先輩のことなのか。
僕はフローラ先輩にちょっかいをかけられたことは無いが、仲良くなったらちょっかい掛けられるのかなぁ。少し楽しみ………なんて。
「うーん、まあ私もその気持ちはわかるけど………後輩に対してはちょっかいをかける、というより庇護欲的なものの方が出るかなー」
「ぼ、僕は後輩とかいないからわかんないなぁ………高校も一年生のひよっこだし」
いつか3期生も来ることになるのだろうか。僕が先輩って呼ばれたりしちゃうのかな!?
『ゆい先輩!』みたいな!……………えへへ。後輩、欲しい。
【確かに庇護欲湧くよな】
【守りたい、的なね?】
【なんでゆいちゃんは笑ってるんだ】
【すっごいニヤニヤしてて草】
【これだけで俺らは生きていけるんだよなぁ】
【それなー】
「次は僕が読むね。二人目のお悩みは……apple@リン親衛隊さんから『リンに貢ぎすぎて、お金がない。もう来月の食費分に手を出すしかない。困った。』だそうです」
【切実www】
【わかるぞ、同志よ】
【オタクあるある食費を削る】
「なんか申し訳なくなってきた」
「僕としては、熱心なファンがいることが羨ましい………けどappleさん、無理はしないでね!?」
「私もグッズとかいっぱい買ってくれるのは嬉しいけどー!けど!流石に食費削るのはやりすぎじゃない!?」
リン先輩が呆れ笑いをしながらそう答える。
【ゆいちゃんも割と熱心なファン多いよな】
【しかも来月の食費だしなww】
「僕も配信をやる度に、必ず同じ人が赤スパ投げてくれるんだよね!すっごく嬉しいんだけど、ちょっと怖い………」
【金持ちすぎるww】
【ゆいちゃんは配信少ないからねーw仕方ない】
【一回上限投げてみたい】
【まあ確かに怖いわなw】
【俺だったらウヒョーってなってはしゃぐけどな】
【草】
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