初めてのコラボ配信
柊は僕が説明したこと全てを信じ、受け止めてくれた。
さらに柊は、「大変だったでしょう。何かあったら私を頼りなさい」とまで言ってくれた。
「はい、これ。私の連絡先」
「あ、ありがとうございます」
僕のLIMEに杉山さんと家族以外の連絡先が増えたことに頬を綻ばせつつ、彼女に改めて感謝の言葉を告げる。
「その、今日は本当にありがとう」
「当たり前よ。……そういえば、菊にはこのこと打ち明けるつもり?」
柊にそう質問され、僕は動揺する。杉山は柊と同様、大切な親友なのでずっと隠し事をするのは気が引けていたのだ。拒絶されたらどうしよう、なんてことを考えていたが、僕の親友たちはそこまで薄情じゃない。現に柊は僕という存在を受容してくれた。それが何よりの証拠だ。
「うん……あんまり先伸ばしてもアレだし、明日話そうかな」
「そう。……無理して体調崩すとか馬鹿な真似しないようにしなさいよ。私はこれで帰るわ。」
「ありがとう、柊。また明日、よろしくね」
そう僕が返すと、柊は一瞬微笑み返し帰っていった。
僕も汗が冷えてしまい少し寒かったので、家に帰ってシャワーを浴びることにした。
そしてシャワーを浴びた後寝巻き姿でソファに寝っ転がると、疲労がどっと押し寄せてきた。
「まだ配信まで一時間くらいあるか……ちょっとだけ、お昼寝するか」
僕は目を閉じ、睡魔に身を任せた。
◇◇◇
ピコンピコン、とスマホが鳴り続ける音で僕は目が覚めた。
「……はっ」
僕はまさかと思い、急いでスマホを確認するとひるねから大量のメッセージが届いていた。
『始まるにゃよ』
『寝てる?』
『起きてにゃ』
『起きてにゃ』
『起きてにゃ』
「…」
時刻を確認すると、15時30分だった。配信の開始は15時だったはずだ。
「まずいーー!!!!まずいまずい!!!」
初めてのコラボ配信を30分遅刻するという大失態を犯したという事実に気付き、僕は思わず発狂する。
しかも、もう枠は開いていたのだ。つまり、ひるねが一人で回してくれたということになる。
「や、やばい…」
僕は配信用のPCを起動する傍ら、ひるねにメッセージを返す。
『本当にごめん!!!今起きた!!』
『あ、やっぱり寝てたのにゃ?』
『まことに申し訳ございません。その通りです』
『ゆいがこんなことになるなんて珍しいにゃねーw面白いから許すにゃ。一緒に配信するやり方はこの前説明した通りにゃ〜』
『本当にありがとう!!今すぐ行きます!!』
PCが立ち上がり、神速の如き速さで「朝日ゆい」のアバターを起動させ、昨日ひるねが教えてくれた手順の通りにする。そして、僕はなんとかひるねの枠に滑り込む。いや、間に合ってないけど。
「あ、ゆいちゃんやっと来たにゃ」
【キタ!!!!!!!!】
【きた】
【まさかのゆいちゃんが寝坊w w w w w w w w w】
【やっときた!!!wwwwww】
【ひるねリスナーワイ、完全にゆいちゃんをそういうキャラだと認識】
【きたーーー!!!w】
「皆さん、こんゆい!朝日ゆいです!寝坊という大失態、誠に申し訳ございませんでした!!!」
【こんゆい〜〜〜〜〜w】
【こんゆい!!!!】
【過去一声でかいwwwwwww】
【こんゆい!!!】
【流石におもろいwww】
【初コラボ配信で寝坊をかます女】
【おもしれー女w】
「本当だにゃよ〜!ゆいちゃん、寝坊とか絶対しなさそうな性格にゃのに!」
「ちょっと色々あって…疲れたからちょっとお昼寝しよ、と思って寝たら寝坊しました……」
【お昼寝しちゃったかーw】
【まだお昼なのに疲れたって何したん】
【思ってたより二人仲良いな】
「ま!反省は後にして、とりあえずマラクエやろうにゃ!視聴者さんも待たせちゃってるにゃ」
「そうだね!待たせてしまって本当にごめんなさい…!」
「今回は、マラクエをプレイするゆいちゃんを私が見守るという内容だにゃ〜」
「最後まで見てね〜〜終わりは日が沈みかけるくらいまでかな」
【ういっすーーー楽しみー!】
【やっと始まるぜ〜〜】
【マラクエ〜〜!!ゆいちゃんがプレイするのか!】
◇◇◇
こうしてリスナーさんたちに謝罪を認めてもらえた私は、ひるねと一緒にマラクエをプレイし始める。
「ひるね見てみて!この幼馴染の子、めっちゃ可愛いくない?」
「確かに可愛いにゃ。人気投票でも上位に食い込んでるらしいにゃね〜」
「やっぱり!?この天真爛漫な感じとか、主人公に対してしっかr…」
「ゆいちゃんの方が可愛いけどにゃね〜」
「……ッ、聞いてないよ!ばか!」
「にゃははは!!」
【何を見せられているんだ…】
【なんでこんな距離近いのw w w w】
【尊い】
【ひるゆいてぇてぇ】
【ゆいちゃんを口説くなw】
「そろそろ中ボス戦かにゃ?」
「そうだね……それっぽい雰囲気だね」
【ドキドキ】
【ここの中ボスなんだっけ】
「あ、コメントでのネタバレはなるべく控えてね!…ってそんなこと言ってたらやっぱり中ボスじゃん」
「ゆいちゃんがんば〜」
「サクッと倒しちゃうよ〜」
◇◇◇
「レベル上げもしたのに、マジで勝てない……」
「あはは〜まぁここは多くの初心者が苦戦する場所だから仕方ないにゃね〜」
【こいつだけ強いのまじで記憶に残ってる】
【もう3時間経つのやばすぎ】
【ゆいちゃん頑張れ】
「けっ、どうせ僕じゃ勝てないんですよ〜だ」
「やさぐれゆいちゃん、助かるにゃ」
「なにその特殊すぎる需要…」
「冗談はさておき、ゆいちゃん疲れてない?大丈夫にゃ?」
「うーん……結構配信始まってから時間経ってるし、手詰まってきたしでそろそろ引き際じゃない?」
「賛成だにゃ〜」
「じゃあ終わりにしよっか!今日は本当に付き合ってくれてありがとね、ひるね」
【マジで面白かった!またやってほしい!】
【思ったより仲良くて驚いた】
【中ボスから逃げるな】
「そうだね。またひるねとしたいね〜」
「もちろん私なら大歓迎にゃよー!次は遅刻しないでにゃ?」
「それは本当に…申し訳ございません………」
「あはは!それは置いといて、ゲーム配信以外もしたいにゃね〜」
「マシュマロ読みとか一緒にやってみたいかも!」
「やりたいにゃね〜〜でも、ゆいちゃんとならなんでも歓迎だにゃ」
「……ありがとう」
「あははー!ゆいちゃんが照れたにゃ〜!」
「茶化さないでよー!照れてない!」
「じゃあリスナーさんのみんな、またにゃ〜!おやすみ〜〜」
「あっ逃げた……ゆいの民のみなさん、おつゆい!」
【wwwおつゆい〜〜〜】
【まじで面白かった!!!おやすみ〜〜】
【おつゆい!!!!】
【おやすみなさいzzz】
【おやすみ!!】
そうして流れるように配信が終わり、音が完全に切れてることを確認してから大きな吐息を吐く。
「ふぅ〜〜疲れた〜〜」
初めてのコラボ配信、視聴者さんのコメントを見るになかなか好評ぽい。良かった〜
遅刻という大失態を犯しつつも、リスナーさんたちには許してもらえたみたいで僕は心が救われた。
とそんなことを思っていると、マネージャーさんから連絡がきてドキリとする。
『お疲れ様でした。遅刻などしないように重ねて注意お願いします。次からは減給も目処に入ってしまいますので、ご注意ください。』
「ひぇ……」
マネージャーさんからの容赦ない通知に怯えつつ、早速明日のお出かけには寝坊しないように努めて早寝するのであった。
多忙につき、投稿遅れました。ごめんなさいm(__)m
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