先輩とコラボが決まりました
「____ここまでが試験の範囲よ〜〜〜!良い子のみんなはちゃんと復習するのよ〜〜?」
「「はぁ〜〜〜い」」
「それじゃあ、授業終わり!まったね〜〜」
そう言い残し、小柄な数学の先生が教室から去っていった。
ふぅ……………やっと6限まで終わった!
にしても、あの人のクセの強さは、高校生活が始まって二ヶ月経つのにまだ慣れないなぁ。そんなことを思いながら帰りの支度をしていると、杉山と柊が僕の席にやってきた。
「黒影っち〜〜〜〜やばいよやばいよ〜〜〜〜」
「杉山、どうしたの?出川○郎みたいになってるけど」
「だってぇ〜〜〜〜数学なんもわかんないんだも〜ん!!!」
「菊は中学の頃から数学苦手だったわね。高校に入ったからといって、急に理解できるわけないわ」
なるほど………………。
どうやら杉山は、期末試験まであと一週間だというのに、さっきの数学の授業が何もわからなくて危機感を持ったらしい。
「そう!マジでやばい」
「さらっと心の中読まないで」
「菊はさっさと勉強しないのが悪いのよ。今からでも遅くないから勉強し始めなさい?」
柊がど正論を杉山に叩き込む。
「………でしょ!?というわけで〜〜第一回お勉強会をやりたいと思いま〜〜す!!!」
すると杉山はしてやったりといった顔で、そう高らかに宣言した。
「絶対一人でやった方が捗るでしょ。わかんないところはAIにでも聞けば」
「あ〜〜そんなんだから明美は友達が増えないんだなぁ〜」
「ぼ、僕はお勉強会、賛成かな」
みんなでお勉強するの、ちょっと憧れだったんだよね………。
控えめに僕がそう言うと、怠そうだった柊の顔つきが急変した。
「勉強会、やるに決まってるでしょ。やるわよ」
「急にどうした明美」
「どこでやろっか………?僕のお家、来る?」
「エッ!?いいんですか!?」
「是非そうしましょう」
「うん!もちろん大丈夫だよ!じゃあ、明後日の放課後とかはどう?」
「いいね!そうしよう!!」
「賛成だわ」
◇◇◇
「お疲れ様〜!」
「ん〜〜お疲れ〜〜」
バイトが終わり、花凛と駅のホームで別れる。
そのまま僕はやってきた電車に乗り、沈みゆく夕陽を眺めながら1日の終わりを実感する。
家にたどり着いた僕はソファにもたれかかり、スマホを開くとマネージャーの花月さんからメッセージが届いていることに気付く。もしやと思い慌てて確認する。
『お忙しい中失礼します。花月です。全体コラボが決まったので概要を説明いたします。この全体コラボはすまいるほーむ初となる3Dでの配信となります____』
懇切丁寧な長文が花月さんから送られていた。
要約すると………なんと全体コラボが決まった上にそれは3Dでの実施でかつ、そのコラボ日が再来週の日曜日に決まったということらしい。
う〜ん………。思った以上に早く決まっちゃったな………。
一期生の二人とコラボして慣れよう!という作戦を早く実行する必要があるのかもしれない。
とはいえ、大先輩にいきなり「コラボしませんか〜!!!」なんて殴り込みに行けるほどの勇気はない。それは勇気と言うより厚顔無恥なだけな気もするが。
ここは一つ、センパイにアドバイスをもらうしかないな。
僕は不慣れな手つきでLIMEを操作し、「桃花のLIMEʕʘ̅͜ʘ̅ʔ」と書かれているところをタップする。
僕とひるね………桃花のメッセージのやり取りが表示される。
……と言っても。普段はディスコードという連絡アプリの方でやり取りしているため、まだLIMEの方では全然やり取りがないのだが。
せっかくだしLIMEの方も使おうと思ったのだ。
『ひるね〜〜〜!!至急アドバイスをください!!(>ㅅ<)』
しばらくトーク画面を開きっぱなしにしていたら、すぐにひるねから返信が来た。早いなぁ。
『答えられることならなんでも答えてあげるよー!』
さっすがひるねセンパイ!頼るべきは同期だね。
僕はすぐに文字を打ち、メッセージを返す。
『一期生とコラボをしようと思ってるんだけど、なんて声かけたら良いかわかんなくて………』
すぐに既読マークが付く。しばらく待っていると、再びひるねからメッセージが送信された。
『私はリン先輩とコラボしたから、もしフローラ先輩とコラボしたい時はノアに話を聞いた方が良いと思う!そのことを前提に話すね』
非常にありがたい……!
ちなみに、なぜノアではなくひるねにアドバイスを求めたかというと、僕はリン先輩とコラボしたいと思っているからだ。
フローラ先輩のあのテンションが高い感じを、初コラボでやるとすごく疲れそうだからリン先輩とやりたいのだ………。フローラ先輩が嫌いなわけではない。
『私がコラボした時は、リン先輩から挨拶のメッセージが来た時に誘ったんだよね〜』
続けてメッセージが送られる。
『そしたら二つ返事で承諾してもらって……そっから通話とかして、コラボ配信したって感じかな〜』
う〜ん、コミュ力が強すぎる………。
やっぱり今の僕に足りないのは大先輩とコラボする覚悟なのかな……。なかなか踏ん切りがつかない。
『ゆいもちゃんとメッセージ打ってお願いすれば、絶対行いけるって!リン先輩とのコラボ楽しみにしてる!』
コラボ楽しみにしてる、か………。
僕は根本的なところを忘れてしまっていたのかもしれない。
メメちゃんみたいなライバーになりたくてvtuberになったのに、何も進歩していない。
昨日の配信でファンたちも一期生とのコラボを待望していることがわかった。
僕が一つ殻を破るためにも、コラボを望んでいるリスナーさんたちのためにも、さっさと誘うべきだ。
『ありがとう。気持ちの整理がついた』
ひるねに感謝のメッセージを送ってから、ディスコードアプリを開きリン先輩とのトーク画面を開く。
『リン先輩、夜分に失礼致します。今度、是非一緒にコラボさせていただきませんか?色よいお返事お待ちしております。』
ちょっとかしこまりすぎたかな……。同じ事務所のライバー同士そこまでかしこまる必要は無いとは思うが、人見知りとビビりが発動してしまった。
しばらくテレビを眺めて待っていると、リン先輩からお返事が来た。
『もちろんOKだよ!せっかくだし日曜日のゴールデンタイムにやろう!』
『では来週日曜の17時はどうでしょう?』
『いいね!賛成!内容はまた話し合おう!』
『お忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いします』
コラボが決まった………。
僕はスマホをそっとテーブルの上に置き、深呼吸する。
初めて先輩とコラボする。どうしよう、過呼吸で死なないかな……。
面白いダジャレ考えてこないとシメられるかな……。
リン先輩のファンに「誰コイツ?」って言われないかな……。
…………まぁ、なんとかなるか。
この現実から逃げるかのように、僕はふらふらとキッチンに向かったのだった。
200PT↑ありがとうございます!!!
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