第15話【呑み込む憎悪】(前編2)
前回、 突然現れた次元迷宮に迷い込んでしまった清火……現世では清火を救出すべく三大ギルドのリーダー達が迷宮に乗り込んでいった。
「……何なの……この迷宮……」
「明らかに普通じゃないね……」
「……気を引き締めてゆくぞ」
迷宮に入った三人はその異様な光景に息を飲む。
そして三人は黒い炎で燃え盛る街の中を進んでいった。
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「街が迷宮になっているなんて趣味が悪いわね……」
どこまで進んでも燃える街の風景しか広がっていない迷宮にスカーレットは不気味さを感じる。
すると……
『あぁぁぁ……』
「ッ! ? 」
どこからともなく黒い影のような怪物達が三人を囲うように現れた。
「ちょっと、 いきなり何なの! ? 」
「二人は下がって下さい、 ここは僕が……」
そう言ってエンペラーは二人を背後に下がらせると着けていた手袋を外した。
そしてエンペラーが指を鳴らした瞬間、 地面から蒼い炎が巨大な火柱を作るように何か所からも溢れ出した。
怪物達は火柱に巻き込まれ、 全滅してしまった。
「……さっ、 行きましょう」
そう言ってエンペラーは手袋をはめ直し、 歩き始めた。
「本当にあなたは相変わらずね」
「あれでまだ本気ではないと言うからの……」
エンペラーの力を見た二人はそんなことを呟いた。
…………
その後、 しばらく三人は街の探索をしていた。
「……本当に何も無いのね」
「さっきから出てくるのはせいぜいAクラスのボス級魔物ばかり……これはモルスさんの心配はいらないようだね」
「二人とも油断はするでないぞ……奴らは狡猾じゃ、 何しでかすか分からんぞ? 」
白刃以外の二人はすっかり油断しきっていた。
どうやら迷宮に出てくる怪物の戦闘能力は低いようで、 三大ギルドのリーダー達にとっては本気で戦うまでもないようだった。
その時だった……
『……ッ! ! ? 』
三人は突然異様な気配に足を止めた。
「な……何この気配……」
「儂の歩みを止めるなんて……一体……」
「……まさか」
三人が警戒していると……
『ドゴォォォォン! ! ! 』
三人の目の前に突然あの怪物の頭を掴みながら清火が横の壁から飛び出してきた。
「……ん? あれ? エンペラーさんにスカーレットさん、 それに白刃さんまで……一体どうやってここに? 」
『モルスさん! ? 』
清火の姿を見た三人は驚愕する。
「と……とりあえず良かった……でもまず事情を……」
「あ……はい……」
そして清火は今までの事情を話した。
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「……なるほどねぇ……まるでこの迷宮……モルスちゃんの為にあるみたいね……」
「近頃変なモノにばかり会うんですよ……お陰でこんなになってしまって……」
「それは……災難ですね……」
「それとさっき気が付いたんですけど……この姿……元に戻れないんですよ……」
それを聞いたリーダー達はため息をつく。
こんな姿じゃ街も歩けないし……どっちにしても閉じ込められてるって状態なんだよね……
しばらく一同は考え込んでいるとエンペラーが口を開いた。
「とりあえずこの迷宮のボスを探しましょう……出ることができても攻略ができていないんじゃ意味がない」
「そうですね……」
そうして一同は一緒に迷宮の探索を始めた。
探索中も怪物達が湧いて出てくるが清火は隙も与えずに怪物達を一掃していく。
その様子を見た三人は唖然とする。
「モルスさん……本当に化け物みたいですね……」
「みたいじゃなくて本当に化け物だと私は思ってますよ……」
そんな調子で三大ギルドのリーダー達の出る間もなく清火は迷宮の怪物達を殲滅していった。
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しばらく一同は迷宮の更に奥へ進んでいくと清火が最初に来た十字架の前までたどり着いた。
「ここがモルスさんの言っていた十字架ですか……」
「はい……いつ見ても不気味です……」
……今考えるとあの怪物がボスだった可能性もあるか……
清火は十字架を見てあの怪物の事を思い出す。
そして一同は十字架の周辺を調べていると……
「……ん? この文字……」
清火が十字架の下に謎の魔法陣があるのを見つけた。
地面に魔法陣……ってことはボスは召喚系……?
魔法陣を眺めながらそんな事を考えていると
「ッ! 皆さん離れて! 」
突如魔法陣の文字が光りだし、 十字架が地面へと沈んでいった。
発見された瞬間発動する系か……
「……この感じ……ヤバいんじゃないの! ? 」
「うーむ……この気配……儂らでどうにかなるような相手ではないぞ……」
「……いや……もしかしたら……モルスさんなら……」
そう言うとリーダー達は清火の方を見る。
あぁ……私が戦ってくれって事ね……
「分かりました……でも倒せるかは別の話ですから」
そう言って清火は魔法陣の前に出た。
そしてしばらく待っていると魔法陣の中から人間と思しき影が現れた。
それは小学生と変わらないくらいの大きさで、 体系的に女のように見える。
顔の部分には目と思われるモノが光を放っていた。
するとその影は清火の前まで歩いてきた。
「……最近話せる魔物によく会う気がする……」
清火は謎の影に向かってそう言うと影は答える。
『……お願い……この世界を……『殺して』……』
その言葉には次元迷宮の消滅を願う意図が込められているように聞こえる。
魔物が迷宮の消滅を望むなんて……次元迷宮は魔物達が創り出した世界じゃないという事……か……?
「……まぁいい……さっさと終わらせよう……あなたも望んでるでしょ? 」
清火がそう言うと影は頷いた。
すると次の瞬間、 影は清火の目の前まで瞬間移動し、 清火の首を掴んだ。
「モルスさん! 」
エンペラーは慌てて手袋を外すと今度は自身の周囲に氷の槍を出現させ、 影の方へ飛ばした。
しかし影が氷の槍の方を見た瞬間、 氷の槍は一瞬にして蒸発してしまった。
「なっ……! 」
「やめなさいエンペラー! こっちが狙われたら無事じゃ済まないわよ! 」
「……あの反応速度……儂の剣を当に越えとる……もし攻撃されたら儂でも対処しきれん……」
謎の影の強さに三大ギルドのリーダー達は手も足も出ない様子だった。
そして影は再び清火の方を向く。
「……あなた……本気じゃないでしょ……」
清火は首を掴まれていたがその手からは殺意が伝わってこなかったのだ。
すると……
『……お願い……ワタシを……殺して……』
影は悲しそうな声でそう呟くように言った。
心なしか影の目から涙が流れているように見えた……
「……本当にいいのね……」
『……お兄ちゃんと……同じ場所へ……』
……あの怪物の事か……
影の言う兄について清火は心当たりがあった。
……つまり私に吸収されたいって事か……
「……分かった……心配しないで」
清火はそう言うと影の顔に手を添えた。
もう……この力の使い方は慣れた……これが最終試験のようなものね……
そう思いながら清火は目を閉じる。
すると影の姿が足元から徐々に消えていく。
『……これで……やっと……』
「……次元迷宮を『殺す』っていう願い……忘れないから……安心して」
『大丈夫……ワタシ……あなたの……『心』を……信じる……』
その言葉を最後に影は完全に消えてしまった。
影が消えた瞬間、 清火は無性に寂しさを感じた。
何だろう……この悲しい気持ち……初めて会ったはずなのに……彼女の事を……大昔から知っていたような……
清火はそんな不思議な感覚を味わいながらもふと我に返った。
気が付けば清火の姿はいつもの姿に戻っており、 大鎌からも炎が消えていた。
……なるほどね……ここでやっと自由に姿が変えられるってこと……
「……終わったんですか? 」
清火の様子を見ていたリーダー達は清火の方へ寄ってきた。
「はい、 どうやらあの影みたいなのがボスだったみたいです」
するとスカーレットが十字架があった場所にあるモノが出現しているのに気付く。
「あれ、 コアじゃない? 」
「ふむ……ボスを倒さんと出現しない仕様だったのか……」
「なら今回はモルスさんがいて助かった……あの魔物は僕らの戦闘能力を遥かに上回る力を秘めているようだったし」
「まぁ……私が変な事に巻き込まれなかったらこんな事態になってなかったんですけどね……」
そんなやり取りをしながら一同をコアを持って迷宮の出入口へ向かった。
…………
コアを持って清火とリーダー達が迷宮を出るとそこには拳一達が待っていた。
「モルス様! 良かったぁ……」
清火の姿を見た拳一は安心した様子で胸を撫で下ろす。
「すいません、 心配させて」
「いえ、 これはある種の事故ですから……とにかくご無事で何よりです」
すると三大ギルドのリーダー達は拳一にコアを渡し
「それじゃあ僕らはこれで……」
「報告はモルスちゃんから聞いて頂戴、 それじゃ」
「生憎儂はもう疲れてしもうてのぅ……老体に迷宮の攻略はやはり応えるわい……」
そう言って三人は早々に帰ってしまった。
……やっぱりSランクの攻略者ってどうも性格に難がある……面倒な事は私に押し付けて帰っちゃったし……全く……
そんな事を考えながら清火は一つため息をつくと拳一に今までの出来事を報告した。
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「なるほど……そんなことが……」
「全く運が悪いのか良いのか……」
「……とにかくこの事は会長にも伝えておきます」
「よろしく……」
そして拳一はその場を後にした。
……さて……お次は……
清火は雷の方を見る。
雷は少し呆れた様子で清火を見ていた。
「本当に何でも巻き込まれるのね……」
「心配させてごめんなさい……」
「……もう何だかモルスさんなら大丈夫な気がしてきたよ……ここまで危険な迷宮に入ってるのに傷一つ付かずに帰ってくるもの」
「は……はは……」
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ひと段落着いた頃、 清火は雷に今までの出来事を話した。
「……なるほど……それならモルスさんの強さに説明が着くわね……」
「本当に私もどうしてこんなことに巻き込まれたのか分からないんですよ……」
本当に突然だったからなぁ……でもあんな事が無ければ今頃死んでいたし……
清火は話している内に自身の異常性を改めて感じた。
「……まぁ何がともあれ……あなたに何があったのかは分かったわ……それで、 今回また手に入れた力って何なのか見せてくれる? 」
「あぁ……うん……」
そして清火は雷に変形した姿を見せた。
「……はぁ……なるほど……悪魔に死神……いよいよ見た目も人間じゃ無くなってきたわね」
「ちょっ……それは言わないで……」
……しばらく変身はやめよう……あまりにも強すぎるし……雷さんみたいなことを言われるのなんか人として傷つくし……
二人がそんなやり取りをしているとローナが部屋から出てきた。
「何か凄い力を感じると思ったら……キョウカ、 また何かやらかしたの? 」
「やらかしたって……まるで私が毎度厄介事を持ち込んでいるみたいなんだけど……」
まぁ……実際そうだけどさぁ……
「はぁ……何か疲れた……今日はもう帰る」
「そうね、 朝からこんなことに巻き込まれて気疲れしない方がおかしいわ」
「また何かに巻き込まれたら土産話でも聞かせて……」
私が厄介事に巻き込まれる前提かい!
清火はそんなことを思いながらも雷達と別れ、 ギルドを後にした。
…………
一方、 アメリカの協会本部にて……
※読みやすいように会話は日本語表記にします。
「……日本に新たなSランクの攻略者が現れたようだな……」
「えぇ……それにかなり強力な……魔物の力を無限に吸収するようです……」
本部ビルの一室で謎のスーツの男達が清火について話をしていた。
「ほぉ……今までに見ないタイプだ……我が国にもそのような攻略者はいない……」
「彼女を引き込むのは難しいかと……」
「彼女? ……その攻略者は女なのか……」
「はい……しかし彼女は普通ではありません……何か目的を持って魔物達の力を奪っている……そして今や一国の軍隊を越える力を持っています……」
それを聞いた男は考える様子を見せる。
「……武力での交渉は不可能か……だが……諦める気は無い……」
「……ここはまだ様子を見ましょう……引き続き職員と連携して攻略者モルスを監視します」
「あぁ……頼む……」
するともう一人の男は部屋から出て行った。
「……『モルス』……か……一体君は……その『死』を持って何を求める……」
部屋で一人になった男は夜の街を眺めながらそう呟いた。
続く……




