黒影っちのお家でお勉強会
「お邪魔しま〜す」
「お邪魔します」
お勉強会というイベントが黒影っちのお家で開催することが決まってから。
まだかまだかと待ち続け、ついにその日が来た。
私と明美は二人仲良く黒影っちの扉をノックすると、扉からTシャツを着た黒影っちが顔を覗かせる。
「あ、いらっしゃい!」
そう笑顔で私たちを出迎え、黒影っちはお茶でも注ぎに行ってくれるのかとてとてとキッチンに向かっていった。
うん。今日も天災級に可愛い。
「二人は座って待ってて!先に勉強始めちゃっても良いよ!」
キッチンから声が届く。私たちは各々返事をしながら、テーブルに用意された椅子に座る。
そういえばこの前お見舞いに来た時、ここには椅子が一つしかなかったような……わざわざ用意してくれたのか。
………ん?よく見たら床も前よりピカピカになってる?
私は黒影っちが懸命にお家を整える姿を想像し、破顔する。別に意識しなくても良いのになぁ。変に負担になったら嫌だし。
そんなことを考えていたら、キッチンからやたらいい匂いが漂う。
「ハーブの香りかしら。………カモミールっぽいわね」
「かもみーる?」
明美もそれに気付いていたのか、黒影っちがカモミールを淹れているのではないかと推測する。
「よくカモミールってわかったね、柊」
すると私たちの会話が聞こえていたのか、黒影っちが感嘆したように言う。
「ま、まぁ、このくらいならわかるわよ。それにしても、わざわざカモミールを淹れてくれるなんて。感謝するわ」
「かもみーるってなに?」
「せっかく来てくれたんだし、ちょっと張り切っちゃった。このカモミール、集中力が高まる効果があるらしいよ」
そう言いながら、黒影っちは私たちの前に英国風のティーカップを置き、お茶を注ぐ。
そんなところまで考えていたなんて、黒影っちは将来有望だね。家庭的な良い妻になりそう。
「へぇ。それはすごいわね。美味しくいただくとするわ」
「だからかもみーるってなに??」
明美は上品にカップを持ち上げお茶を飲む。明美は時々、どこか高貴さを感じる立ち振る舞いをすることがある。彼女の容姿とも相まってその様は非常に絵になる。
「うん。美味しいわ」
「よかった〜!」
結局かもみーるってなんやねん。
そう突っ込みたくなるが、すでに二人の中で優雅なお茶会のような雰囲気が醸し出されている。初心者がこれに突っ込むのも野暮な気がする。
かもみーる?鴨…………鴨ミール?
ミールって確か、粉状のものって意味だったよね……。
ってことは…………………鴨を粉状にしたもの………!?
このお茶が!?
脳内で、デフォルメ化された可愛い鴨が悲鳴を上げながら粉状になっていく。
私は驚愕のあまり思わず目を見開いてこのお茶を凝視してしまう。その次に、これを優雅に嗜む二人の姿も。
「……………人でなし!」
「菊が壊れた」
「僕は多分、人でなしじゃないよ………?」
「鴨をミールにして飲むなんて!!恐ろしい………」
「?………………あ、もしかしてカモミールのこと?カモミールはお花の名前で、それから取った紅茶がこれだよ」
「これを本気で言ってるのが怖いわ」
私が戦々恐々としていると、明美は呆れ顔になってしまった。黒影っちはどこか困ったように、ティーカップを両手で支えながらカモミールとやらの説明をしてくれた。
「…………………なんだぁ、紅茶の名前のことか……」
…………なんか、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた……。
恥ずかしさで顔が赤くなっていくのを感じる。二人にバレたくなくて、誤魔化すようにカモミールとやらをぐいっと飲み干す。
「……ごほっ!けほっ!けほっ!!!」
一気に飲み込んだせいか、勢いよく咽せてしまう。
「ぷふっ」
「杉山、大丈夫?」
明美が鼻でわらう。一方、黒影っちは背中をさすって心配してくれた。性格でるなぁ。
「けほっ……うん、ありがとう」
「くふふっ………菊って本当に単純と言うかなんというか………」
明美が今度は声を出して笑い始めた。嘲の色が見えなかったから本当に面白がっているだけなのだろうが、無性に腹が立つのでギロッと睨む。
「ちゃんとお茶はゆっくり飲まなきゃだめだよ?」
「はぁ〜い………」
黒影っちの溢れ出る母性の影響なのか、母親に叱られる子供みたいになっちゃっている。
「……………勉強しよ!!勉強〜!」
恥ずかしさで居た堪れなくなったので、大声を出して無理やり話題を変える。
「声デカっ」
「確かに、そろそろ勉強しようか〜」
明美は顔を顰めていたが、黒影っちは察してくれたのかわからないが私に便乗してくれた。
こうして3人は勉強に集中し始め、賑やかだった居間は静まる。
途中、雨がぽつりぽつりと窓を叩く音がしたが、3人はそれに気づかないまま時間が過ぎていった。時にはお互いにアドバイスし合い、実りのある時間を過ぎしたのだった。
◇◇◇
「ふぅ………もう英語見たくな〜い………!!」
勉強会が本格的に始まってどのくらい経ったのだろうか。
英語を身すぎて頭がおかしくなりそうだった私は、つい音を上げてしまう。
「一旦休憩しましょうか。私も疲れたわ」
そう言いながら、明美はぐーっと伸びをする。
………こうして見ると、意外と明美にも胸、あるんだな。ほとんどないに等しい更地だと思っていたけど、少々明美のことを見くびっていたらしい。
「なんか失礼なこと考えたでしょ、菊」
「ギクリ」
なんでバレた……?
ジト目で睨まれた私は思わず萎縮してしまう。
「おやつでも食べる?」
黒影っちはいつの間にかペンを置いていた。頭の後ろに両腕を組み、微笑を浮かべながらそう聞かれる。
………明美とは歴然の差があるな、こりゃ。彼、いや彼女の姿勢によって強調された胸部を見てそう嘆く。
これはすごい。これが後天的なものであることが尚更ありえない。
それに、めちゃくちゃ柔らかそう……。揉んでいいかな……?
私はぶんぶんと首を横に振り煩悩を祓う。
明美の方をチラリと見やると、明美も黒影っちの「それ」に目線が釘付けになっていた。
明美は私の視線に気付いたのか、頬を赤らめながら言い訳をする。
「………その、これは別に不純な理由があるわけではないのよ、たまたま………」
「私もだからしゃーない。明美、正直に生きよう」
「?」
明美は私の言葉を聞き苦笑する。
黒影っちは話の趣旨が掴めないと言った顔できょとんと私たちを見ている。
「……にしてもなんであんなに大きくなるのかしら………」
哀愁漂う様子で、明美は自分自身の胸と黒影っちの胸を交互に見ながらそう嘆く。
こいつ、私にバレたからか恥じらいを捨てて胸の話題を続けやがったな。
「まぁまぁ………。まだ明美にもチャンスあるって。多分」
「妙に上から目線なのがムカつくわね」
「まあね〜?私は平均のちょい上くらいだし〜?そんなに気にしないし〜?」
明美が恨めしそうにこちらを睨みつけてくる。怖い。
「あ………もしかしてお胸の話………?」
明美と啀み合っていると、黒影っちが話題を理解したようで、納得したような声を出した。
「……えっと…柊も、今のままでも十分…綺麗だし、そんなに悩むことはないと思うよ………!」
黒影っちは少し恥じらいながらそう言った。
明美は突然褒められ面食らっていたが、脳が意味を理解した途端面白いくらいに顔が真っ赤になっていった。
「あ、ありがとう……………」
そして二人とももじもじして黙り込んでしまった。
なんか、甘くないですか??
今だけは、私の胸が小さくないことを後悔したのだった。
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