第2話 鍵店
第2話
「ぅ、あ。……ぁあっ!!」
中から、少し普通じゃない声が聞こえた。
さっきの女の子だろうか。
妙に艶っぽいような声で、聞いているこっちまで変にドキドキしてしまう。
扉は少しだけ開いている。
覗こうと思えば覗ける距離なのに、なぜかそこから先に進めない。
そうしているうちに、中から男の声が聞こえてきた。
「カキさん。えっと、更衣室出たらここにお金置いてってください。領収書見てくださいね!お釣りない値段にしてるんで、俺、ちょっと店出まーす。」
「はいっ!いつもありがとうございます!」
カキさんと呼ばれた女性は、さらに奥の更衣室にいるのだろうか。
そこから元気よく返事を返した。
えっ?
えっ?!
何これ?
もしかして……なんか変な事するようなお店?!
ヤバいっ! 店の人が来る!!
逃げるように店を飛び出した瞬間、後悔した。
道路の角にある店から出た先。
左折してきた車の影が目に入る。
近い。
——まずい。
次の瞬間、服を後ろに強く引かれた。
体勢を崩し、そのままバタッと倒れ込む。
「ぅわぁあぁ!」
「おいっ! 大丈夫か?!」
運転手は慌ててブレーキを踏み、窓を開ける。
「急に出てくるなよ!」
怒鳴るだけ怒鳴ると、そのまま走り去っていった。
「すいません! 私がぼーっとしてて! 本当に大丈夫ですから!!」
もう、最近こんなことばっかり。
そう思いながら助けてくれた人を見上げる。
そこには、ゆるいパーマのかかった男の人が心配そうにこちらを覗き込んでいた。
——うわ、イケメン。
……じゃなくて。
さっき店の中から聞こえた声と同じ。
店の人?!
少し恥ずかしくなって俯きながら言った。
「あの、ありがとうございます。えっと……」
「ごめんな、急に引っ張って。」
そう謝ってきた。
いや、盗み見しようとしてた私の方が悪いんだけど。
ふと後ろを見る。
男の顔に少し隠れながら、看板が見えた。
『司 鍵店』
「か、鍵店って……珍しいなって思って。入ろうかなって……あ、あはは。」
「うわ〜、やっちゃったな。お客さんにケガさせちゃった。ごめんなさい!」
「ケガ?」
言われて目線を落とす。
くるぶしから、少し血がにじんでいた。
転んだ拍子に擦ったらしい。
「今ちょっと必要なもの買いにコンビニ行こうとしてて! ついでに絆創膏と消毒買うんで、良ければ店の中で待っててください!」
そう言うや否や、彼は身を乗り出して左右を確認し、走り去っていった。
「あ、はい。」
ぽかんとしながら立ち上がる。
彼の後ろ姿が見えなくなる。
そのあと、自然と開いたままの店の入口へ目が向いた。
……入って良いのか?
もし変なお店だったら。
いや、でも鍵店だよね?
そもそも鍵店って何するところなの?
いろんな疑問を抱えながらも、久々に仕事以外に芽生えた好奇心が勝ったようだ。
星は、恐る恐る店の中へ足を踏み入れた。




