↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/20

高校一年生 九月

「ううー……。もうだめだー……。おしまいだー……」

「どうした? 五十嵐の霊圧が感じなくなったぞ」

「絶をつかってるからね……オーラも見えないでしょ」

「戦闘力たったの5か。ゴミめ」

 いつもの放課後の部室。私たちは見る人が見れば仲良しだねと言われるような会話をする。

 だが私から言わせれば、桜井は私の方を一切見ずに漫画を読んでいるし、私は私で今日は本ではなく手に持った一枚の紙を眺めている。

 その紙を再度みて、そして再度唸る。ううー……。

「ああ。休み明けやった実力テストの学内順位か」

 ようやく桜井が私の方を見てくれ、何に悩んでいるかわかってくれたみたいだ。

 そう、あの怒涛の夏休みの後。まだ感傷に浸りながら登校すると、担任というか教師どもが抜き打ちで実力テストをしてきたのだ。

 さすが進学校……。落ちぶれた私にはとても難しいテストでした、まる。

「……さくらいはー。どうだったのー?」

 机に突っ伏しながら私は桜井の方を向いて聞く。

「……ほらよ」

 桜井はカバンから私の持っているのと同じ紙を取り出して私に渡してくる。

 同じサイズ、材料を使っているはずの紙なのに、書いてある内容は全く異なるものだった。

「……が、学年一位……。しかも全教科九割こえてるし……」

「簡単すぎたな。この程度だから自称進学校とか言われるんだ」

「うー……。いじわるー……」

 私が恨めしそうな顔で桜井を見ると、桜井は冷酷に勉強しろ、とバッサリ。

 わかってるー。わかってるんだよー……。

「……はあ……」

 私は改めて自分の下から数えたほうが余裕で早い数字が書いてある紙を見る。

 成績。私に一切の期待を持たない両親だから、別に学校で一位とれとか、優秀な成績をとれとかは思われていない。

 だけど、五十嵐の人間として、人間らしい数字を取らなければもっと軽蔑され、待遇が悪くなる。

 そう思って、頑張って勉強してるんだけどなあ……。

「……はあああ……」

 今回のテストはあくまで十月のテストのための前哨戦。成績にも出ないし、両親にバレることもない。だが、次の試験結果は両親に見せなければ疑問に思われるし、何なら成績に直結する。

 次もしもこれ以上成績が悪化したら、部活動も禁止されるかも……。

「……ぐおおおおお……」

「うるっさいな! わかったよ! 勉強教えてやるよ」

「おっそいよさくらいー。無駄に長尺モノローグしちゃったよー。センス無いなー」

 こいつ……、と眉を引くつかせながら苛立つ様子を見せる桜井。

 なんだかんで言って、私に甘い男め!

「じゃあじゃあ! 今日から部活は大勉強月間ね! 家帰ってからもわからないことあったらラインするから、ちゃんと相手してよ!」

「へーへー。だけどお前、サボるなよ。僕が勉強見る以上、勉強時間の管理は逐一していくからな」

「え……意外と束縛強い感じ?」

「違う! って……なんでちょっとうれしそうなんだ!」

 束縛強いの結構好きかも……、以上自己紹介でした。

 そんなバカなことを考えていると、桜井は、ん、と言って手を差し出してくる。

「……なーに? 下着ほしいの?」

「なわけあるか! この間の答案用紙を見せろっての!」

「……え? それはその……まだ早いというか……」

「なんで答案用紙見せるだけでそんなアダルトな空気にできるんだ。いいから早く出せ」

 トントントンと机を人差し指で叩きながら急かす桜井。

 女の子の恥ずかしい部分を見せるんだから、もっとそれなりの情緒というか誘い方を学んでほしい。勉強しかできない男はこれだから。


 私はやれやれと心の中で呟きながら鞄の中からこの間のテストの答案用紙を出すと桜井に手渡す。

 暫く桜井が私の答案用紙をじっと眺める、そんな謎の時間が流れていた。

 ……うー。なんか、私のバカなところ見せるの普通に結構恥ずかしいんだけど……。まだ下着見せるほうが余裕かも。

 五分ほど経つと、桜井は答案用紙を机の上に並べてインテリっぽく話しだす。

「そうだな。どの教科も基本的なことはできている。地頭は悪くないんだろう。単純に演習不足で暗記が追い付いていないのと、それに伴う応用問題ができていないようだ」

「……勉強、してるつもりなんだけどなあ」

「……仕方ないと思うぞ。授業中、いつも眠そうにしてるだろ。家で勉強するときも、0時を超えた時からだろ」

 暗に家の手伝いで勉強時間が足りていないのと集中力が追い付いていないと言ってくれる彼の優しさに心が温まるのと、最近は勉強に回していた時間を全て桜井とのラインに回しているという事実は黙っておこうという二つの気持ちが芽生えた。

 あ、それとあと一つ。


「うふふ」

「なんだよ急に笑い出して」

「んー? 桜井って、教室でも私のことばっか見てるんだなーって」

「ちがっ……! こほん。僕の席的にお前が視界に入るだけだ」

「そっかそっか。いつも授業中に感じるあのねっとりとしたエロい視線は桜井のものかー」

「知らん誰かの劣情まで僕のせいにされてる!」

「そんなこそこそ見てないで、普通に教室でもお話しようよー?」

「断る。急に僕とお前が話し出したら目立つし、変なやっかみも買うからな」

「えー。そんなことないとおもうけどなー」

「それに部室でも家でもこれだけ話してるんだ。別に教室の時間でまで話す必要はないだろ」

「そう? 私は教室でもお話したいなー」

「うっせ。いいから勉強するぞ。とりあえず次のテストで出るところを書き出してやるからそれ全部覚えろ」

「なにそれ」

「実力テストならまだしも、中間考査なんぞ、出題内容程度簡単に予測がつく」

「はて、君はイタキスの入江くんかな?」

「IQ200は知らんが、少なくてもテストはできないな」

「家も金持ちじゃないしね」

「えげつないこと言われた⁉」



 そんなわけで今日から始まる二人きりのお勉強会こと修行会。

 今ここから始めましょう! ゼロから!

 よーし、とりあえず亀の甲羅を背負わないとね!

「よしまずは覇気を覚えるところからだ」

「桜井も結構漫画脳になったね」


9月にもなるとお互いがお互いの好きな作品に脳が焼かれていきます。

桜井は漫画脳に。

五十嵐はラノベ脳に。

どっちのがいいかはわからないけど、五十嵐は教室でもラノベ作品の発言を気にせずポンポン口にするので、クラスのオタクくんから滅茶苦茶狙われ出しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。