第一回打ち上げ会をやるみたいです
「終わったぁ〜〜〜」
テスト最終日。全ての科目を終え開放感に満たされた僕は、思いのままに叫ぶ。
「黒影っち〜どうだった?」
腕を伸ばして伸びをしていると、いつの間にか杉山と柊がいた。テストの結果を聞いてきて、僕は思わず唸る。
「英語が自信ないかな…………」
「確かに今回英語は難しかったわ。平均も低そうね」
柊僕の言葉に同意してくれ、僕は安堵する。
今回はこの高校に入ってから初めてのテストだったため、気合を入れて取り組んだ。その努力の結果が出たのか割と好感触だったのに、最後の英語で自信を砕かれてしまった。
だが、柊も苦戦したらしい。勉強会をしたからこそわかるが、柊はすごく頭が良い。その柊が苦戦したなら、と僕は淡い期待を抱く。
「え?そんなに英語むずかったの?」
杉山は清々しいほどの笑顔でそう聞く。
「も、もしかして杉山ほどにもなればこの程度は…………」
「何も分かんなかったから難しいのかも!あはは」
「そんなことはなかった」
「もっと勉強すれば良い点数出せるでしょうに」
柊が呆れ顔で杉山にそう指摘する。
実際、杉山は地頭が良い。彼女は数学が得意で、解法を導き出すのが非常に上手い。勉強会の時にはお世話になった。
「英語を見ると蕁麻疹が出るから無理!」
「I sincerely hope your fear of English will be cured………」
「うわああああああ」
「ほ、本当に蕁麻疹が………!?」
もしかして杉山は本当にそういう体質なのかもしれない………。かわいそうに………
◇◇◇
「という訳で〜〜第一回打ち上げ会を始めま〜〜す!!」
「い、いえ〜い」
「いえーい」
放課後。僕たちはファミレスにて打ち上げ会を行なっていた。
杉山がどうしてもやりたいと駄々を捏ねたので、僕は雑談配信をしようと思っていたが急遽ファミレスに行くことになったのだ。スイッターで告知する前でよかった…………。
「ふふ〜ん………なーに頼もっかな〜?」
杉山がとても上機嫌で、僕はつい笑みを溢す。こんなに楽しそうにしてくれると、やっぱりきて良かったと思える。
「僕はこういうお店初めてだから楽しみだなぁ」
メニューを開くと、鮮やかで食欲をそそられる写真がいっぱい載っていた。どれも甲乙つけ難いメニューで、これらから食べ切れる量しか注文できないなんて酷な話だ。
「黒影さんは初めてなのね」
「うん!普段は自炊してるから外食しないし………親がいた頃もそんなにだったかな」
雰囲気が厳かで、とても大きい器にこぢんまりとした料理が載っているようなお店なら、両親に連れられて何度も行ったことがある。
「こういう賑やかなところに友達と行くの、ちょっと憧れたんだ」
「それは良かったわね。奇しくも黒影さんの願いも叶えられたと言う訳ね」
柊と楽しく談笑していると、杉山からジト目を向けられていた。
「仲がよろしいようで何より!ちゃっかり隣同士に座ってるし」
「あ………別に深い意味はないよ………?」
なんも考えずに柊の隣に座った時、杉山が恨めしそうに見ていたのはもしかして………
「杉山もこっち来る?」
「へ?」
「確かに杉山だけ隣に誰もいないって寂しいよね!さ、遠慮なく!」
僕は名案を思いついた喜びで頬を紅潮させながら、僕の隣をバシバシと叩く。
「あ、じゃあ遠慮なく………?」
「来なくて良いわよ」
杉山は向かい側のソファ席から立ち上がり、僕の左隣にやってきた。これで僕は右隣に柊、左隣に杉山で挟まれる形になった。心が満たされていく感じがする。
「黒影さんが小さいから全然狭くならないわね」
「い、いい匂いする………」
「?」
杉山にくんくんと嗅がれて不安になる。僕、臭かったかな………?
僕は気にしないふりをしながら、再びメニューを選ぶ。一番美味しそうに見えたのは……
「決めた。このホタテのドリアにする!」
「いいね!私はペペロンチーノにしようっかな。明美は決まった?」
「私は………ローマ風ドリアで。あと、このエスカルゴも」
「安定!じゃあボタン押しちゃうねー」
杉山がボタンを押すと、すぐに店員がやってきた。そのまま流れるように注文を聞き、去っていった。
僕たちは料理を待つ間、セットで頼んだドリンクバー飲み放題を行使して飲み物を取りに行く。
「黒影っち何飲むん?ちなみに私はコーラ!」
「コーラ良いね。僕は…………烏龍茶にしよっかな」
「炭酸水以外ありえないわ」
各々飲みたいドリンクをコップに注ぐ。ボタンを押すと、烏龍茶がジャーと勢いよくコップに注がれる。
そして席に戻った僕たちは、再びトークを始めた。
「二人は夏休みどう過ごすつもり〜?」
そっか。もうテスト終わった、ってことは一学期が終わるってことか。つまり………夏休み!
「私は習い事があるからそんなに暇じゃないわ」
「習い事?」
「花道、茶道、香道とかよ」
「え、凄い………」
「相変わらずハードだねぇ、明美は」
「まあ、半ば強制だけど。だんだん嫌いじゃなくなってきたわ」
強制って、親に強制させられているのだろうか?
気になったが、他人の家庭環境を聞くのは野暮かと思い、その疑問には蓋をすることにした。
「黒影っちは?」
「えっと………バイト入れよっかな。暇だし」
配信、とは言えないので無難な回答をする。とはいえ、バイトを増やすつもりなのは本当だ。
「そういえば親御さんたちは海外に出張してるんだっけ。仕送りとかないの?」
「流石にあるよ。でも増やしてくれって言うのは厚かましいし、お金はいくらあっても困らないから。まぁ、全然その仕送りだけで遊んで暮らせるんだけどね」
僕は苦笑まじりに説明する。
「へー!えら!」
「黒影さんらしいわ」
偉いと称賛され、つい照れてしまう。
「ちなみに私はの予定ね、なんもない!」
「そっか〜何も無いのよね〜」
「何も無いのも良いよね!」
「なんだろう、頑張ってる二人の後に言ったからか凄いみじめに感じる………」
杉山はあはは、と乾いた笑みをこぼす。
「で!!言いたいことは、一緒に遊びに行こうって話!!!」
中学生の頃も友達はいたが、夏休みに一緒に遊びに行くような関係の友達はいなかった。いないと言うか、僕が晴翔と遊びすぎてて、晴翔以外の友達と遊ぶことがそうそうなかっただけだ。
「もちろん良いわよ。どこかバカンスにでも行きましょう」
「フィンランドとかどう?」
僕は中学一年生の頃に避暑で訪れたフィンランドを思い出す。あの豊かな自然をもう一度味わいに行きたいものだ。
「二人ともリッチすぎない!?もっと、なんか、こう、あるでしょ!水族館とか!」
「水族館?海の方が良いわ」
「アメリカ西海岸とかどうかな」
「良いわね。賛成」
「じゃあいつ行く………」
「ちょっと待ったぁああ!!!!何二人で勝手に決めてんの!!というか何でそんなに海外行きたがるのよ!!!」
何でって、やっぱり長期休みといえば海外旅行だよね?
「国内よ!国内!」
「国内?別にそっちでも良いわ」
「じゃあ国内でどっか探す?」
「はぁ………なんかこの海外のくだり去年もあったんだけど。まさか黒影っちもそっち側とは………」
「?」
「海行きましょうよ。海。やっぱり夏は海よ」
「賛成〜」
「じゃあ海行こう!!」
そこからトントン拍子で、夏休みに三人で海に行くことが決まった。
「明美と黒影っち、どこか感性が似てるなぁ………」
「黒影さんと感性が似ているなんて………ちょっとあんまり公の場でそんな破廉恥なこと言わないでちょうだい」
「いや何が破廉恥やねん。というか、明美はいつまでさん付けしてるのよ」
「僕は別に気にしないけど………」
「く、黒影?………れ、玲?やっぱり異性を呼び捨てなんてそんな………あ、でも今は同性だわ…」
「黒影さんでも、黒影でも、玲でも何でも良いよ。好きなように呼んで!」
「じゃ、じゃあ………お言葉に甘えて…………玲、って呼ばせてもらうわね」
「うん!………これからもよろしくね!柊!」
「こちらこそよろしく。…………玲」
お互いの名前を呼び合ったは良いものの、気恥ずかしくなってしまい、二人揃って顔を赤くして俯かせてしまった。
「余計なこと言うんじゃなかった………」
杉山の悲痛な呟きが聞こえた気がした。
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