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BHR タガル  作者: ドスコイK
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第3話 2択

第3話


「大丈夫ですか! タガルさん! 外で急ブレーキの音が……えっ?」


店に入ってすぐ、女性と目が合った、

女性は私を見るなり慌てて頭を下げる。


「あ、あのっ! すいません! お店の方と間違えて……!」


「あー、こちらこそすいません。外でケガしちゃって、店の人が中で待っててって言われて。」


そう言いながら改めて彼女を見る。


……あれ?


見覚えがある。


でも、何かが違う。


別人かと思うくらい。


「あの、もしかして……どこかで会ったことあります?」


しまった、まじまじと観察する様に見てしまった。


言ったあとで気づく。


これ、完全に変な人だ。


いや、半分くらいストーカーだ。


慌てて言葉を継ぎ足した。


「た、たまに近く通ってたりします? 見かけた時、自然と目で追っちゃって……変な意味じゃなくて! なんていうか、出立ちが素敵な人だなって。」


女性は一瞬驚いたあと、ふわっと笑った。


「えぇ〜、嬉しいです。」


と言いつつ、少し考え込むように顎に指を当てる。


「突然ですが、変な質問してもいいですか?」


「は、はい。」


「あ、まずお名前、教えてもらっても?」


「星です。明手 星。」


……しまった。


警戒するどころか普通にフルネーム言ってしまった。


女性は少し考えるように頷く。


「星さん。今からする質問、正直に答えてもらえますか?」


終わった。


やっぱりバレてた。


焦る私をよそに、女性はその場でくるりと回った。


二歩、三歩。


立ち止まりまたこちらを振り向く。


「私は柿 泰菜(たいな)って言います。」


少し照れたように笑う。


「では質問です。」


体を軽く前に倒し両手を軽く広げる。


「今の私の出立ちは、本当に素敵ですか?」


急に頭が冷える。


服装?


髪型?


いや、違う。


違和感の正体はそこじゃない。


近くで見た時、わかった。


柿さん自身が変わったんじゃない。

中身が入れわかったんじゃない。


何かをやめた。


そんな感じ。


いつも見かけていた時の彼女は、もっと自然だった。


肩の力が抜けていて。


立ち姿に迷いがなくて。


目の前の彼女は少しだけ胸を張っていて、少しだけ落ち着かない。


呼吸も浅い。


何かを身につけていた人が、それを外したみたいだった。


だから私は答えた。


「……いいえ。」


言った瞬間、終わったと思った。


失礼すぎる。


でも、言い直したくなかった。


「私が見たことのあるあなたじゃないみたいです。」


沈黙。


怒られると思った。


なのに。


柿さんは目を見開いたあと、ぱっと笑った。


「大正解!!」


一歩近づいてくる。


「星さん、あなたってすごい!!」


「……え?」


柿さんは少し嬉しそうに自分の背中へ手を回した。


「私、最近ちょっと不思議な服を試してたんです。」


「服?」


「そう。でもさっき外して貰ったんです。自分じゃ外せないから。」


なんだそれ。


意味がわからない。自分で外せない服って不便でしかないよ?


服を変えただけでこんなに印象って変わるの?


柿さんは楽しそうに続ける。


「誰も気づかなかったんですよ。家族も友達も。だからちょっと聞いてみたくて。」


そこで彼女は私を見て笑った。


「星さんって、人を見る人なんですね。」


その瞬間。


急に恥ずかしくなる。


いや。


違う。


私は別に。


……ただ。


少し気になっていただけだ。


すると店の入り口から声がした。


「あれ、2人はお知り合いですか?」


振り向く。


コンビニ袋をぶら下げた店員さんが戻ってきていた。


そして私はまだ知らない。


柿さんが言っていた「不思議な服」が。


百年以上前に使われなくなった、古い服だったと言う事、


そして。


その服に、少し興味を持ち始めている自分がいることを。

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